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変わり武器オタクのアンデレ

 木箱を並べただけのテーブルと椅子に座った。

 オレとモリとピウスの他に樹海の魔獣(フォレスト・ベアーズ)のアンデレも一緒だった。他の面々は護衛の任にあたっているらしい。そいつらの昼飯は大丈夫なのかと訊くと、屋台の簡単な物でサッと済ませたという。


「交代で休憩をとるんだよ。ジャンケンで決めたんだ」


 モリが言った。


「人間の心が昼夜で移ろうように、町も昼には昼の、夜には夜の気が満ちる。良い悪いがあるわけではないが、実のところ私は夜の気に惹かれる質でね。ジャンケンなどという確率の遊戯で決めるべきではなかったと後悔しているよ」


 木箱を挟んでオレの向かいに座ったピウスがしかめっ面で言う。

 錬金術の難問にでも挑んでいそうな顔だが、要するに夜の店に行けるのが羨ましいということだ。


「昼もおすすめの店があるんじゃないのか?」


 さっきオレを連れて行くと言っていたはずだ。首をひねってそう訊く。


「給仕を受けられる店は案内できる。だが娼館が開くのは夕刻からなんだ」


 哲学的な口調でため息まじり。だけど言葉はド直球。本当にどうしようもねえな、このオヤジ。旅の間ぐらいガマンできないものなのか。


「おい、アンデレ飯の時ぐらいそれやめられないのか」


 モリの声につられて隣のテーブルというか木箱を見る。

 ゴマ塩頭の角刈り男がカチャカチャと何本かの金属棒を繋ぎ合わせた物を弄っている。武器のように見えるがモリの言う通りわざわざ飯屋で取り出す物でもない。


「何だそれ?」


 金属棒は三本。中が空洞になっているようでそこに鎖が通されている。鉄パイプを鎖が繋いでいるような形だが、真ん中の棒だけ少し経が太そうだ。それも均一ではなく左右の端が緩やかに広がっている。逆に左右の棒の真ん中側の端は少し細くなっている。片端の棒の端にはコックのようなパーツがあり、それを反対側に倒す事で鎖が引かれるようだ。アンデレはためつすがめつするかのようにコックを倒したり鎖を引いたり弛めたりしている。


「ん、武器だな。説明は難しいが、名付けるなら三節棍(トライフレイル)といったところか」


 顔を上げないままにアンデレが答えた。鉄鎖を触る度にぐりぐり動く前腕の筋肉も、硬く引き締まっていてまるで鋼で出来ているかのようだ。


 色々と異なる点はあるがマンガとかで見たことがある武器だ。だけど武器が身近にあるこの世界でも見るのは初めてだ。


「このコックを倒すことで戦闘中にフレイルと棍に変化させられる。片方の先に刃や棘付き鉄球を取り付けることができるから、槍やモーニングスターとしても使えるぞ」


 相変わらず上げない顔。その眉間には深いシワが刻まれているが、決して不機嫌なワケではない。むしろ自作武器について質問をされてご機嫌なはずだ。


 アンデレは戦士であり鍛冶師でもある。変わった仕掛けのある武器を発明することに人生を費やしている、いわば仕掛け武器オタクだ。

 戦士てしての力量も決して低くはないのだろうが、毎度毎度使い慣れない発明品を持ち出すものだから戦力として計算に入れられないと、以前モリがぼやいていた。


 だが個人的には好きだ。実戦であれらの武器を使わせてくれるといっても断るだろうが、実用性はともかく変な仕掛けのある、機構だけは良くできた武器を見学するのは楽しい。というか全ての男子でこれを嫌いな者がいるだろうか。


「鎖の長さとコックを引いた時のテンションの調整が難しいんだ。強すぎるとバラける時にもたつくし、弱いと棍としての強度に影響が出る」


 アンデレが話してる間に料理が運ばれてきた。

 料理が運ばれてきてようやく、渋々といった体でアンデレは三節棍を下に置いた。


 オレの前に置かれたのは炭火で焼かれた何かの肉と何かの青菜、それから汁に漬かった麺だ。見るとモリは宣言どおり麺ではなく、白いマッシュポテトのような固まりが肉に添えられている。芋の粉を加熱加水しながら練ったものらしく、このあたりの主食とのことだ。

 ピウスもアンデレもモリと同じだ。やはり麺は人気がないらしい。


「麺の良さが分からないなんて残念なやつらだな」


 そう言いながらオレはフォークを手に取った。

 だけどマッシュポテトの味も気になるのでモリに少し分けてもらおう。

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