表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/80

第55話 アンドレア嬢とカフェ決闘

翌日、アンドレア嬢がタイマンの決闘を申し込んできた……のではなく、二人きりでのカフェ巡りを申し込んできた。


カフェ巡りを断る理由はない。仕方なく出かけることになった。


アンドレア嬢はアッと驚く派手衣装の趣味の持ち主でいつも猛烈に目立つのだが、残念なことに今日の私は、対抗意識を燃やしたアリスのせいで、ド派手ドレスを着せ付けられて、出かけることになってしまった。


校門のところで私と待ち合わせをしたアンドレア嬢は、私のドレスを見て、一瞬黙った。


「どうしたのよ、その派手な格好は」


そのセリフ、アンドレア嬢だけには、言われたくない。

私は目立ちまくる真紅のスカートと濃い赤地に黒と金で模様が刺繍された上着を着ていた。一方のアンドレア嬢は、真っ青な格好だった。


「制服で来るかと思ったから、今日はあなたに合わせて地味な色にしたのに」


その青は地味ではない…と思う。


「あなたに合わせてみたのよ」


仕方がないので、私はそう言ってみた。


「ドレスの色について、事前に注意するべきだったわ。そんな派手なドレス、兄に嫌われてしまうじゃないの。兄は地味な方が好きなのに。早く馬車に乗って」


予定していた店に着くと彼女は威風堂々と店に入り、予約していた個室に入って行った。


「お話があるのよ」


彼女は切り出した。


「あなたは兄について、どう思った?」


私はびっくりした。ルイ殿下と別れてくれと言われると覚悟していたのだ。


「この間、初めてお会いしたばかりで何とも……」


「エクスター殿下と婚約解消したふりして、二股かけるつもりなんだったらやめてね。なんでも、半年間婚約猶予になったそうじゃないの」


「その話、どこから聞いて来られたのですか?」


「エドワードからよ。ベアトリスの旦那様。絶対に人に言っちゃダメだって注意されたから、あなた以外には言わないけど」


エドワード様か。確かに正確な情報源だ。


「婚約は決まっているの?」


アンドレア嬢が畳みかけてきた。


「決まってるんじゃないかと思うんだけど」


「なに、訳の分かんないこと言っているのよ。当事者でしょ?あなた」


「でも、父が公表しないのよ。私にもよくわからないわ。それに、あなたのお兄様とエドワード様によると、ルイ殿下は私に選択の余地を与えたいっておっしゃってるそうなの」


「なに、それ?」


私も聞きたい。何なんだろう、それ。


「真意がわからないのよ。さんざん婚約者みたいな真似をしておいて、今度は自由にしてやるって、何をどうしたいのか私にはわからなくなってきたわ」


アンドレア嬢は、むうと頬をふくらませた。


「あなたのことが嫌になったんじゃないの? エクスター家に釣り合わないし、別に成績以外、いいところはないし。まあ、顔は立派だけど」


いってくれるなあ……アンドレア嬢。これが無邪気と言うものなのか。そして、エクスター殿下主演の溺愛劇場で心破れ、敗退したはずじゃなかったの? なんで勝手に復活しているのかしら。


「父には、エクスター公子との結婚を後押ししてくれるように頼んでいたのよ。でも、少し考えなさいと言われているの」


「え? そうなの?」


てっきり、侯爵家ぐるみで結婚を進めているものだと思っていた。


「父はエクスター公爵家は難しい家だと言うの。将来摂政になるだろうって。そして摂政の妻は大変だって言うの。私には向いてないって。失礼でしょ?」


もしかしてエクスター殿下は、ハズレなのか?


父は私なら務まるだろうと言っていたが。なんだか結婚しない方がいいような気がしてきた。


「エクスター殿下もそれを考慮されたのかもしれないわ……それできっと私に選択の余地をとおっしゃったのかもしれないわ」


私は考え考え言った。


*****************


カフェの隣の部屋では、男二人が黙りこくってお茶を飲んでいた。


エドワードとルイ殿下その人である。


「エドワード、選択の余地って何?」


「しッ。後で説明します」


*****************


「その選択の余地って、私には無理だって意味かも知れないわね」


「そうかもしれないわね。ほかに考えようがないもの。でも、私はがんばるわよ?フロレンス」


「がんばる?」


「だって、やってみなきゃわからないじゃない。私はルイ殿下が好きなの。私のものにしたい。エクスター公爵夫人になりたいわ」


なんだかピンとこなかった。アンドレア嬢がルイの何を知っていると言うのだろう。ルイは複雑な人なのだ。


「あなたみたいな地味な令嬢には合わないと思うの。いろんなどこかの代表の人とか、礼儀作法のうるさい相手とか、それこそ面倒ごとが多いと思うの。でも、ルイ殿下のためだと思えば頑張れるわ。それに、私目立つのが好きなの」


「ああ……私、目立つのは好きじゃないわ」


「でしょ? あなたには兄の方がいいと思うわ」


*******************


「ねえ、エドワード、この話の流れ、何? 僕、なんとなくディスられてない?」


「まあまあ。いいじゃないですか。ほかの女性から、あなたの恋人を盗るわよと宣戦布告を受けているのです。素晴らしいじゃないですか。これで、燃え上がらなかったら、面白くない……ではない、効果抜群だと思います。釣書を見せるよりはるかに効果があると思いますよ?」


「ねえ、エドワード、みんなして、僕をからかってるんじゃ……」


「何言ってるんです。アンドレア嬢は本気ですよ。あ、ほら、レモンスフレが来ました。スフレは熱々のところを食べないといけませんよ」

誤字報告ありがとうございました。(またか! すみません)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ