アリーシャのリクエストとマントの取付位置
チェルエールは、アリアリーシャのリクエストの、腕が出る部分として、マントの前に回ると、腕の手前に、二の腕の真ん中辺りから、裾まで、縦に白墨で直線を描く。
「これでどうかしら? 剣を出しやすい様になら、腕の手前辺りに切れ込みが入っている方が、具合がいいと思うけど、どうかしら?」
マントに縦の切れ込みの入る部分に線が描かれているのを、アリアリーシャは見て、自分の戦闘スタイルを頭の中でイメージしているのだろう、その部分をジーッと見つめている。
「多分、それでいいと思います。」
「じゃあ、このマントの要求は、こんなところね。」
そう言って、マントを外して、作業台の上に広げて、全体を眺める。
左右対称になる様にと考えつつ、表側のラインを確認して、裏を確認する。
背中の開く位置が若干ずれている様に思えるので、その辺りを修正して、肩甲骨のジョイント部分についいては、少し広めに開ける様にして多少のズレにも対応する。
これで、このマントは左右対称に加工を施してと思うのだが、最後に大事な事を思い出した。
「あっ、取り付け方法。」
そう思ってパワードスーツを見てからジューネスティーンを探す。
ジューネスティーンは、ボタンを決めて、作業台の方に戻ってくるところだった。
それを見て、丁度良いと思ったのだろう、ジューネスティーンに声をかけてきた。
「忘れていたわ、取り付け場所を決めないといけないから、ちょっと話をさせてもらえるかしら。」
「なら、取り付け用の突起をつけますので、パワードスーツに印でもつけてもらえませんか? 」
チェルエールはジューネスティーンに促されてパワードスーツの後ろに来る。
140cm弱のパワードスーツなので、チェルエールにも肩の部分は見る事が可能なので、2人で後ろに立つとチェルエールは指示を出してくる。
「肩のジョイント部分で開く様にしますから、ジョイント周りに前後に2箇所ずつ有れば、それと、背骨の付け根と、開閉部分の首回りに1箇所、あとは、前にマントの端を止める場所が有れば良いかな。」
チェルエールは、話ながら、パワードスーツのボタンを取り付けて欲しい位置を、白墨で印をつけていく。
「それで、形はどうする」
ジューネスティーンは、聞かれると、チェルエールが指示した場所に手を当てると、錬成魔法を発動させて直径1cm、長さ2cm程の突起を作っていく。
背中のパーツに4箇所、肩には3箇所と顎の下の首元に1箇所右半身に付けるとチェルエールに聞く。
「こんな感じでよろしいでしょうか? この突起にマントを差し込んだら、後で、突起の頭を潰して固定します。」
チェルエールは、ジューネスティーンが手を触れただけで、金属の形が変わってしまった事に驚くが、思った場所に突起ができたので頷いた。
それを見て、ジューネスティーンは、左半身にも同じ加工をする。
「できました。」
ジューネスティーンは、あっさりとパワードスーツに加工を施してしまった。
ジューネスティーンは、無詠唱の錬成魔法で加工をあっさりと行ってしまったのだ。
チェルエールは、作業台に置いてあったマントを取って、もう一度パワードスーツに当てて、位置を確認する。
白墨で印を付けて元に戻す。
錬成魔法なのだろうとは思うのだが、簡単に加工を終わらせてしまったので、チェルエールは、言葉を失ってしまった。
「これで、このパワードスーツは、終わりにしてよろしいでしょうか? 」
アリアリーシャのパワードスーツへ取り付けるマントの設計は終わった。
「ああ、大丈夫だ。」
チェルエールは驚きのあまり、軽いショックを受けている。
これ程の能力を持った冒険者が、自分の店を利用してくれた事で、新たな顧客を得られたと思ったのだ。
この加工を縁に、常連客に育てたいと思った様で、徐々にやる気が戻ってきた。
「よし、それじゃあ、残り4台も進めてしまおう。」
やる気が戻る様に自分に言い聞かせるように言ったのだった。
その調子で、残りも進めることができた。




