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剣 〜焼き入れの準備 2〜


 ジューネスティーンが考える剣は斬る為の曲剣であり、鍛治で叩いで直剣を作り硬度を増す為の焼き入れの際刃側と峰側の焼き入れ具合を変化させて曲剣にしようとしていた。


 そして、焼き入れの入り方を変える為に粘土を用意して、刃側と峰側に粘土の厚みを変えて塗ることで、高温に焼かれた刀身が一気に冷やされる際に粘土の厚みの違いから刃と峰の温度の下がり具合を変化させる。


 焼き入れを行う事で刃の硬度を更に高めるが、その時の下がる温度を調整して剣を曲げる事ができないかと考えていた。


 剣は、芯に軟鉄を使う事によって、剣で斬った時の衝撃を吸収させようと考えて作っていた。


 刃側から鎬の先、峰の近くまで表面を硬鉄が、芯に使っている軟鉄を覆うように作られている。


 そして、どんなに硬い材質であろうと、絶対に曲がらないなどという事はない。


 どんなに硬い材質だろうと、細長くしたら曲がる。


 ジューネスティーンの考える剣は、軟鉄に硬鉄をコの字型に覆うように貼り付けてから伸ばして剣にしている事から、叩いて伸ばした剣の硬鉄部分は薄く伸ばされている。


 斬った時の力は芯鉄として使われている軟鉄が、その衝撃を緩和させ芯の軟鉄が衝撃を受けてくれると考えていた。


 そして、斬る為の剣にするには弧を描かせる。


 一般的には、曲がった状態で作られるので、刃厚と刃幅を均一に作る事が難しい事から曲剣の製造は鍛冶屋は嫌う。


 ジューネスティーンの方法は、際に刃と峰の焼き入れ具合を変える事によって曲がりをつけるという発想だったのだが、今までに聞いたこともない方法の為、その方法を聞いても2人以外は理解が及ばなかった。


 新たな技術、今までに無かったアイデアを理解できない誰かに伝えても笑われて終わる。


 笑われた者は、その悔しさから本気でその方法を確立させようとして完成させる。


 笑った者は、笑われた者が新たな技術を確立させたのを見て後から後悔する。


 人の頑張りを笑う者に未来は無い。


 人を頑張りを笑う者は、考える事を終わらせているから人のアイデアが荒唐無稽の無意味なものに思え、人の頑張りを笑った者は笑われた者の頑張りによって、最後には悔しさを味わう事になる。




 ジューネスティーンは、粘土の申請の許可をもらう事ができたので、鍛治工房に戻って最後の材料を剣にしようと準備を始めていた。


 最後の材料では、太刀にすることはできないので短剣となってしまい、刃渡り30センチ程の長さになってしまった。


 せっかく用意できた材料なので、最後の最後まで剣にしようと考えていた。




 ジューネスティーンが作業を始めようとしていると、鍛治工房にシュレイノリアが入ってきた。


「おい、ジュネス。粘土は用意できそうか?」


 シュレイノリアもジューネスティーンが、粘土を要求して許可が下りたのか不安だったようだ。


「ああ、最初はダメだと言われたけど、メイに教えられた通りに話しをしたら許可が下りたよ」


 その答えを聞いて、シュレイノリアは面白くなさそうにジト目でジューネスティーンを見た。


「お前、最初は断られたのか」


「ああ、でもメイに言われて使用量の事を伝えたら許可が下りたんだ」


 ジューネスティーンは素直に答えたのだが、シュレイノリアには何だか面白く無かったようにムッとした表情をしていた。


「ふーん、そうか。断られたら、メイが何とかしてくれたのか」


 ジューネスティーンは、用意しつつシュレイノリアと話していた。


「ああ、話をした時、どれだけ使うかなんて考えてなかったからな。メイが、その部分を指摘してくれたんだ。そうなんだよな。剣の焼き入れに使う程度なら、峰側の方だけ多く粘土を塗るだけだから、使う量は大した量になるわけないけど、最初の時は、それに気付かずに話してしまったんだ」


 ジューネスティーンは、鍛治の準備をしつつ話していたのでシュレイノリアを見ていなかった。


「やっぱり、メイのような人が居てくれた事で助かっているよな。色々な事に気が付かせてくれた。やっぱり、歳上だから経験が多いので本当に助かるよな」


 シュレイノリアは、何か気に食わないような表情をしたまま黙ってしまっていた。


 ジューネスティーンは準備が終わると、シュレイノリアを見ると、その表情を見て驚いた。


 シュレイノリアの表情には怒気がこもっており、そして、視線はジューネスティーンをまばきもせずに睨みつけていた。


「おい、お前は何でメイに相談をしたんだ!」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンと視線が合うと表情と同様に怒気のこもった声でジューネスティーンに聞いた。


「えっ! あっ! そのー、受付で呼ばれて話したんだ」


 シュレイノリアは、表情を変えず今の言葉を噛みしめるように聞いていたのだが、ジューネスティーンとしたら、シュレイノリアが何でそんな表情で聞くのかと困ったように見ていた。


「お前は、何で、直ぐに私の所に相談に来なかったんだ!」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアが何で自分の言った事が通じなかったのか分からないといった様子で見た。


「あ、いや、だって、受付の前を通らないと外に出れないでしょ」


 シュレイノリアもギルドの購入申請をする場所が、受付を通った先の奥にある事を知っている。


 その事を指摘されたので、シュレイノリアは反論できずにいた。


「メイは受付嬢なんだから、メイの前を通らないと帰れないし声を掛けられたら無視はできないでしょ」


 ジューネスティーンの正論に、シュレイノリアは、また、反論できずに奥歯を噛み締め前歯を見せていた。


 ただ、ジューネスティーンは、シュレイノリアが、何でそんな表情をするのか理解できずにいた。


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