表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1046/1356

試し斬りが終わると


「ヴィラ、それで、その剣は、どうなんだ? カーシャに、何か、アドバイスできることは、あったの? 」


「あっ! 」


 ヴィラレットは、自分の世界に入ってしまったので、フィルルカーシャに言われたことを忘れて、演舞に夢中になっていたようだ。


「そんな、酷いです。」


 2人の会話を聞いて、フィルルカーシャは、がっかりした様子になった。


「あ、でも、カーシャ姉の剣は、とっても使いやすかったですよ。 刃の出し入れを上手く使えば、遠近の敵の間合いを使い分けらるから、もっと長い、そう、3m程度の長さの方が、面白い使い方ができると思うわ。」


「ヴィラ、それは、カーシャを見て言っているのか? 」


 そう言われて、ヴィラレットは、しまったという表情をした。


 そして、ヴィラレットは、恐る恐る、フィルルカーシャを見ると、その表情は、沈んでいた。


「ヴィラ、ひどい。」


 フィルルカーシャは、ボソリと漏らした。


「あ、でも、槍のように構えて、振り上げる時、手前の手を調整して、相手との距離を調整できるし、てこの原理で、振り下ろす速度を変えられるし、それに、反りを強く入れてもらっているから、振り回すだけで、斬れ味もいいはずです。 きっと、カーシャ姉の手足となってくれます。」


「それで、何か、私に合う型とかはどうなのよ。」


 ヴィラレットは、答えに詰まった。


「ごめんなさい。」


「ひどいです。 私の剣は、遊べる程度だったってことじゃないですかぁ。」


 フィルルカーシャは、少し膨れたように言う。


「まあ、ヴィラだって、カーシャの剣は、得意な武器じゃないんだから、はいそうですかって、教えられるなんてことは無いわよ。 私だって、この後、みんなの剣に付与魔法を付けようと思っているけど、まだ、まともなイメージができてこないのよ。 そんなに簡単にできたら、私たちは、ジュネス達のパーティーより、圧倒的に強くなっているわよ。」


「ごめん、カーシャ姉。 これから、時々、一緒に訓練するから、それで、カーシャ姉に合う型を探していくから、もう少し待ってね。」


「そうよ。 もう少しだけ、ヴィラに時間をあげてくれないかしら。」


 フィルルカーシャは、黙り込んでしまった。


 ヴィラレットと、ウィルリーンは、困った様子でフィルルカーシャを見る。


 その思いがフィルルカーシャにも分かったようだ。


「うん。 これからは、一緒よ。 それで、一緒に考えてね。」


 それを聞いて、2人はホッとした。




 そんな3人にユーリカリアが、声をかけてきた。


「おーい、そろそろ、店に戻るぞ。」


 黙って、ユーリカリア達の試し斬りを見ていたカインクムは、ホッとした様子で、ユーリカリアの話を聞いていた。


 それは、何か、不具合が無いかと考えていたからだ。


 試し斬りをして、その時に何かあれば、買う側は、必ず、注文を付けてくる。


 それが有れば、場合によっては、また、新たに作り直しとなることもある。


 特に、今回は、前回と違って、一度、ヴィラレットの剣を試しているのだから、その時のイメージが残っているはずなのだ、そのイメージが、自分の発注した剣にも有るのかと比較になるので、今回、鍛えた剣が、前回のヴィラレットの剣に劣ったとしたら、何らかのクレームが入るはずなのだ。


 それが、今まで、何もなく、終わってくれたことが、カインクムには、とても喜ばしい事なのだが、確定するまでは、気が気ではなかったのだ。


 ユーリカリア達は、新しい剣の試し斬りだと喜んでいたのだが、カインクムは、誰かが、試し斬りをするたびに、何か問題が出ないかと、ヒヤヒヤしていたのだ。


 それが、何事もなく終わったので、ホットしたのだ。


「カインクムさん。 今日は、本当にありがとう。 皆、気に入ったようだ。 あとは、支払いを済ませてもらうよ。」


「ああ、ありがとう。 気に入ってもらえて、よかったよ。」


「どうしたんだ。 表情が硬いぞ。」


「当たり前だ。 ここで、何か、ダメ出しが出るかと思っていたんだ。 あんたの、掛け声がかかるまで、ヒヤヒヤモンだったんだ。」


 それを聞いて、ユーリカリアは、そんなものなのかと、カインクムの言葉を聞いていた。


「ああ、大丈夫だった。 ヴィラの剣と遜色ない出来だったよ。」


「そうですよ。 とても、扱いやすいですよ。 私も今まで、いざという時用に、短剣を持っていましたけど、こんなに、軽くなかったですよ。 長い剣が欲しいと思いましたけど、重さが有るから、諦めていたんです。 でも、ヴィラの剣を使った感じから、とても扱いやすかったので、私も長い剣を持てると思ったんですから、本当にありがたかったんですよ。」


「シェルは、剣の良し悪しがわかったのですね。 てっきり、流されていただけだと思ってました。」


「ちょっと、カミラったら、私が何も考えてないみたいな事言わないで欲しいわ。」


 フェイルカミラのツッコミにシェルリーンが、食って掛かったのだが、フェイルカミラは、全く動じる気配はなく、シェルリーンを見下ろしている。


「シェル。 お前は、弓以外は、雑過ぎるから、周りから、そう思われているんだ。」


「リーダーまで、酷いです。 なんで、そうなるんですか! 」


(そりゃ、そうだろう。 6姉妹なんてなったら、大体、下から2番目は、自由奔放だろう。 あ、でも、見た目なのか。 下からヴィラ、シェル、カーシャ、ウィル、カリアときて、一番上が、カミラか。 だが、カリア、ウィル、シェルは、ドワーフとエルフだから、もっと年上なのだがな。 まあ、見た目は、そんなところだとなれば、シェルの自由奔放な感じは、うなづけるように思えるのだがな。)


 3人の口喧嘩を、カインクムは、快く思っていた。


「もう、また、シェルが、おバカなことを言っているの。」


 ヴィラレットの演舞を見に行った、ウィルリーンが、シェルリーンを、困った妹でも見るように言う。


「違います。 2人が、私の事、雑だとか、言うんです。」


「ふーん。」


 ウィルリーンは、全く気にしてない様子で、聞き流すと、それがシェルリーンには、気に障ったようだ。


 今度は、ウィルリーンに何やら訴え出した。


 後ろに居た、ヴィラレットと、フィルルカーシャは、少し大回りをして、カインクムの後ろの方に行く。


 シェルリーン達の口論の輪の中に入りたくないと思ったようだ。


 そして、2人は、ユーリカリアを見る。


「リーダー、長くなりそうだから、2人を止めてください。」


「おい、元はと言えば、お前が、余計な事を言ったからだろう。」


「そうでしたか? でも、シェルとウィルの口喧嘩を止めるのは、リーダーが一番ですから、お願いします。」


 ユーリカリアは、納得できない様子でいるが、仕方なさそうにシェルリーンとウィルリーンの方に行く。


 そして、何やら、シェルリーンに耳打ちすると、シェルリーンは、ピタリと言葉が止まった。


「カインクムさん。 支払いは、店でお願いします。」


「ああ、じゃや、店に戻ろう。」


 そう言うと、店に戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ