マントのレイアウト
アリアリーシャは、パワードスーツの内側まで確認する必要があるのかと、思った様だ。
流石にカインクムの様に男性だと、嫌だったのだが、女性のチェルエールには、それ程、嫌な感じも受けなかった様だ。
同性になら許せる。
そんな感情が、アリアリーシャに有る様だ。
そんなチェルエールの行動を見ながら、それがマントの長さを決めるのに必要な事なのかと思うのだが、アリアリーシャは、何も言わずに次の質問に備えている。
チェルエールは、パワードスーツの腰回りの工夫を見て満足すると、指示された所に、まち針を刺して切る位置を確認する。
現物合わせとは言っても、当てた状態で切ってしまっては、グルリと一周まわったら合わせ目の部分の高さが違ってしまう事もあるので、後で、寸法を測りながら、左右のバランスを見ながら裁断する事にしたのだ。
後ろに回ると、今度は背骨の位置を確認して、先程開いた状態を思い出して、切れ目を入れて、後ろの裾は、切らないでおこうかと思ったのだが、腰の垂れまでの長さとなると、背中を開いた時に、生地が余るようにも思えないので、下まで完全に切って背中から二つに分かれる様にと考えたのだ。
白墨で、マントの背中に縦に一本の線を、首のところから、裾まで描いた。
肩も開いたので、マントの上から、パワードスーツの肩の切れ目を確認しつつ、肩の開く場所も白墨で、線を引く。
開閉の時に中心となる部分にも印を付けると、切り込みの感じを線で描いておく。
マントは、少し広めに切れ込みを入れて、パワードスーツが開いた時に、マントが破けない様にしておくのだ。
大凡の開閉に付いての感じが掴めたので、マントを外してパワードスーツをもう一度確認すると、背中の肩甲骨付近に何かを固定する為の金具を発見する。
「ねえ、この金具は何なの? 」
「これはぁ、オプション装備の固定金具ですぅ。 前に有るボードを背中に取り付けたりぃ、予備の武器を取り付けられるんですよぉ。」
チェルエールは、持っていたボードが何に使われるのか分からないが、確かに手で持つ様な物では無いと思った様だ。
それをこの背中のジョイントに取り付けられるのだろうと理解する。
そうなると、この部分も開けておく必要があると考えた様だ。
(それなら、この背中の出っ張ったところは、マントに穴を開けて、出しておく事にした方がいいわね。 そうなると、背中の上半分は、マントが靡く事は無くなってしまうのね。)
チェルエールは、マントを着けた時の状態を頭に描きつつ、それによって、どんな影響が有るかを考え出す。
チェルエールは、パワードスーツを正面から見て、また、後ろに回りながら、全体を確認していた。
(そうね。 これだったら、右側と左側に分けて、マントを取り付けられる様にした方が、乗り降りの時もだけど、取り付けの時も楽になりそうだわ。)
そう考えていると、残り5台有る事に気がつく。
「ねえ、マントは、全部で5枚なのよね。 出入りする場所は、どれも背中からで構わないのかしら? 」
「ええ、基本構造は、どれも一緒ですから、背骨が左右に開いて背中から出入りします。」
チェルエールの質問にジューネスティーンが答えてくれた。
それを聞いて、チェルエーるは、残りのマントを見る。
(なるほど、だったら、残りも基本コンセプトは同じって事よね。 マントの形も基本は同じ構造にして、後は、それぞれの形に合わせて加工でいいわね。)
チェルエールは、納得する様な表情をする。
チェルエールは、もう一度マントをつけると、位置を確認する。
肩甲骨の後ろに左右1箇所ずつ有るジョイント部分を避けるように穴を開けることにする。
すると、シュレイノリアが、チェルエールに声を掛けてくる。
「飾りボタンの位置も決めておく。」
そう言われて、飾りボタンを忘れてた事を思い出した様だ。
シュレイノリアは、そんなチェルエールを気にせず、パワードスーツの脇に来る。
「脇の下辺り、前と後ろに1つずつ取り付ける。 左右なので、これで、4個。 後は、その4個の下に間隔を開けて配置する。 8個か12個の配置になる。 姉さんのパワードスーツなら、8個で良いかと思う・・・。 いや、前衛の姉さんなら、12個にしておこう。 少し短いかもしれないが上手く配置して欲しい。」
「飾りボタンの位置。」
そう言って、前に回ると、左だけに印を付けていく。
「あのー。 腕が出る様にぃ、加工してもらえますかぁ。」
チェルエールにアリアリーシャは恐る恐る聞く。
「構わないわよ。 どんな感じにしたいのか教えてくれれば、加工するわよ。」
「なら、この辺りかなぁ。」
そう言うと、パワードスーツの前に出て、腕の外側に沿って、肩のパーツの少し下、二の腕の中間点辺りまで、切り込みを入れたいと言う。
「これは、左腕の前だけで良いの? 」
「いえ、両腕がぁ出るようにしたいですぅ。」
マントとは言っているが、実際には、ポンチョ型なので、前も覆い被さる様にできているので、腰に帯びている短剣を出す時、少し具合が悪いのかとチェルエールは思ったのだ。
ただ、剣を抜いてマントの外に出す時に、刃でマントに傷を付けるだろうと思うが、対策できないとチェルエールは思った様だ。
「一応、布がほつれない様にしておきますけど、自分の剣で、マントを切る可能性がある事を、覚えておいてくださいね。」
チェルエールが注意を促すが、それを否定する様にシュレイノリアが答える。
「それは問題無い。 魔法紋で防御力を上げておく。 自分の刃で切れない様にするのも簡単。」
なる程なとチェルエールは感心した様な表情をする。
そんな魔法紋を刻めば、どうにかなるだろうと納得した様だ。




