剣の評価について
カインクムは、ベットに横になり、天井を見ていた。
その横には、カインクムの胸に顔を沈めているフィルランカがいた。
フィルランカは、満ち足りたような表情で、カインクムの胸に顔を埋めており、時々、呼吸をしながら、頬や鼻、そして、唇をカインクムの胸をするようにしていた。
カインクムは、胸の上で、フィルランカの呼吸を感じつつ、体の半分を自分の上に乗せているフィルランカの体温を感じつつ、今日、売った剣のことを考えていた。
すると、フィルランカが、顔を上げて、カインクムを見上げるように見る。
「ねえ、あの剣だけど、ヴィラレットさんの時もだけど、なんで、ジュネスさんに先に見せて、出来上がりを聞かなかったの。」
フィルランカは、アゴをカインクムの胸に乗せて話をした。
カインクムは、胸の上でくすぐったそうにする。
そして、自分の胸の上にあるフィルランカの顔を覗き込む。
フィルランカの表情は、満ち足りたような、なんとも言えない様子で、カインクムを見上げていた。
カインクムは、フィルランカの様子を見ているだけで、フィルランカの質問に答えないでいると、フィルランカは、人差し指で、カインクムの胸の上をなぞるように動かし出す。
それは、甘えるような表情で、カインクムを何となく刺激するように、何かを求めるようでもあった。
「ジュネスか。 あの剣の事を聞いて、俺なりに作ってみたんだ。 できあがったから、見てくれとも、何だか、言いにくいからな。」
(まぁ、私の旦那様にもプライドは有ったのね。 男の人って、いつも子供のようなことを言うのね。)
「ふふ。」
フィルランカは、何かを思いつつ、含み笑いをする。
「ねえ、エルメアーナは、どうだったのかしら。 きっと、出来上がったら、きっと、ジュネスさんに見せて、良し悪しを確認してもらったと思うわ。 それで、きっと、ジュネスさんが納得するまで、何本も作ったと思うわよ。」
小さな頃からフィルランカとエルメアーナは、姉妹のように育っていたのだ。
お互いの性格も良く理解できているので、フィルランカは、そのことをカインクムに聞いた。
「ああ、エルメアーナなら、きっと、そうしただろうな。 だがな。」
カインクムは、言葉を途中で切った。
「だが? 何なの? 」
フィルランカは、その後が気になった。
「やっぱり、俺にもプライドがある。 ジュネスに聞いた話と、あの剣を見たのだ。 エルメアーナなら、ジュネスと、そう、年齢もかわらないし、あの性格なら、ズケズケと、何度も聞いただろう。 俺は、年齢的にもジュネス達の親の世代だからな。 そう、簡単に、細かなところまでは聞けないさ。」
そう言って、黄昏れるように天井を見る。
「色々と聞いてしまったら、何だか、今までの鍛冶屋としての経験が、全部無駄に思えてしまったんだ。 だから、ジュネスには、出来上がった剣を見てもらうことは考えなかったんだ。」
(まったく、フィルランカめ。 俺が作った剣だから、見てくれって、俺が、ジュネスに言えるか。 そんな恥ずかしい事、言えるわけないだろう。)
カインクムは、もっともらしい事を言って、フィルランカを納得させようとしたのだが、時々、視線がフィルランカから逃げていたのだ。
(まあ、何か隠しているのね。 きっと、少し恥ずかしいのかしら。 こう言うところは、子供みたいなところがあるのよね。 こう言うところは、ちょっと可愛い。)
フィルランカは、少し意地悪そうな表情をカインクムに向ける。
(でも、今、私が思ったことを、言葉にしたら、これも、また、旦那様のプライドを傷つけるまではいかないけど、気に障ってしまうのね。)
カインクムは、天井を見つめて、何かを考えているような仕草をしている。
フィルランカは、そんなカインクムの態度が、年相応の対応ではなく、少年のような部分を見たように思えたのだ。
フィルランカは、自分の体をカインクムに被せるようにすると、片足をカインクムに絡めるように、仰向けのカインクムの足の間に入れる。
カインクムは、フィルランカの若い肌の感触を感じてはいるが、ただ、その温かさを心地よく思っただけで、ただ、フィルランカの好きなようにさせていたが、カインクムは、フィルランカ側の手を動かして、フィルランカの髪の毛を撫でる。
「なあ、フィルランカ。 今日の料理は、何かあったのか? それに最近は、何だか、血肉になるようなものが多かったと思ったんだ。」
フィルランカは、ニヤリと一瞬する。
「だって、一度に5本もの剣を作ったのですよ。 精神的にも肉体的にも消耗するはずです。 だから、その間の栄養にはこだわりましたわ。」
フィルランカは、最もらしい話をして、自分の思惑は隠していたのだが、答えると、フィルランカは、カインクムの上に体を乗せてきた。
「おい、どうしたんだ。」
カインクムは、恥ずかしくなったのか、少し、困ったようにフィルランカに言う。
フィルランカは、カインクムの上に体を乗せると、顔をカインクムの耳元に寄せる。
「だって、今まではお仕事でしたから、我慢していたんです。 今日は、もう、お仕事も終わりましたから、私のワガママを聞いてもらえるかと思ったんです。」
フィルランカは拗ねたような声で、カインクムの耳に息がかかるように答えつつ、体をカインクムに擦るようにしていた。
「お前、今日は、少し変だそ。」
フィルランカは、顔を上げると、カインクムを艶やかな顔で見る。
「だって、今日のために、今まで準備していたんです。 ほーら、また、元気にいなったでしょ。 それに、エルメアーナの妹か弟が、欲しくはありませんか? 」
「・・・。」
そう言うと、フィルランカは、片方の手で、カインクムを誘導していた。
「2回目は、私がリードしますから、旦那様は、そのままでいてください。」
カインクムは、何とも言えない気持ちよさから、答えに詰まっていたが、カインクムは、フィルランカの背中に手を回す。
フィルランカは、嬉しそうな様子で、カインクムの胸に体を預けつつ、軽く体を揺すっていた。
そして、2人は、長い夜を楽しむのだった。




