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第12話 恋愛レベルが低すぎる

そんなわけで翌日も早起きをさせられ、厚化粧の上、麗々しく着飾って注目を浴びながら教室へ行った。


唯一の収穫が、例のアダムズ先生が意地悪をしなくなったことだ。


今日のドレスは明るいピンクで、私的には落ち着かない色だったのだが、先生は気に入ったらしかった。


「よろしい。ミス・ウッドハウス。では、次を。ミスター・グレシャム」


先生は軽くうなずいて見せて、次の生徒を当てた。私はあっけにとられた。いつもなら引っかかって、意地悪な質問か、一言けなしてからでないと進まないのに。




その代わり、昼ご飯を買いに食堂まで行ったら、待ち構えていたらしいアンドレア嬢様ご一行にあっという間に捕まった。


「あなた、どういうおつもり?」


ピンクの凝ったドレスとかわいらしい小さな真珠のネックレス、きれいに化粧して、顔の周りに巻き毛をたらした私は、真紅のドレスに身を包んで威風堂々としたアンドレア嬢と対峙した。


アンドレア嬢は決して顔がまずいわけではない。

ただし、顔勝負では私の圧勝だ。私の驚くべきデカ目の迫力は他の追随を許さない。(言葉の使い方を間違っているとアリスに指摘されたことがあるが)

あとは身分に釣り合わない制服の着用を止めさえすれば、取り巻きのご令嬢方も、真の好敵手(恋のライバル)として認めてもらえて、正々堂々真っ向勝負ができる……訳がなかった。


「いいこと? いくらあなたがエクスター殿下をお好きでも、これ以上殿下に迫ったら、どうなるかわかってらっしゃるでしょうね?」


アンドレア嬢は手下のご令嬢方を大勢引き連れていらっしゃるのだ。一対十くらいの人数比率なので、結構怖い。正々堂々どころではない。


ええと、ですね。ダンスパートナーになれと迫っているのは殿下の方である。私ではない。


だが、アンドレア嬢は、わかっているのかいないのか、そこらへんは無視して一方的に私を責める。


わかって言ってるんだったら、要は断れと言っているわけで、すでにお断り済みだから問題はないだろう。ただし、殿下のセリフが聞こえるほどそばで状況を聴取しているなら、断っていたことも知ってるだろう。そこまでわかっていて、なおかつ念押しに来るとはどういうことだ。殿下はあきらめないと踏んでいるのか?


わかっていないのだったら、つまり、私が殿下に近づいていると思っているなら、誤解を解きたいところだが、「違うんですぅ、殿下に迫られちゃって、困ってるんですぅ」とか言いだしたら、コテンパンにのされてしまうのではないだろうか。


十人のほどの鬼気迫る令嬢を目の前にして、そこまで頭を巡らせて、ようやく気が付いたことが一つあった。



迫っているのは殿下の方である……


え?


あれ?


殿下はダンスパートナーの相手に不足しているわけじゃない。そうではなくて、殿下が気に入ってダンスパートナーをお願いしたい女性に声をかけたわけだ。


と言うことは、私はお願いされた側……


つまり、殿下に気に入られたと?


殿下、私のことが好きだったのか。気が付きませんでした。

なぜ、ダンスパートナーを申し込まれることが、ここまで大問題になるのか、今、ようやく納得できました。


これを聞いたら、ジュディスとアリスが舌打ちするような気がする。何をいまさら、とか。


その上、あんなにきれいな男性にダンスパートナーになって欲しいと言われたら、それは舞い上がってしまう。


顔が真っ赤になってきた。なんで、あの時パニックにならないで、今、なってるのか。


「ちょっと! 何にやけてるのよ。気持ちの悪い」


「あの、あの……」


「はっきり言いなさいよ。もう二度と殿下に近づいたりしないって」


アンドレア嬢の通訳って強烈だわ……よくわかるわ……


何か言わねば。何か……だが、気が付くと、ご令嬢さま方ご一行はその場を離れていなくなってしまっていた。


あまりのおかしな人っぷりに、相手をするのがばかばかしくて撤収してしまったのだろう……と思ったら、そうではなかった。


私は彼女たちより気が付くのが遅れたが、問題のエクスター殿下が食堂に入って来ていた。こっちを見ている。


私はワンテンポ遅れて、アンドレア嬢たちの後を追った。彼女たちはエクスター殿下に現行犯を見つからないために、迂回して出口を目指していた。私も殿下に捕まらないために、同ルートをとった。


「ちょっと! なんでこっちに近寄ってくるのよ!」


最後尾のご令嬢が、私が追いかけてきたのに気が付くと、ビビって文句を言った。


「私たち、あなたを脅迫したのよ? 追って来ないでよ!」


わかっている。でも、アンドレア嬢より面倒な人物がやってきているのだ。殿下に会ったらどんな顔をしたらいいのだ。私は彼女たちを追い越して、彼女たちより先に出口を出て一目散に逃げて行った。

通りすがりにアンドレア嬢に黙礼して。


「なんなの? あの人?」


誰かが言っていたが、大丈夫、頭目のアンドレア嬢は、私が変人だってこと知っている。この調子じゃ、恋のライバルなんか、私には絶対無理だ。恋愛レベルが低すぎる。

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