表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1018/1356

ジュネスの帝都攻城戦の案

 

 戦争の最中に、堀の脇で堤防を作れば帝国軍が、それを妨害するだろう。


 それは、どんな軍隊であろうと、黙って見ているということは有り得ない。


 チェルエールは、その妨害をどうやって阻止するのかが気になった。


(堀の脇に高い物を作れば、その分城壁の防御効果が落ちる。 妨害をしない訳がない。)


 また、その労働力を兵士に行わせるのは、兵士の士気の低下につながる可能性が高いのだ。


「でも、塀を作るって、その労働力はどうするの? 帝国軍だって馬鹿じゃないから、そんな事をしていれば、妨害してくるよね。 完全じゃないけど防壁も用意されている訳だから堀の反対側に塀を作るのは無理でしょ。」


「ああ、弓の射程範囲内で塀を作るのは、無理でしょうね。 ある程度離れた所で行います。 それと地形って高い低いって有りますから、その高い丘とかも利用しての塀になります。 けど、攻撃するよりは有効な手段だと思います。 方法は、お金さえあれば、場合によっては帝都以外の村から人足を雇います。 水を堰き止めるだけですから、土嚢一つ幾らで買い取るとかって、近隣の村にお触れを出せば、金額によってはかなりの量が期待できます。 それと錬成魔法を使える人を軍の中で探して塹壕を掘るようにフリをして塀を作ります。 大掛かりな工事になりますけど、攻撃側に人的被害が出にくいですからね。」


「なる程、土嚢を買い取るのか、それを使って塀を伸ばすのか。 まあ、水攻めは分かったけど、帝都に軍を進めた後に長期戦を仕掛けているのだから、その方法だと、攻撃側も兵糧が沢山いるよね。」


 ジューネスティーンの話に、チェルエールは、その通りだと思うのだった。




 今までの話は戦術的な話になる。


 だが、チェルエールはジューネスティーンの話を聞いて問題点を指摘して、その作戦でも帝都は落城しない事を証明したかったのだが、中々、上手くいかずにその作戦の外側に問題点を見つけにでた。


「なあ、帝都を兵糧攻めにするのだから、攻撃側もそれに応じた兵糧が必要になだろう。」


 その前提が崩れて仕舞えばこの作戦は意味を成さなくなるのだ。


「帝都を攻撃するように場合は、長距離遠征になりますから、それなりに兵糧を運ぶことも考えて行軍するでしょうね。 それに、その場合、帝国は国境を突破されているとなりますから、条件付きではありますが、後から帝都まで兵糧を運ぶことで追加も可能です。」


「うーん。 その場合、帝国は何国とも国境を接しているから、その国境防衛隊もあるし、東の森の防衛隊もあるわけだから、その軍隊が黙ってないわよね。」


「ええ、だから条件付きなんですよ。 帝都まで進軍した時に、攻撃側は本国との連絡が取れる事が絶対条件なんですよ。 帝都の攻撃というのは、戦術的な話になりますけど、それを確定させる為には、戦略が必要になります。 戦略的に、帝国の国境警備隊や、東の森の防衛隊を無力化するか、遊兵化しなければならないですから、帝国を囲む国によって国境警備隊を釘付けにさせて、東の森の防衛隊も何らかの方法で無効化させる必要があります。 もし、それができなければ、帝都を囲んで攻撃するなんて事は有り得ない話なんですよ。」


「まあ、確かにそうね。 さっきの飢えた軍隊に勝ち目は無いって事なら、帝国軍は、囲まれても攻撃側の補給を絶つ事で、攻撃側の軍の兵糧を尽きさせる方法を取るわね。」


「そのための帝都の城壁と壁を囲む建物なんだと思いますよ。 一度痛い目を見させてから睨み合いになるようにさせる。 帝都の中は危険だから、帝都の外での野営を強いる。 その後にゲリラ戦で疲弊させたり、補給を断つ事で撤退を余儀なくさせる。 帝都は、防衛を考えた城塞都市といった感じですから、無闇に帝都内の建物の接収が出来ないように考えていると思いますよ。」


「それなら、あなたなら帝国と、事を構えてしまったらどうする? 」


「仮定の話なので、何とも言えないですけど、自分が何処かの国の施政者なら、帝国とは友好を結ぶことを考えます。 まあ、それは帝国に限った事では無いですけど、倒すよりは友好関係を結ぶ方が、お互いに楽ですから。」


「そうなの? 帝国の軍事力は周りからは恐怖じゃないのかしら? 」


 チェルエールは、ジューネスティーンの帝国と友好を結ぶと言ったので意外に思ったのだ。




 帝国の建国は、他国よりも新しい新興国と言って良い。


 東の森の魔物から、街道を行く商隊を守る義勇軍が帝国の始まりになる。


 魔物の恐怖から身を守る為の費用を貰い商隊を護衛していたのだ。


 それが増えてきた事と、不毛の地と言われていた土地で農業を成立させ、一大穀倉地帯を作ったのだ。


 その穀倉地帯の収益のおかげで、東の森の魔物に対抗する軍を作り、建国当時は、他国とも揉め事はあったり、小競り合いもあったが、その後は、国として機能している。


 だが、帝国では亜人や他の人属以外のエルフ・ドワーフも含めて、奴隷制度が残っていることもあり、亜人属やエルフ属・ドワーフ属のように国からは国交も出来てない。


 人属の国からも奴隷制度が廃止された事で、帝国は蛮族の国と言った負のイメージが有る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ