マントの選択
売られている商品の付与魔法の解除には、パスワードや様々なプロテクトが有り、それぞれの付与魔法師の、魔法に関する考え方を読み解き、付与魔法を解除する必要がある。
魔法を付与する。
それは、その付与魔法を、自分以外に知られてコピーされれば、その付与魔法師の仕事が、無くなってしまうため、付与魔法師は、解除やコピーが出来ないように、様々な工夫を施している。
その為、付与魔法の解除や上書きには、付与魔法を読み解き、手順通りに解除する必要がある。
魔法師が、読み取られたり、コピーされないために、付与魔法には内容を理解させない工夫をされているので、付与魔法の解除には、最初に魔法師の癖や技術力を確認する必要があるのだ。
プロテクトについては、それぞれの魔法師ごとのノウハウ・技術力・その人の癖を読み解く必要があるので、付与魔法の解除には簡単な付与であっても、解除に長い時間がかかる事もある。
また、付与された魔法を無視して、その上に新たな上書きのように付与した場合は、最初の付与魔法の影響で、後から掛けた付与魔法の効果が低下したり、場合によっては発動しなかったり、二つの付与魔法の反発によって、爆発の危険もありうる。
ならば、自分で付与魔法ができるのであれば、最初から付与魔法の無い物を選んだ方が簡単になる。
「確かに、戦闘用のマントには、多かれ少なかれ、付与魔法が施してあります。」
「なら、戦闘用のマントは不要。 何も魔法効果の無い方が助かる。」
それを聞いてジューネスティーンが、話を決めるように言う。
「それじゃあ、ここにある物の中から選ぶ事にしようか。」
それを聞いて店員は、価格の高い戦闘用マントを売りそびれたと考えつつも、アンジュリーンが気に入ったデザインの物を中心に進めて行く事にする。
戦闘用よりは安いが、アンジュリーンが選んだデザインは、最新の物だったので、他の物より価格設定が高めなのだ。
店員は、それで満足する事にした。
今、この時だけ、戦闘用の高い物を売り付けたとしても、家に戻ってから、付与魔法の解除に手間取って後悔したと思わせるより、彼らが求める物を販売した方が良い事を、店員は分かっているのだ。
店員は戦闘用に使われるのなら、一般の生地ではどんなに付与魔法を施しても、直ぐに破れて新しい物を買いに来てくれると思い、リピート購入の可能性が上がると考えたのだ。
何度も買いに来てくれるなら、今日一日の売り上げは低くとも、何度も購入する可能性を考えたら年間の売り上げは上がる。
店員は、そう考えていたのだ。
ジューネスティーンは、アンジュリーンのポンチョの値札も確認していたのだが、店員は、そのジューネスティーンの行動を見逃していない。
その金額を見ても、何も言わなかったと言う事は、その値段に満足していると判断でき、ジューネスティーンは、全員のマントを必要としているのは、今までの会話から分かっている。
6人分のマントの購入となれば、金額もはずむのだ。
多少の値引きは仕方が無いが、トータルすれば、彼らが購入してくれる売り上げは、高いと値踏みしたのだ。
店員の思惑など気にしてない、男子2人は、さっさと決めてしまったのだが、女子2人は、色々と、迷っていた。
また、ジューネスティーンは、シュレイノリアと二人で、ジューネスティーン用のマントを探していた。
身長180cmの長身と、二の腕と太腿の太さが同じで、逆三角形で胸板も厚い。
その身体に、重装甲のパワードスーツを付けるので、ポンチョでも、マントでも、かなり、大きめのサイズになる。
大きめのサイズを見つけては付けてみるが、生身の自分に丁度良い程度のサイズなので、パワードスーツの上に付けたら、小さすぎると思えたのだ。
そのため、ジューネスティーンが、体に纏っては、シュレイノリアが見て、サイズが小さいと、何度も首を振っていた。
中々、見つけられずにいたので、ジューネスティーンだけ、生地を購入して自作しようかと考えていると、店員が話しかけてきたので、大きサイズが無い事を相談する。
ジューネスティーンの話を聞いた店員は、少し待つように言うと、奥に消えていった。
暫くすると、店員は、大きな荷物を持って戻ってくる。
奥から大きめの物を持ってきてくれたので、その中の品を見て使えそうな物が有るか確認すると、何着かは使えそうだと判断した。
ジューネスティーンの物を店員に相談している間にアリアリーシャも決めていた。
若干、丈が長くなる可能性があるかと思っていたが、帰ってから、裾を切って仕舞えば、問題無くなると考えたと、後で聞く事になる。
流石に、店員に加工して使うとは言えなかったとのことだった。
ジューネスティーンもアリアリーシャが決まるのと同時に決めていた。
そんな中で、アンジュリーンだけが決まってなかったので、どうしたのかと聞く。
「どっちの色が、私に合うかと思ったら、どっちも良いので、迷ってるのよ。」
そう言われて、迷っている色は、鮮やかな赤と純白の、どちらにするかで迷っていた。
それを聞いたジューネスティーンが、目立つ色のどちらを選択しようかと悩んでいるアンジュリーンに声をかける。
「お前、このポンチョでピクニックにでも行くのか。」
アンジュリーンは、ジューネスティーンが、何を言ってくるのかと思い反論する。
「何、バカなこと言わないで。 決まっているでしょ。 これは、戦闘よ・う・・・。 すみません。 違う色にします。」
ピクニックと言われて、何を言っているのかと反論したが、パワードスーツで戦闘に使うとなると、目立つ色は控えなければ、自分が周りの魔物を呼び寄せてしまう事に気がつき、少し凹んだようになって答えた。
目的の場所は、東の森の探索になる。危険の無い森なら、目立つ色は自分の居場所をメンバーに伝えることも可能になるので、逸れた時に見つけやすいので有難いのだが、今回の探索は、世界最強と言われている魔物の住む東の森になる。
その森の中で目立つ色を使ってしまっては、魔物に遠方から見つけられてしまうことになるので、戦闘に入り易くなる。
通常の魔物の索敵範囲の外からでも、見つけられるような色は、リスクの上昇につながる。
アンジュリーンが、目的を履き違えず、正常な判断をすると、ジューネスティーンは満面の笑みをアンジュリーンに向ける。
「わかればよろしい。」
戦闘の時にド派手な色は、目立つ為、直ぐに見つかってしまう。
カモフラージュするにしても、全身を隠すように覆う必要が出てくるので、目立ち難い少し濃い色のグレーに変更して、少し残念そうに店員に言う。
「これで、お願いします。」
元気のない声で、そう言って店員にマントを渡した。
ジューネスティーンに、派手な色のマントを指摘されて、凹んでいたアンジュリーンを、見ていたカミュルイアンが、要らない一言を言ってきた。
「やっぱり、自分の世界に入り込んでいたんだ。 街歩きで遊びに行く時の物でも、買おうと思ったんだぜ。」
チャチャを入れる。
「うっさいわねぇ。」
アンジュリーンは、その一言に、直ぐに反応すると、膨れた声で返していた。
全部で5着のマントを用意した。




