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東の森の魔物を倒したジュネスとチェルエールの過去

 

 チェルエールは、そんなジューネスティーンを、ジーッと見つめながら、自分の記憶を辿ると、噂で東の森の魔物を倒した新人冒険者のパーティーが有ると聞いた事を思い出す。


「そう、あなた達が、東街道に現れた東の森の魔物を倒したのね。 それなら、さっきの話の深さも分かる気がするわ。 そうだったのね。 改めて、うちの店に来てくれた事を歓迎するわ。」


 そう言って、チェルエールはニヤニヤしながら、ジューネスティーンの描いたパワードスーツのポンチ絵を眺める。


「ほんと、面白いわ。 こんな重装備で重そうなフルメタルアーマーを使って、東の森の魔物と戦うなんて、誰もこんな発想は無かったわね。 確かに東の森の魔物は強力だけど、このフルメタルアーマーなら東の森の魔物の攻撃にも耐えられるのでしょうね。 見た感じだと、通常のフルメタルアーマーよりかなり防御力が高いように思えるわ。 攻撃力の高い魔物でも、その攻撃を防がれてしまったら、後は、タコ殴りに会うだけだから、倒すのは時間の問題になるわね。 とても興味深いわ。 ねえ、良かったら、あなた達のフルメタルアーマーを見せてもらえないかしら? この考え方は、画期的な発想だと思うわ。」


 そう言って、ジューネスティーンをジーッと見る。




 チェルエールは、ジューネスティーンが、どんな考えで、このフルメタルアーマーを作ったのか、実物を見たら、その設計思想に何が有るのか、とても興味が湧いてくるのだった。


 新たな物には、新たな設計思想が有り、言葉で語るより、物を見た方がどれだけ楽しめるかと思うと、その衝動を抑えられなくなっているのだ。


(この人は、どんな物でも、新しい物は、何でも見たいのか。)


 ジューネスティーン達は、チェルエールに、そんな事を思ってているようだ。


 一方、チェルエールとしたら、今まで聞いた事も無い設計思想で作られている、ジューネスティーン達のフルメタルアーマーが、どんなものなのかと考えると、とても興味をそそられるようだ。


 チェルエールとしたら、自分の知識欲を満たす為に、ジューネスティーンの描いた図と、その構造がどうなっているのかと想像を膨らませて、興奮気味になっているのだ。




 チェルエールを見ていると、頬を赤くして、その頬を両手で覆い、何かを妄想しているような顔つきをして、身体をくねらせている。


 そんな姿を見て、変な人だと思うのだが、このチェルエールは、ジューネスティーンに、さっき何で帝都を落とす話を聞いてくるのか、気になったのだ。


 ジューネスティーンとしては、面白い会話だと思って話したのだが、よく考えてみると、工房区の縫製士がする話ではないと思うのだった。


「すみません。 さっきの帝都を攻撃する話なんですけど、なんでそんな事を聞いたのですか? 」


 ジューネスティーンは、チェルエールが、軍事的な才能も、政治的な才能もあるのに、何でこのような工房区で働いているのか気になったのだ。


 話した事は、戦略面についての事や戦術面の事で、一般市民には無縁の事なのだが、かなり軍事に詳しい人が軍では無く、こんな工房区で糸を紡いでいるのか気になったのだ。




 チェルエールは現実に引き戻され、ジューネスティーンに聞かれた事に答える。


「私は、貴族の家に生まれたんだ。 その家では一番下の娘だったんだけど、上に兄やら姉やら大勢居たのでな。 その中で自分の身を立てるにはって考えて、私は教養を身につける事にしたんだ。 その甲斐あって、帝都の大学でも成績は優秀だったんだよ。 卒業の時に、たまたま、皇女殿下が留学する話が出て、皇女殿下を1人で留学させるわけにはいかないからという事で、私も一緒に南の王国に国費留学生として同行することになったんだよ。 でも、留学中に私の家が不祥事を起こして、取り潰されてしまったんだ。 その時、一緒に留学していた、皇女殿下が、便宜を図ってくれて、留学も、そのまま続けさせてもらえて、一緒にいた、今の支配人の、イルルミューランが、今は、隠居中の父親である、イスカミューレンさんに、話をつけてくれて、卒業後は、ここに店を出させてくれたんだよ。 まあ、家が取り潰された貴族の子供だから、公職にはつけなかったし、大手を振って仕事も出来ないので、ひっそりと暮らしているんだ。 今の知識は、帝都の大学と南の王国の大学で仕入れたのさ。」


 それで、かなり高度な会話も成立したのかと納得する。




 しかし、そんな素性なら警戒が必要ではと、ジューネスティーンは感じているようだ。


 今の話が何処かに漏れて帝国に警戒されるのではないか。


 皇女殿下と一緒に留学したのなら、皇族と何らかの繋がりがあるかもしれない。


 そんなジューネスティーンの思いを察したのかチェルエールが声を掛ける。


「昔は、貴族だったってだけだ。 今は、帝国臣民の1人、ただの平民さ。 でも、元貴族って知っているのは、この商会の中では、大旦那様と一緒に留学した今の支配人と副支配人の奥様の3人だけかな。 もう随分と昔の話だから、貴族の中でも私の事を覚えている人は居ないだろうね。 それに貴族位を剥奪された家の家族なんて、当時は、どの貴族達も、私に顔も合わせてはくれなかったから、今でも貴族からの仕事は何も無いのよ。 それで、この中、工房区と隣の商業区にある店の下請けで細々と暮らしているのよ。」


 それにしても、そんな高学歴なのに縫製工房で1人ひっそりと仕事をしているのは勿体ないと、ジューネスティーンは思ったようだ。


 そんな経歴ならもっと別の仕事をしても良いように思うし、留学して服のデザインを研究してたのかとも思うが、今の話からも判るように、服のデザインで国費留学させてもらえたとも思えない。


 国費留学する位なのだから、それに、今のやり取りを聞いても、もっと別の事を勉強していたように思えるのだ。


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