イスカミューレン商会の内部
帝都の中で、イスカミューレンの商館は、最初の城下町の開発が行われた貴族街の南の第一区画に有る。
イスカミューレンの商館のある建物は、第一区画の南門を入ると、皇城の門に繋がる大通りの、右の一番手前にある。
その商館は、城下町を流れる運河に区切られおり、小さな城の堀の様にも思える。
建物を見ても城壁の様な壁に、縦に細いスリッド状の窓が見えるだけで、屋根ではなく屋上になっている。
そんな建物がイスカミューレンの建物の外周を覆っている。
それは、その堀に囲まれた建物全てが同じ形状に作られていた。
入口は東西南北の壁の中央に1箇所づつあり、門の様になっており、大きな金属の扉で開閉できる様になっている。
その入口は大型の馬車の行き来もできる様になっている。
この建物は、まるで皇城の出城の様な出立で有る。
門に入ると、内側には詰所があり、出入りを管理している様だが、人の出入りの管理をしているだけなので、ギルドカードを見せると入れてくれた。
外套を購入したいと詰所の人物に聞くと、区画の地図を見せて、どのあたりなのかと、お薦めの店を、丁寧に教えてもらえた。
門を潜り、内部に入ると、多くの商店が有り、大型商店街といった様子を見せている。
建物は、口の字型の建物となっており、建物の内側に向かって間口が開かれている。
また、口の字の中央にも建物があるが、そこは、事務所となっているので、販売施設は無いと、入口で聞いたが、外側の建物と中央の建物の間は、ちょっとした公園の様になっており、中央の建物と結ぶ通路が建物から8方向に出ている。
その周りは公園の様に整備されており、寛げる様にベンチも用意されている。
ジューネスティーン達が、泊まっている金糸雀亭付近の新市街も賑わっていたが、この区画は更に賑わっていた。
イスカミューレン商会の建物の内部を見て驚きつつ、教えられた方向に進む。
女子3人は、シュレイノリアを中心に、両脇の二人がはしゃいている。
見る物全てが新しいので、建物やその店に売っている物を見てははしゃいでいるのだ。
その後ろを、ジューネスティーン達、男子3人が後を追う様に歩いていく。
周りを歩く人達は、商人風の人が多いが、一般の買い物客や冒険者風、職人風の人もおり、様々な人の往来がある。
ジューネスティーンは、周りの人の話しに耳を傾けながら歩いていた。
帝都でも、このイスカミューレンの商会は、様々な物を取り揃えているので、ここに来れば、大凡のものは揃えられることから、工房の主人や従業員が、買い出しに来ている様である。
時々、女子達と言うより、アンジュリーンが目的以外の店に入りたがるので、全員でそれに付き合う。
ジューネスティーンは、店員と話をして、この区画の事や、イスカミューレンの事を聞いていた。
この区画に店を構えているのは、イスカミューレンの傘下の商人達で、イスカミューレンの店は無く傘下の商人達が商店を経営している。
イスカミューレンの商会は、建物を貸出す事と、商材の情報から、傘下の商人達の売上貢献を行なっているだけなので、商会というより、商業ギルド的な存在の様だと、ジューネスティーンは思ったのだ。
目的の商店街に入ると、どの店も店先にショウウインドウが有り、目玉商品を綺麗に飾り付けている。
ショウウインドウを覗き、ウットリとしたり、目を潤ませたりと、顔を綻ばせたりしていた。
女子達の顔を見ると、本当に嬉しそうだ。
特にアンジュリーンの顔は、笑顔の百面相じゃないかと言う様な程である。
その中で歩いて行くと、ポンチョ風の服をショウウインドウに置いてある店を見つける。
それを見たアンジュリーンが、嬉しそうにジューネスティーンに話しかけてきた。
「ねえ、これ見て、このデザイン。 腰の辺りまでしか丈がないけど凄く上品な感じ。 ほら、首のところで止まっているから、正面の中央が少し開いていて、でも、ゆったりとしているから開いた状態のままにならないのよ。 それと、腕の辺りにスリットが入っているから、ここから腕を出してもマントのゆとりが有るから、腕を動かすのにも普通のマントより邪魔にならないと思うわ。」
言われてショウウインドウを見つめるジューネスティーン。
アンジュリーンに指摘された事を頭の中でシュミレーションしてから答える。
「そうだな。 このポンチョは使えるかもしれない。 じゃあ、中に入って色々見てみようか。」
「そうと決まったら、早速、入ろう。」
そう言うと、アンジュリーンが真先に店の扉を開く。
ジューネスティーンが帝国において、人種上位主義なのでと思い、慌てて止めようとするが遅かった。
慌ててアンジュリーンの後を追いかける事にする。
中に入ると、天井が高くショウウインドウの様なマネキンが、頭より少し上に置かれている。
洋服下のハンガーに掛かっている洋服の見本なのか、通り毎に違う服が着飾っている。
入口付近は一般客用にサイズも色も取り揃えてあった。




