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アメルーミラの冒険者登録


 金の帽子亭を出ると、アメルーミラは、足早にギルドを目指す。


 ギルドの扉を開けて中に入ると、中は閑散としているが、冒険者らしい人物も数人居る。


 大半は、不足しているメンバーの勧誘にあるが、見るからに武器も持たずに入ってきた亜人には、誰もが一度見てから直ぐに別の方に向いてしまう。


 若い猫の亜人の女性には、冒険者としての価値は見出せないのだ。


 むしろ、育てるまでの経費を考えると、しばらく赤字になってしまうなら、声を掛けない方が良いと、誰もが思った様だ。


 アメルーミラは、そんな冒険者達を見て、恐る恐る、ギルドの受付に行くと、カウンターには数名の受付嬢が居たのだが、アメルーミラが近づいて来ると、殆どの受付嬢が席を立って奥に行ってしまう。




 1人だけ残った、耳の長いエルフと思われる受付嬢のルイゼリーンが、受付カウンターに1人だけ残されている。


 アメルーミラは、1人残された受付嬢のカウンターに行くと、小さな声で声をかける。


「すみません。 冒険者の登録を行いたいのですが。」


 そう言うと、受付嬢は顔を上げて確認をする。


「新規の登録でございますか。」


「はい。」


 新規の登録と言われて、不安そうな声で答えるアメルーミラを、ルイゼリーンは見る。


 そのアメルーミラの表情を見て、ルイゼリーンは、何か、いわくがありそうだと思った様だが、そのまま、手続きを続ける。


「では、手続きを行いますので、身分証明証を見せていただけますか。 それと登録費用として銀貨1枚いただく事になります。」


 そう言われると、アメルーミラは、先程、ヲンムンから渡されたプレートと1銀貨を受付嬢に差し出す。


 身分証明証を確認して、ルイゼリーンは、もう一度アメルーミラを見た。


 その視線にアメルーミラは、カウンターを凝視しているだけだった。


 受付嬢は、一瞬、間を置いて、新しいギルドのプレートを用意して、必要事項を新しいカードに刻んでいく。


「では、こちらに血を垂らして貰えますか。」


 カウンターの傍から、半球状の黒い置物を、アメルーミラの前に出し、蓋を外すと中央に細い針が立っていた。


「こちらに指を刺して、血を数滴親指に付けてから、このプレートの名前のところに押して下さい。」


 アメルーミラは、言われるままに指を出そうとするが、先程、人差し指を使っているので、中指をその針に刺す。


 痛みのある所に、もう一度刺すとなると、先程より強い痛みになる事を、経験の中から知っているアメルーミラは、何気に中指を使ってしまった。


 それを見たルイゼリーンは、アメルーミラの人差し指に新しく出来たであろう傷を確認する。


 身分証明証のプレートに残った血の新しさと、人差し指の傷から偽造の身分証明証と思うのだが、それを証明する手立てが無い事と、プレートの右下に書かれた北の王国の紋章印が、本物に見えることから、騒ぎ立てるわけにはいかないのだ。


 アメルーミラの雰囲気からは、何が目的で冒険者として登録しているのか、まだ、見えないので、暫く放置する事にしたのだ。


 すると、ルイゼリーンは、置物を戻して、水晶玉をカウンターに置いた。


「それでは、お顔を登録いたしますので、その水晶を覗いてください。」


 アメルーミラは、言われるがまま、カウンターの上に置かれた水晶玉を覗き込んだ。


 ルイゼリーンは、アルメーミラを確認すると、カウンターの中の魔道具を操作すると、自分の手前に映し出されたアメルーミラの顔を確認して顔を登録する。


「はい、お顔も登録できました。 これで、あなたは、どこのギルドに行っても、活動が可能となりました。」


 アメルーミラは、何が起こったのか分からなかった様子をする。




 ただ、ルイゼリーンは、このアメルーミラという亜人が気になった。


 帝国で、亜人が冒険者に新規登録するのは、身の安全が無い国ではありえない事なのだ。


 彼女以外の亜人の冒険者は、帝国以外で経験を積んで、単独ではなくパーティーで訪れるのだが、こんなケースは初めてなので、情報だけは取っておこうと、ルイゼリーンは考えたのだ。


「あのー、新たな登録となりますと、これからメンバーを集めるのでしょうか? 」


 話しかけられた事に驚くアメルーミラだが、ヲンムンから言われている事を思い出すと、そのまま伝える。


「い、いえ、あてがある、ので。」


「そうですか。 新人のソロは生存率が悪いので、心配したのですが、あてがあるなら大丈夫ですね。」


 ルイゼリーンは、笑顔で答えると、出来上がったギルドの身分証明証と北の王国の身分証明証を渡す。


「依頼を受けたり、完了した時は、このギルドの証明証を提示してください。 それと魔物を倒して得られた魔物のコアも、ギルドで買取り致しますから、その時も、この証明証を提示してください。 依頼の完了や魔物の討伐の数は、そのプレートに魔法で刻まれます。 その内容を元にギルドランクもアップします。 ギルドランクがアップすれば、上位の依頼も受けられる様になりますので、それに見合った報酬を受けられます。」


 ルイゼリーンは、簡単に説明をするが、アメルーミラの態度から、説明が理解出来たのか少し疑問に思ったようだ。


 だが、アメルーミラは、出来上がったプレートと、身分証明証のプレートを受取ると、そそくさとギルドを後にする。


 ルイゼリーンは、アメルーミラが、入口の扉を潜るまで、アメルーミラを見つめる。


 アメルーミラの姿が入口から消えると、他の受付嬢が戻ってくる。


 アメルーミラが亜人だった事で、帝国で雇われた受付嬢達は、自分が担当するのは嫌だと思って席を外していたのだが、アメルーミラがギルドを出て行ったので受付席に戻ってきた。


 他の受付嬢が席に着いたのを確認すると、ルイゼリーンは立ち上がって奥に行く。


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