表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1049/1356

剣の評価について


 カインクムは、ベットに横になり、天井を見ていた。


 その横には、カインクムの胸に顔を沈めているフィルランカがいた。


 フィルランカは、満ち足りたような表情で、カインクムの胸に顔を埋めており、時々、呼吸をしながら、頬や鼻、そして、唇をカインクムの胸をするようにしていた。


 カインクムは、胸の上で、フィルランカの呼吸を感じつつ、体の半分を自分の上に乗せているフィルランカの体温を感じつつ、今日、売った剣のことを考えていた。


 すると、フィルランカが、顔を上げて、カインクムを見上げるように見る。


「ねえ、あの剣だけど、ヴィラレットさんの時もだけど、なんで、ジュネスさんに先に見せて、出来上がりを聞かなかったの。」


 フィルランカは、アゴをカインクムの胸に乗せて話をした。


 カインクムは、胸の上でくすぐったそうにする。


 そして、自分の胸の上にあるフィルランカの顔を覗き込む。


 フィルランカの表情は、満ち足りたような、なんとも言えない様子で、カインクムを見上げていた。


 カインクムは、フィルランカの様子を見ているだけで、フィルランカの質問に答えないでいると、フィルランカは、人差し指で、カインクムの胸の上をなぞるように動かし出す。


 それは、甘えるような表情で、カインクムを何となく刺激するように、何かを求めるようでもあった。


「ジュネスか。 あの剣の事を聞いて、俺なりに作ってみたんだ。 できあがったから、見てくれとも、何だか、言いにくいからな。」


(まぁ、私の旦那様にもプライドは有ったのね。 男の人って、いつも子供のようなことを言うのね。)


「ふふ。」


 フィルランカは、何かを思いつつ、含み笑いをする。


「ねえ、エルメアーナは、どうだったのかしら。 きっと、出来上がったら、きっと、ジュネスさんに見せて、良し悪しを確認してもらったと思うわ。 それで、きっと、ジュネスさんが納得するまで、何本も作ったと思うわよ。」


 小さな頃からフィルランカとエルメアーナは、姉妹のように育っていたのだ。


 お互いの性格も良く理解できているので、フィルランカは、そのことをカインクムに聞いた。


「ああ、エルメアーナなら、きっと、そうしただろうな。 だがな。」


 カインクムは、言葉を途中で切った。


「だが? 何なの? 」


 フィルランカは、その後が気になった。


「やっぱり、俺にもプライドがある。 ジュネスに聞いた話と、あの剣を見たのだ。 エルメアーナなら、ジュネスと、そう、年齢もかわらないし、あの性格なら、ズケズケと、何度も聞いただろう。 俺は、年齢的にもジュネス達の親の世代だからな。 そう、簡単に、細かなところまでは聞けないさ。」


 そう言って、黄昏れるように天井を見る。


「色々と聞いてしまったら、何だか、今までの鍛冶屋としての経験が、全部無駄に思えてしまったんだ。 だから、ジュネスには、出来上がった剣を見てもらうことは考えなかったんだ。」


(まったく、フィルランカめ。 俺が作った剣だから、見てくれって、俺が、ジュネスに言えるか。 そんな恥ずかしい事、言えるわけないだろう。)


 カインクムは、もっともらしい事を言って、フィルランカを納得させようとしたのだが、時々、視線がフィルランカから逃げていたのだ。


(まあ、何か隠しているのね。 きっと、少し恥ずかしいのかしら。 こう言うところは、子供みたいなところがあるのよね。 こう言うところは、ちょっと可愛い。)


 フィルランカは、少し意地悪そうな表情をカインクムに向ける。


(でも、今、私が思ったことを、言葉にしたら、これも、また、旦那様のプライドを傷つけるまではいかないけど、気に障ってしまうのね。)


 カインクムは、天井を見つめて、何かを考えているような仕草をしている。


 フィルランカは、そんなカインクムの態度が、年相応の対応ではなく、少年のような部分を見たように思えたのだ。


 フィルランカは、自分の体をカインクムに被せるようにすると、片足をカインクムに絡めるように、仰向けのカインクムの足の間に入れる。


 カインクムは、フィルランカの若い肌の感触を感じてはいるが、ただ、その温かさを心地よく思っただけで、ただ、フィルランカの好きなようにさせていたが、カインクムは、フィルランカ側の手を動かして、フィルランカの髪の毛を撫でる。


「なあ、フィルランカ。 今日の料理は、何かあったのか? それに最近は、何だか、血肉になるようなものが多かったと思ったんだ。」


 フィルランカは、ニヤリと一瞬する。


「だって、一度に5本もの剣を作ったのですよ。 精神的にも肉体的にも消耗するはずです。 だから、その間の栄養にはこだわりましたわ。」


 フィルランカは、最もらしい話をして、自分の思惑は隠していたのだが、答えると、フィルランカは、カインクムの上に体を乗せてきた。


「おい、どうしたんだ。」


 カインクムは、恥ずかしくなったのか、少し、困ったようにフィルランカに言う。


 フィルランカは、カインクムの上に体を乗せると、顔をカインクムの耳元に寄せる。


「だって、今まではお仕事でしたから、我慢していたんです。 今日は、もう、お仕事も終わりましたから、私のワガママを聞いてもらえるかと思ったんです。」


 フィルランカは拗ねたような声で、カインクムの耳に息がかかるように答えつつ、体をカインクムに擦るようにしていた。


「お前、今日は、少し変だそ。」


 フィルランカは、顔を上げると、カインクムを艶やかな顔で見る。


「だって、今日のために、今まで準備していたんです。 ほーら、また、元気にいなったでしょ。 それに、エルメアーナの妹か弟が、欲しくはありませんか? 」


「・・・。」


 そう言うと、フィルランカは、片方の手で、カインクムを誘導していた。


「2回目は、私がリードしますから、旦那様は、そのままでいてください。」


 カインクムは、何とも言えない気持ちよさから、答えに詰まっていたが、カインクムは、フィルランカの背中に手を回す。


 フィルランカは、嬉しそうな様子で、カインクムの胸に体を預けつつ、軽く体を揺すっていた。


 そして、2人は、長い夜を楽しむのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ