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アリーシャの淹れたお茶


 チェルエールは、テーブルに置かれた、お茶を見ている。


 そして、目を閉じると、ゆっくりと鼻で息を吸っていた。


「ああ、この香りも懐かしい。 生まれた家で飲んだ時のお茶の香りを思い出すよ。」


 そう言って、お茶の匂いを楽しむと、アリアリーシャに話しかける。


「あんた、お茶の淹れ方も上手なんだな。 飲む前にお茶を楽しめるなんて、気持ちが安らぐよ。」


 アリアリーシャは、笑顔を向ける。


「ちゃんとした人には、分かるのですね。 香りを喜んでくれたのは、初めてですぅ。」


「なんだ、いつも、こんなに、いいお茶を飲んでいるのに、誰も気が付かないのか。」


 そう言って、チェルエールは、ジューネスティーン達を一人一人確認する様に見る。


 その視線が気になったジューネスティーンは、少し渋い顔をして答える。


「アリーシャ姉さんの淹れてくれるお茶は、とても美味しいんです。」


 チェルエールは、その後の言葉を待つ様にジューネスティーンを見る。


 だが、ジューネスティーンは、それ以上何も言ってこないので、不思議そうな顔を向ける。


「なあ、お前の感想は、それだけなのか? 」


「えっ。 はい。」


 そう答えると、チェルエールは、やり切れない顔をする。


「おい、この茶葉もだが、この淹れ方は、とても上手なんだよ。 なんて勿体無い。 これだけの淹れ方ができるなら、帝都の一等地で、お茶だけで商売ができるぞ。 毎日、貴族達が入れ替わり店を訪れるくらいなんだよ。」


 そう言うと、アリアリーシャに向く。


「お前は、今度から、こいつらにお茶を淹れてあげたら、1杯について、中黄銅貨3枚、いや、5枚と引き換えで出してやれ。 こんな連中に、タダでお茶を淹れてあげるんじゃない。」


 アリアリーシャは、そう言われて、苦笑いを浮かべている。


 男子3人は、手をつけようとしていた、お茶とお茶菓子に手をつけられないでいる。





 アリアリーシャのお茶に、中黄銅貨5枚の価値が有ると言われて、自分達は、今、この場でアリアリーシャに支払わなければいけないのかと思った様だ。


 レィオーンパードとカミュルイアンは、お互いに顔を見合わせて、どうしようかという表情をしている。


 ジューネスティーンも1人でどうしようかと、考え出してしまった様だが、その隣に居るシュレイノリアだけは、チェルエールの言葉を気にする事なく、お茶を飲んでいた。


 それを不思議そうにチェルエールは、見ている。


 今の話は、半分冗談、半分本気で言ったのだが、自分の言葉で、男子3人が、手をつけられないのだと理解したのだろ。


「何してる。 せっかくウサギの姉さんが淹れてくれたんだ。 冷めないうちに、手をつけただどうだ。」


 そう言われて、レィオーンパードとカミュルイアンは、お互いを見てから、そーっとカップに手を伸ばした。


「あのー。 私は、マントの出来栄えを見たいんですけど、よろしいでしょうか? 」


 アンジュリーンが、チェルエールに断る。


 今のお茶の話を聞いて、温かいうちに飲まなければいけないのかと思ったのだろうが、それよりも自分のマントの出来上がりが気になっているのだ。


 先程、アリアリーシャの手伝いに行ったので、自分マントを見れてないので気になっているのだ。


「すみません。 私もぉ、自分のマントをぉ確認して置きたいですぅ。」


 チェルエールは、呆けた顔で、さっき自分が言った事も忘れている様な顔をアリアリーシャに向ける。


「ああ、私も納得できる出来に仕上がったと思ってる。 見てきておくれ。」


 心配そうだった、2人は、緊張気味の顔だったが、チェルエールの了解を得られてホッとして、2人でマントの方に行く。




 アンジュリーンとアリアリーシャは、出来上がりに満足した様だ。


 2人で、マントを見たり、つまんで裏を確認したり、首周りの出来栄えを見て、ヒソヒソと話している。


 そして、背中側に回って、今度は、さっきより大きな声で、キャッキャとはしゃいでいる様だ。


 背中が開いた時のために入れてある切れ込みに施されている縁取りに気に入ったようだ。


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