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完璧美少女と冴えない少女は乙女ゲームの世界へ~悪役令嬢とモブでした!~  作者: 柊らん
貴族院一年生~アレクサンダー編~
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隣国デルラリア王国

デルラリア王国とジェラルド王国は隣りあう国である。

この二国の歴史は深く、かつては争いが絶えない国であった。

領土問題や貿易、権力争いなど理由はいくらでもあるが両国はお互いにらみ合っている状態が長く続いていた。

しかし戦争までは発展せず小競り合いがいくつも起きている状態だった。


先に手を出したのはデルラリア王国。

デルラリア王国は『魔』の研究が盛んであり、一人の研究者が負の感情を集め魔物を作り出すことに成功していたのだ。それが魔王と呼ばれる存在の正体である。

デルラリア王国は禁断の行為に走ったのだ。


そしてデルラリア王国の当時の王は魔王を支配下におくことが可能だとなんの根拠もなく考えていた。

ジェラルド王国を魔王に襲わせ、あとは自分たちが攻め入ればいいと傲慢な考えのもと当時のデルラリア王国の王は危険な研究を見過ごした。

そうして魔王が誕生した。


結果として魔王はジェラルド王国を襲うだけでなくデルラリア王国にも襲い掛かかる化け物となり果てた。

二国は魔王により闇につつまれ、絶望の節に立たさせる。

救ったのは一人の少女だった。少女は全属性持ちであり、その力をつかって魔王を封印した。

その少女が後に『聖女』と呼ばれるのである。


闇が晴れたあと、当然ジェラルド王国は魔王を誕生させたデルラリア王国を許そうとはせず植民地支配の声もあがっていた。

しかしそれを止めたのは他でもない聖女だ。

聖女は民に罪はないとし、魔王誕生に関わった人物は処分したがデルラリア王国自体は存続させた。

それどころか魔王誕生の原因がデルラリア王国だということを漏らすことさえ許さなかったのだ。

今もこの事実を知っているのはごく一部の人間だけである。


「わたくしは両国が共に協力しあい、繁栄することを願っております」


聖女のこの言葉により両国は争いをやめ三年に一度どちらかの国で歓迎会が行われるようになった。


そして魔王が封印され長い月日が流れ、ある年に二人の全属性持ちの少女が現れた。

それはただの偶然か、それとも必然か……。

それはまだ分からない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は鏡に映った自分の姿を見て盛大にため息をつく。


「お似合いですよ。姫様」

「今からでも変えられないの?」

「レジーナ様!?ワタクシのデザイナー人生を全てかけた作品でザマスよ。レジーナ様のドレスの依頼を受けたときからインスピレーションが大洪水をおこしたザマス。どこからどうみてもエレガントで妖艶でゴージャス!」


部屋の中を興奮状態でクルクル踊っているのは今回デルラリア王国の歓迎会のための私のドレスとアレクの正装をお願いしたデザイナーだ。


まるでピエロのような服装に独特な喋り方、随分と癖の強い方だなぁとドレスの打ち合わせのために初めて会った時は感じたさ。

でも腕は国一番だとお母様に得意気に言われたから芸術感性が優れすぎた結果かなって思ったんだよ。

決してお母様の得意気な様子に何も言えなかったとかではない。


確かにデザイナーの腕は素晴らしい。それは認めよう。

きっと今の私はいつもの1.5倍増しで人に振りかえられるだろう。


「いやいや、どっからどう見ても悪女じゃないですか!?」


そう、デザイナーが用意した服は足にスリットが入り両肩が出るほど大きくあいたオフショルダーからは鎖骨が覗いた暗闇のように真っ黒なドレスだったのだ。


ううー、アイラにドレスに合わせたメイクをされたせいで悪女感が半端ない。

私の顔はさらに美しくは出来なくても印象を変えることは出来るらしい。

目元をはっきりと縁取れたせいで主張が強そうだ。


……素直に言うとめちゃくちゃ似合ってしまっている。

ミステリアスな妖艶な美女だ。多分傾国の美女とか言われる。


「そもそも悪い印象を与えてどうするんですか!?」

「大丈夫でザマス。美しさは罪ではないでザマスよ」

「あー、そもそも姫様もう今日が歓迎会の日ですので今更無理です」

「……」


そう、突然オーダーメイドで頼んだせいで時間がぎりぎりになってしまい、出来たのは当日の朝だったのだ。

なので今更私が騒いでもどうにも出来ない。

くっ、今まで悪役令嬢っぽい服は避けていたのに。

絶対今日は乙女ゲームのイベントなのに!


いや、でもヒロインであるソフィアは今日は来ないしいざとなれば北澤さんがいる、どうとでもなるだろう。


私は覚悟を決めて会場に向かうことにした。




会場へと向かう馬車から外を眺める。

すれ違う馬車には着飾った紳士と淑女が乗っており男と目が合った。

すれ違ったのは一瞬、でも男が私を見て目を見開いたのが伝わった。

すれ違っただけでこの反応とは会場に着いたらどんな視線が向けられるのか、今から頭が痛い。


ただでさえ私のパートナーはアレクだから注目を浴びるのに。

視線だけならまだ我慢出来るが男性からの性的な視線は気分が悪くなる。

しかし隠し通すのだけは上手くなってしまったのでこのことは誰も知らない。

もしアイラが知っていたらこんな男を挑発するような衣装は許さなかっただろう。

私の男性恐怖症は触れられることのみで起こると思われている。

別に隠しているわけではないがなんとなく言いそびれてしまい、ここまで来た。


今日は北澤さんもリリアーネもカイディンもお兄様も会場にいるから緊張する必要はないと自分に言い聞かせる。


「姫様、緊張されているのですか?今日のパーティーは隣国デルラリア王国の歓迎会ということで国のほぼ全ての上級貴族の当主たちが招待されていますし、デルラリア王国の王家一行もいらっしゃいます。規模も今まで姫様が出席したパーティーの中で一番大きいものですからね。無理もないですが」

「え、いえ。そこは気にしてないわ。やることは対して変わらないもの」

「……ちょっとは気にしてください」


身分差で怯えるような性格だったら初対面であるアレクにケーキ一つが原因で喧嘩を吹っかけていたりしていない。

私は無言で首をすくめた。


ふと外を見ると馬車の数が多くなってきた。

私は王家の関係者として出席するので裏口から会場である城に入り、アレクと合流する予定なのでさっきから正門から会場に入場する貴族たちの馬車とすれ違い続けている。


動体視力がいいために窓ぎわに座っている人ぐらいの顔なら分かる。

こうして見ると結構知っている人もいるもんだ。

お、お茶会で見たことある令嬢だ。侯爵家のご令嬢だっけ。


そうして外をウオッチングしていると見たことあるドレスを見つけた。

あ、北澤さん!

白をベースにさくら色のラインのドレスはこの前北澤さんが着ていたものだった。

お兄様も中にいるんだろうか?

流石にそこまでは確認できない。


ん?違和感を感じる。

ドレスは確かに同じだけど髪はピンクだったような。

頭を絞って思い出す。


「え!?ソフィア!」


そうだ!あれはソフィアだ!

でもなんで?

ソフィアは私に魔力テストで負けて今回の歓迎会には招待されていないはずだ。


「危ないですから顔を馬車から乗り出さないでください」

慌てて振り向いて私にアイラが注意する。


でも私の耳には入っていなかった。

どうしてソフィアが北澤さんの着るはずだったドレスを着てここにいるの!?









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