マントの加工について
支払いは銀貨3枚になったが、特に問題になる金額では無かったのでスムーズに支払いを済ませる。
店員は、6着かと思っていたのだが、5着で良いのかとシュレイノリアに聞く。
「自分の物は有る。」
シュレイノリアは、ぶっきらぼうに答えるので、ジューネスティーンがシュレイノリアに変わって、店員に答える。
「彼女の鎧には、もうマントが付いてあったんですよ。 それを見て、私と残りのメンバーの物が欲しくなったんです。 それで、5着なんですよ。」
そう言われて店員は納得すると、5着の安くないマントを値切る事もされずに、購入してもらった事を喜ぶことにしたのだ。
店員から受け取った商品は、それぞれが受け取って、手に持って店を出ようとすると、店員が待つように言うので、少し待つことにすると、店員は奥の方に行く。
何か入れる物が有れば良いのだが、一般的に使い捨ての紙袋の手提げのようなものは無いので、そのまま持って行こうと思っていると、店員が戻ってきた。
手には、蔦で出来た大きなトートバックのようなカゴを3つ持ってきた。
「こちらをご利用ください。 このカゴはサービス品ですので、店に戻す必要もありません。」
そう言って、ジューネスティーン達のマントをカゴの中に詰めて、渡してくれた。
かなりの売り上げに貢献してくれたのだ、出る前に印象に残し、次も使ってもらおうと思い、サービスとして、買い物した物を入れるカゴを渡してきたのだ。
店員に礼を言うと店を出る。
店を出ると、レィオーンパードが声をかけてきた。
「これだと、パワードスーツを着た後に取り付けるようになるよね。 どれも、手前で止めるようになっているから、後から誰かに着せてもらう事になるよね。」
「言われてみれば、その通りだ。」
レィオーンパードの話を聞いて、カミュルイアンが同意する。
マントを付けるとなった時から、直ぐに分かっていた事だ。
それよりも、この2人が、その事に気がつかない方が、困った事だと思っていると、アンジュリーンが口を出してきた。
「やっぱり、あんた達はアホだわ。 シュレイノリアのマントを見たでしょ。 左右に分かれているのは、乗り降りに影響が出ないように分かれていたのよ。 これから、今、買ったマントを加工するのよ。」
「ふうーん。 じゃあ、それは、女子の方でお願いします。」
「って、なんでそうなるのよ。」
「だって、俺たち、裁縫なんて出来ないから、3人で手分けして手直ししてくれるんだろ。」
「自分のもの位、自分でやるのよ。 誰が、あんたら2人のなんて、手直ししなければならないのよ。」
「そうですぅ。 アンジュの手つきを見てぇ、あなた達はぁ、頼みたいとぉ、思うのですかぁ。 そんな事は、絶対にぃ、アンジュにぃ頼む物ではぁありません。」
その話を聞いて、男子2人が、何かを思い出しつつ、お互いの顔を見て、アリアリーシャの話にも一理あると感じていると、アンジュリーンも自分に頼む物では無いと言ってくれてホッとする。
「そうそう、自分の物は自分でやるのよ。 私の不器用なのは・・・、って、姉さん、ひどいわよ。 いくらなんでも、それはないでしょ。 それに私も女ですから、裁縫なら、この男2人よりは上手に出来ます。」
以前に繕い物をさせた時に、アンジュリーンが苦労していた事と、料理についても手伝ってはくれるのだが、散らかしてしまったり、指を切ったりと不器用な面を何度も見ているメンバー達には、見た目は良いのだが、そういった日常生活に必要な事については全く出来ない、日常生活不適合者の烙印を押されている。
メンバーのお茶を入れるのも、アリアリーシャが行うのは、アンジュリーンに手伝わせて、茶葉の量を間違えたり、トレーに乗せたカップを、ひっくり返されても困るので、そう言った配慮から行っているのだ。
「さぁ、それは、どうでしょう。」
そう言って、アリアリーシャは、僅かに嫌らしそうに笑う。
それを見てアンジュリーンは、自分の不器用さは、男2人に劣ると思っているのだろうと思った様子で、アリアリーシャにポロリと言う。
「姉さんの、意地悪! 」
これ以上、続けると止めどなく、この話が続きそうなので、ジューネスティーンが話を止める。
「まあ、そんなに初めから上手くいくとは思ってないから、加工についてはシュレイノリアのマントを参考にして、皆んなで手伝いながら加工するようにしよう。」
そう言って、なんとかアンジュリーンの不器用さの話題から、逸らそうと話しかけるのだが、アンジュリーンには、それが嬉しいのだが、素直にありがとうと言う気になれない。
「ふん。」
そう言って、顔を赤くしてそっぽを向く。
「それじゃあ、加工に必要な物を買いに行く事にしよう。」
だが、ジューネスティーンにも、マントを加工して、パワードスーツに取り付けるなんて事を、想定して無かったので、どうしたものかと思いシュレイノリアを見る。
「加工には、大きいハサミとそれに針と糸が必要。 糸はそれぞれのマントに合わせて選ぶ必要があるので、種類が豊富な店が良い。 それと切った後の解れ防止もある。 縁取りの布も欲しい。」
なる程、その通りだと思う。
それなら、この中でそういった店を探せば良いと思い。
「じゃあ、このモールの中を少し散策しようか。」
それを聞いて、アンジュリーンの顔が晴れてきた。
不器用な自分の事を、流石に面と向かって言われたのだから、心の中のモヤモヤが拭いきれないでいたのだが、この中を、色々と見て回れると思うと気が晴れたようだ。
アンジュリーンは、直ぐに残りの女子を引き連れて歩き始める。
その後ろをジューネスティーン達3人が後を追うように歩いていく。
ブラブラとモールの中を歩くのだが、初めて来たモールのような商店街では、店を探すのも一苦労になる。
少し歩いたが目的の店が見当たらないので、入口で外套の店を紹介してくれた事を思い出したので、入った時の門の受付に戻る。
服の綻びを直したり、小さくなった服を調整したいから、そういった物を売っている店を、紹介して欲しいと言うと、この区画は商品だけしか売ってないから、隣の工房区に行くように言われる。
イスカミューレンは、商品を売る為のモール、その店の2階は倉庫や輸出入の為の事務所になっていて、製造は隣の区画で行っていると教えてくれた。
「針や糸、ハサミを購入したいなら、そっちの方が品揃えも多いので行ってみると良い。」
門の管理人に、そう言われ、東門の方を示される。
「東門を出て、通りを挟んだ、その先が、イスカミューレン商会の工房区なので、そっちに行くといいよ。」
最初の西門の管理人に、言われて、中を通って、東門に行く。
東門を出る時に門番に挨拶してから出る。
通りは、皇城に連なる道とは違いそれ程広くは無いが、馬車が4台横並びでも十分に通れる位に広かった。
その通りを越えた先にイスカミューレン商会の工房区が有る。
そちらも同じように表には、窓が有るが人が出入りできるような幅は無く、縦に細い灯取り用の窓になっている。
そこも出入りの出来る扉は無く、中央の門からしか入れないようになっている。
通りを横切って工房区の入口に居る門番に事情を説明すると、直ぐに店の場所を教えてくれた。




