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試し斬り、再び

 受け取ると、ヴィラレッとは、また、確認するように持つ。


「やっぱり、柄の長さが違うと、持った時の感じが違いますね。 柄の長さが違うだけで、持った感じがこれだけ違うのですね。」


「私は、魔法職だからね。 剣を使うようになったら、終わりだけど、だけど、持っておきたいのよ。 もし、私にいい姿勢だとか、使い方とかがあれば、教えてね。 それに、仕込み杖とかにできたら、かっこいいかも。」


 ウィルリーンは、剣以外に何かを考えているのか、変なことを言っている。


 そんな話をしていると、ユーリカリアが、試し斬りをしていた。


「あっちゃーっ! 」


 何か、失敗したといった様子の声をあげているので、ヴィラレットとウィルリーンも、ユーリカリアの方を見ると、試し斬りの棒が台座から抜けて、吹っ飛んでいっていた。


「あーっ、私には、上手くできないのか。」


 そう言って、ユーリカリアは、持っていた剣を、右手で肩に担ぎ、左手は頭をかいていた。


「ちょっと、カミラ。 何かあったの? 」


「ああ、この前、ヴィラが、立っていた棒を、上から袈裟斬りにした後に、逆袈裟で切り上げた時に、最初に斬った棒と一緒に立っている棒を一緒に斬ったじゃないですか。 あれを真似ようと思ったみたいですよ。」


 それを聞いて、ウィルリーンは、あんな芸当が、剣を握って数日しか経ってないユーリカリアに使えるのかと思ったようだ。


 少し、小馬鹿にするような表情をユーリカリアに向ける。


「ねえ、ヴィラ。 今のカリアの剣は、この前の試し斬りをした、あなたの真似をしたみたいなんだけど。」


「あーっ、燕返しですか。 ははは。」


 ヴィラレッとは、少し引きつったような笑顔をする。


「あれは、一朝一夕でできるは思えないですよ。 私も結構、練習しました。」


「リーダーったら、この前、ヴィラが簡単にやったもんだから、自分も試してみたかったみたいだな。」


 フェイルカミラが、ボソリと言う。


 その表情と声音には、仕方ない人を見たといった様子が窺えた。


「くっそー。」


 フェイルカミラ達の話が聞こえたのかどうかは分からないが、ユーリカリアは、落ちている試し斬りの棒を拾い上げると、新しい試し斬りの棒を持ってくる。


 そして、カインクムの作ってくれた剣を、無言でウィルリーンに押し付けると、今度は、エルメアーナの剣を取って、右上段に構える。


 そして、間合いを決めると、一気に袈裟斬りにすると、直ぐに戻して逆袈裟に斬りあげる。


 しかし、その戻した剣は、立っている試し斬りの棒を斬るだけで、最初に斬った棒の上側は、地面に落ちていた。


「ヴィラ! お前のあの技は、どうやったらできるんだ! 」


 少しイラついた様子で、ユーリカリアは、ヴィラレットに聞く。


「えっ! 私ですか。」


 突然、イラついた声でヴィラレットに話しかけるので、怒られているっぽい感じの声になってしまっていたので、ヴィラレットは、少し驚きつつ返事をした。


「そうだ。 この前のあの剣技、私も、使えるようにならないか? 」


「あ、ああ、はは。」


 ヴィラレットは、顔を引き攣らせて返事をする。


「すぐは、無理かと思います。」


 徐々に声が小さくなりつつ、ヴィラレッとは答えた。


「私も、師匠に見せてもらって、修行以外の時間は、あれを練習してましたけど。 2年近くかかりましたよ。」


「そうよ。 つい最近まで、戦斧を使っていた人が、そんな達人技を使えるようになるわけ無いでしょ。」


 ウィルリーンがヴィラレットを庇うようにユーリカリアに言うと、ユーリカリアは、ヴィラレットに向く。


「だったら、ヴィラ。 また、その技を見せてくれ。」


「え、エェーッ! 」


 困った様子で、声を上げてしまった。


「燕返しですか。 ・・・。 はい、じゃあ、ちょっと、試してみます。」


 ヴィラレットが答えると、ユーリカリアは、試し斬りの棒を新しくして、場所をヴィラレットに譲った。


「ヴィラ。 私の剣で試してみて。」


 ウィルリーンが、そう言うと、ヴィラレットの剣を鞘ごともらって、そして自分の剣の鞘をもらって、自分の剣をヴィラレットに持たせる。


「何も無い方が良いと思ったけど、鞘は、腰に付けておいた方が、扱いやすかったかしら? 」


「あ、いえ、この方が、良いです。」


 ヴィラレットは、少し困ったような表情で、試し斬りの棒の前に立つ。


 すると、後ろを向いてみると、全員が、ヴィラレットの後ろに並んで、ヴィラレットの様子を伺っていた。


 ヴィラレットは、一瞬、怯んでしまうが、仕方なさそうにする。


「あのー。 失敗しても、怒らないでくださいね。」


 ヴィラレットが自信が無さそうに言う。


「ああ、失敗しても何でも構わないから、とにかく、見せてくれ。」


(?)


 ユーリカリアの返事を聞いて、並んでいた周りのメンバー達は、それでもいいのかと思ったようだ。


 だが、誰も、ユーリカリアの言葉にツッコミを入れる様子はなく、黙ってヴィラレットを見ていた。


「じゃあ、燕返し。 試してみますね。」


 そう言うと、ヴィラレットは、試し斬りの棒に対峙する。


 そして、右上段に構えると、切先が、一瞬後ろに下がったと思った瞬間、次には、刃が後ろを向いて右上段に戻っていた。


 その時、何か音がしたようだったが、後ろから見ていたメンバー達には、その様子がどうなったのかよくわからなかったが、ヴィラレットが、しゃがみ込んで、床に落ちた試し斬りの棒を拾ってから、ウィルリーンに剣を返していた。


「ウィル姉さん、ありがとうございました。 とっても使いやすかったですよ。」


 剣を返すと、今度は、ユーリカリアに向く。


「はい。 一応、上手くいきました。」


 そう言って、試し斬りで切ってしまった棒を3個、ユーリカリアに渡す。


「え、おい、今の、どうなったんだ。 よく見えないかった。 すまないがもう少しゆっくり、もう一度、店テックれないか! 」


 ヴィラレットは、ウィルリーンから持ってもらった自分の剣を受け取りつつ、ユーリカリアの話を、困った様子で聞いていた。


「リーダー。 それは、流石に無理な相談です。」


「何でだよ。 少しゆっくり斬るだけじゃないか。 そうしたら、私にも太刀筋が見えるかもしれないんだよ。 それで、斬れた棒が落ちていく時に刃が、どう、落ちてくる木に入るのか確認したいんだよ。」


「いや、流石に、それは、無理です。」


「ヴィラ。 そんな意地悪を言うなよ。」


 ユーリカリアは、懇願するのだが、それを聞いてヴィラレッとは、引きつった笑いを浮かべている。


 ただ、ユーリカリアの言っていることは、周りのメンバーには、ヴィラレットが何で出来ないのか、理解できているのか、苦虫を噛むような表情をしていた。


「リーダー。 それは、ヴィラがかわいそうだと思います。」


「そうですよ。 ヴィラが剣技の達人でも、ゆっくりは無理でしょ。」


「流石に、それは無理だと思います。」


 フェイルカミラ、フィルルカーシャ、シェルリーンが、ユーリカリアのリクエストは無理だと納得した様子で、ユーリカリアに言う。


 ウィルリーンは、ユーリカリア1人だけが、分かってないと思うと、気落ちしたような表情で、ユーリカリアに言う。


「カリア。 今の、ヴィラの剣技は、剣速が有るからできるんです。 ゆっくり、剣を動かしたら、剣が戻ってきた時には、最初に斬った棒が、床に落ちてしまいます。 だから、今のヴィラの剣技をゆっくりやったら、試し斬りの棒が、3つに斬れるなんてことはないんですよ。」


 ウィルリーンの説明を聞いて、ユーリカリアも落ち着いて考え出したのか、哀願するような表情から、考える表情に変わった。


「そうか。 そうだな。 ゆっくり、剣を動かしたら、3つには斬れないのか。」


 ユーリカリアの顔が、僅かに赤くなっていた。


 自分の言ったことが、子供じみた事を言っていたと思ったようだ。


「そうだな。 そうだよな。」


 ユーリカリアは、凹んだような表情をした。


 場の雰囲気が、悪くなり、誰もが、何とかしてくれと訴え始めていた。


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