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帝国軍諜報部の動き

 

 ヲンムンは、いつもの様に日が昇る寸前に宿屋の部屋からロビーに移る。


 仕事である。


 ヲンムンは帝国軍諜報部に所属しており、任務である金糸雀亭に宿を取っている6人組の冒険者の監視を行なって本部に報告をしている。


 任務のために道を挟んだ向かいの金の帽子亭に宿を取り、監視対象を見張る様に命令を受けていて、毎朝、東の空が明るくなった頃に目覚めてから、日の出前には部屋から監視対象の動きを監視して、6人が起き始めたら、金の帽子亭の入り口前のテラスのラウンジに行き朝食をとる。


 朝はその監視対象が外出する前、監視対象の人物が動き出す前に、金の帽子亭の入り口前のラウンジで朝食を取りながら、対象が出てくるのを待つ。ほとんどの場合、自分の食事が終わっても対象人物たちは出てこないので、朝食を取った後はしばらく時間を潰す必要がある。


 ほとんど、いつも同じ時間になってからの移動なので、その時間まで部屋でゆっくりしていても構わないのだが、今回の任務には予め予算が付いていたので、自分の必要経費とボーナスが先に支給された。経費については、余ったとしても返還の必要はないので、余った経費は自分のボーナスの上乗せ額となる。


 給与分の仕事にプラスアルファ程度は行うつもりなので、それなりに仕事はする。




 今日も、宿屋の玄関が開くと同時にいつもの場所に座り、何時ものサンドイッチと飲み物を頼み支払いを済ませる。


 監視が目的なのでアルコールは飲めないのが、祐逸の難点である。しかし、対象が若い新人グループなので道で巻かれる事もない。


 だが、一度だけ、追いつけない事があった。


 ターゲットが馬車で移動したので、その後を馬で追うことにした。


 西門を抜ける頃には見つけて距離をおいて追いかけたのだが、その速度がとても早かった。


 自分は、馬に跨って馬車を追いかけたのだが、全力で追い駆ける事になった。


 その為、馬は途中でバテてしまい倒れてしまった事が一度あった。


 なんでそんな事になったのか理由が分からなかったが、その事からも監視する必要があるのだろうと思う。




 対象を部屋から監視していても良いが、玄関を出てから追いかけていたら見失う可能性もあるので、この場所を使っている。


 ここからであれば、4階に部屋を取っている目的の人物の窓も見えるので、ある程度動きは抑えられる。




 ただ、この前は監視対象の狩を遠くから確認していた時に、魔物の暴走に出くわせてしまった。


 自分が襲われたのではなかったので助かったのだが、避けそびれてしまいもみくちゃになった。


 その後は監視対象がその魔物を倒した様だったが、もみくちゃにされた直ぐ後のことで現場を目撃する事はなかった。


 あれ程の数の魔物が一瞬で倒されてしまったのには驚きだが、強い魔物では無かったので何らかの攻撃手段を持っていると思われる。


 確認できなかったのが残念だ。




 その後は、金糸雀亭に居ることもあるが、時々、近所の狩場で大した稼ぎにもならない魔物を狩っていたが、一度、帝国でも一・二を争うパーティーのユーリカリアのパーティーと合同で狩りを行っていた。


 その時もジューネスティーン達の馬車の速さに馬が付いていけなかった。


 見た目は一般的な地竜なのだが、この地竜に馬車を引いてもあれだけのスピードが出るのか謎である。


 だが、その時は、ギルド本部で行先を聞いていたので、遅れはしたが狩りの最中には監視できる位置までたどり着いた。


 あの辺りは、魔物も強力なので、倒せるのは、ユーリカリアのパーティー以外には、もう一つ程しか無いが、ユーリカリアが使っている事で、他のパーティーはその狩場に顔を出す事は無い。


 彼女達との狩りは、それ程積極的に狩りをして無かった。何度か狩りを行っていたのだが、そのうちに全員で集まって、何かを話していた様だが、時々魔法を使っていたので、魔法の練習を始めた様だった。見た限りでは、普通の魔法に見えたのだが、そんな魔法を何でユーリカリアのパーティーが行っていたのかは謎だ。


 時々、大型のアイスランスと思われる魔法が放たれていたが、一般的なアイスランスの様に沢山の氷の塊では無く、一つの塊だけを出していた。明らかに魔法能力が低いアイスランスの様に思えた。


 遠目で見ていただけだが、何で大した魔法でも無いのに、あれだけの時間を魔法の練習に費やしたのか疑問に思う。




 そんな事を思いつつ、ジューネスティーン達の監視を行なっていると、テラスの向こう側の道から声をかけられる。


「やあ。」


 声をかけられた方向を見たヲンムンは、鬱陶しそうに答える。


「なんだ、カルンコンか。いま、仕事中なんだ。用が無いなら後にしてくれないか。」


 そう言うと、道から声をかけたカルンコンは、道から宿屋のテラスに入ってきて、ヲンムンのテーブルに座る。


 カルンコンも同じ帝国軍情報部に所属しており、ヲンムンより1年後に入隊してきた。しかし、階級は自分が軍曹なのだが、カルンコンは准尉と自分より階級が上になる。


 カルンコンは、ヲンムンの了解も取らずに、ヲンムンのテーブルに座ると話しかけてくる。


「用事があるから声を掛けたんだ。」


 ヲンムンは鬱陶しそうにする。そんな態度を気にする事なくカルンコンは話を続ける。


「本部のヲルンジョンさんに頼まれたんだ。 顔を出す様にって。」


 ヲルンジョンと聞いて、ヲンムンは嫌な顔をする。


 自分上司なのだが、判断は出来ないのだが、出金については、細かくチェックをして、何か有れば直ぐに金額を減らす。金に関する事には非常に敏感な、嫌な上司である。


 ジューネスティーンの監視役になり、しばらく、その上司であるヲルンジョンの顔を見ないで済んで清々していたのだが、呼び出しと聞いて、気持ちが落ち込む。


 それを面白そうにカルンコンは見つつ話を続ける。


「だから、今日は俺が代わるんで、直ぐに向こうに出向いてくれ。」


 ヲルンジョンは自分やカルンコンの上司であって、階級は少尉なのだが、ここでは誰が聞いているか分からないので階級は口には出さない。




 ヲンムンは何か呼び出される様な事が有ったかと考える。


 この前に魔物の大量暴走の時の報告書に記載できなかったジューネスティーン達が多数の魔物を倒した方法を見落としていた時の事が頭を過ぎるが、本部に出向くまでに言い訳を考えようと思いつつカルンコンに答える。


「分かった。直ぐに向かう。」


 そう言うと、立ち上がって、テラスを出ようとすると、宿屋の中から先程頼んだ朝食を運んできた。


 それに気がついたヲンムンが、店員に指示を出す。


「それ、あそこに居る奴に出しておいてくれ。」


 そう言って、金の帽子亭を後にする。


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