パワードスーツと人のレイアウト
渡された石板にジューネスティーンは白墨で人の輪郭を描き出す。
前方からと、横からの人の直立した図を描いてから、茶色いチョークを手に取ると、人の輪郭の周りにパワードスーツの輪郭を人体の外側に描く。
色を変えて描くのを見て、チェルエールは分かり易いと感じたようだ。
自分の描くデザイン画と描き方が異なり、それが何なのかと考えるのだった。
「人の体がこんな感じで、立っています。 その周りにこんな感じで覆われております。」
そう言って人の輪郭の描いた外側に、機械的な線を描く。
「肩周りが随分と大きいですね。 それに、腕周りも大きいし、足回りも凄く大きい。 今まで、見た事が無いタイプのフルメタルアーマーですね。 肩周りは、乗せるようなタイプが多いのですけど、胸を覆うように作ってあるのですね。 普通は、胴を覆って肩周りは、腕の動きを重視して完全に覆うとかはしないで、肩周りは小さなパーツを当てるようにしているのに・・・。 これは、少し別の概念から作られている? か、な。」
チェルエールは、自分の考えていた形と、かなり違う事を指摘する。
「こんなポンチ絵で良くわかりますね。」
ジューネスティーンは、簡単に描いただけなのだが、チェルエールがそれを見て、フルメタルアーマーの構造も、良く理解しているように思えたのだ。
「あんた、絵上手だよ。 ポイントは抑えている。 でも、描いている感じは、絵っていうより図って感じだね。 絵にはその人の癖が出るんだ。 そうか、こう言った物を作るにあたって、色々描いていたな。 それと、私はデザイナーでもあるんだ。 デザイン画だって描く。 人の身体に合わせて周りの服を描くんだ。 フルメタルアーマーだろうが、服であろうが、人に着けるものなら何でも分かるよ。 伊達に年齢は重ねてないよ。」
年齢の話はどうでも良いが、イメージを感じてくれたのは、ありがたいとジューネスティーンは思った。
「ああ、何だか、図面とか描くのは、どういう訳か苦にならないんで、三面図とか断面図とか、寸法線を入れたりとか、好きなんですよ。」
「ふーん。 それでね。 職人というより、品評会に職人に指示を出す師匠のような感じだな。 その石板を見ていると、何だか指示書を見ているみたいな気がするよ。 これ見ると、私のいる業界でも上手くやれるし、上に上がれるだろうな。 一般的な鎧のイメージを打ち破って新たなデザインを打ち上げてきている。 基本を知っているから既成概念を超えられる。 でも、ぶっ飛んでいるようで、引き寄せられる魅力がある。 ・・・、考える力かな。 ・・・、部分的なところも、今のフルメタルアーマーとは概念的に違う。 よくここまで仕上げた。」
何だか褒められているようにも思えるのだが、微妙に違うように思える。
「しかし、鎧とか見て、よく分かりますね。」
「当たり前だ。 体に着る物なら何でも見てきたし、作ってきた。 流石に、鎧は作らなかったが、何かの参考になるかと思って、機会があれば鎧だろうが何だろうが見てきたよ。 それ以外にも、絵画でも美術品でも建物でも人に感動を与えると言われるものは全てだ。」
少し、変な方向まで見ているように思えるが、自分の見ている物だけ、その業界の物だけを見ているのは偏りが出る。
何に対してもアンテナを張り巡らせて、その物がどんな目的で作られているのか、描かれているのか作者が何を考えて表現したのかを見て知る。
それが大事な事だと理解しているのだと感じるのだった。




