衣装選び
お久しぶりです。お休みしてしまい申し訳ありません。
一段落ついたのでこれからはまた二日に一度のペースで投稿予定です!
時がたつのはあっという間で一学期最後の定期テストも終わった。
前回の定期テストでは入学試験と比べるとピオニーのメンバー間では私がアレクを抜かして二位でアレクが三位だった点が変動した。
今回も五位以内に入っているメンバーは変わらないけど、微妙に順位が変わった。
一位 『シハーク・エミ』
二位 『エドワーズ・アレクサンダー』
三位 『グレッシェル・レジーナ』
四位 『カーター・フレディ』
五位 『ソフィア』
北澤さんは一位のまま私とアレクが再び順位を交換し、それからフレディ君とソフィアが入れ替わった形になった。
その結果が出た後の放課後、私はリリアーネとフレディとカイディンとカフェに来ていた。
このカフェは北澤さんが出しているお店で前世と同じようなメニューが出されている。
貴族向きのお店なので私たちは個室で楽しくお話しながら美味しいデザートに舌鼓をうつ。
「美味しい!なにこれ、生地はモチモチで中にフルーツがいっぱい入っていてクリームもたっぷり、こんなのずるいわ」
リリアーネが食べているのはクレープだ。
原宿とかお祭りで見かけるような片手で持って食べるタイプじゃなくて四角く折りたたまれている。
お皿にソースが美しく模様を描いているオシャレなものだ。
「フレディも食べる?」
「お店でまわし食べするなんて行儀が悪いです。大体私は甘いのが苦手なので」
ずいっとクレープをすくい上げたフォークをフレディ君に差し出すリリアーネにフレディ君は冷たい反応だ。
甘いものは苦手というフレディ君が食べているのは紅茶のシフォンケーキである。
「美味しいのに。あ、カイディン様も食べます?」
「え、い、いや大丈夫だ」
「プッ、カイディン顔が赤いよ、って痛っ!なんで足を蹴るの!?」
もう、どうせリリアーネにあーん、とでもされる妄想をしたんだろう。
このむっつりめ。
「リリアーネ、私には一口ちょうだい」
「もちろん。レジーナのも気になるわ」
「どうぞどうぞ、食べて」
私は迷ったけど夏限定のフルーツ寒天にした。
見た目はカラフルなんだけどどこか懐かしい味が美味しい。
私とリリアーネはお互いにあげあった。
うん、クレープも美味しい。
「そんなに食べたらレジーナさんはともかくリリアーネは太りますよ」
「ちょっとフレディ、乙女になんてこというのよ」
「ほぉ、成績が下がったくせに吞気な様子だったので、つい」
リリアーネがむぅとむくれる。
うん、リリアーネはどんな表情でも可愛い。
「たった一位上がっただけで威張らないでちょうだい」
グサッと心臓に刺さるものがあった。
今回私は北澤さんだけでなくアレクにも負けたのだ。
その場に突っ伏す。
「え、レジーナさんは充分な成績ですよ。そんなに落ち込まないでください」
「だって今回だけはアレクに負けたくなかったのに。あ、あんな奴に負けるなんて!」
「さすがレジーナ。王子をあんな奴呼ばわり……」
「アレクは今回、めちゃくちゃ頑張ってたからな。それよりもお前たち、喧嘩でもしたのか?」
カイディンが困った顔で聞く。
カイディンは私とアレク両方と仲がいいから一切口を聞こうとしない私たちに参っているようだった。
カイディンには申し訳ないけど私はもうあんな奴知らない。
「……アレクが悪いんだもん」
「何かあったのか知らんがアレクは最近なんだか元気ないし反省しているだろう。許してやれ。きっとアレクにも事情があったんじゃないか?」
そういえばアレクは反王家派の今後の計画を聞き出したかった、と言っていた。
それとあれからビートルは学校に来なくなった。
どうしているのかは分からない。
う~、でも私アレクが助けてくれなかったことに傷ついたんだもん。
納得がいかなくてカイディンに返事をしない。
「でもレジーナって夏休み中に訪問する隣国デルラリア王国の歓迎会に参加するんでしょう。アレクサンダー王子のパートナーとして。大丈夫なの?」
「それは仕事みたいなもんだからちゃんとやるよ。そういう約束だもん」
随分前のことのように思える魔術テストで私はソフィアよりも優れた成績だったからジェラルド王国にいる全属性持ちとして歓迎会に参加しなくてはいけない。
婚約者ということもあり、パートナーはアレクだ。
リリアーネにそのこと心配された。
でもそう言うリリアーネも好成績だったから参加する権利を持っている。
魔術テストの成績では入らなかったけど隣国の王子が剣舞が好きだと言うので参加が決定したカイディンがパートナーである。
「約束?」
「ちゃんと公爵令嬢として、アレクの婚約者として頑張るってことだよ」
始めてアレクに会った日のことを思い出す。
『王子、私たちはビジネスパートナーです』
『ビジネスパートナー?』
『はい。好意などなくて構いません。王子は国を私は自身を、そしてお互いの愛しい人を守るために協力いたしましょう』
『お前はそれでいいのか?』
『ええ。そういう関係の方が信頼できます』
あの時私はアレクのことは偉そうで苦手でそう言ったのだ。
こんなにアレクに見捨てられることが悲しくなるなんて思いもしなかったのに。
「もう、レジーナってばそんな悲しそうな顔しないでちょうだい!」
「そうですよ。レジーナさんらしくないです」
「ほら、俺のフレンチトーストの残りあげるぞ」
「うん、皆ありがとう。カイディン、本当にもらっちゃっていいの?」
「あ、ああ。え、そんなに食べれるのか?」
「当然!」
一人だけランチメニューを頼んでいたカイディンのフレンチトーストをぺろりと食べると元気が出てきた。
「もう大丈夫。もうちょっとで夏休みだし楽しみ!」
「そうね」
笑顔になった私を見て三人とも安心したのが伝わってきて心がポカポカしてきた。
「それに明日は歓迎会の衣装を決めるのでしょう。楽しみだわ」
「あ……」
「まさかレジーナ、忘れていたのか?」
「そんなことないヨ」
目をスィーと逸らす。
ドレスをきめる作業は大変で心身ともに色んなものが吸い取られるので記憶から抹消していただけだ。
リリアーネはお年頃の女の子だけあってドレス選びが楽しみなようだけど、残念ながら私にはその感情はない。
どうせ私は着せ替え人形化するのが目に見えている。
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次の日の放課後、貴族院の一年生で歓迎会に参加する人がまとまってドレスを購入することになっていた。
アレクとあと一応私は別としてカイディンやリリアーネ、そして魔術テストで一位をとった北澤さんは今回貴族院代表として歓迎会に参加することになっている。
だからドレスの購入を貴族院側から援助してくれるとのことだった。
授業が終わるとお店に移動する。
私はリリアーネと同じ馬車に乗って移動した。
お店ではすでに着替えたり支度をするのを手伝ってくれる自分たちの侍女が待っている。
なのでお店に入るとアイラが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、姫様」
先についていたアイラがペコリとお辞儀した。
心なしかいつもよりも目がキラキラしている。
私を着飾るのが楽しみで仕方がない様子だった。
私は引きつった笑みをアイラに向ける。
お店の中は広かった。
ドレスが飾られているスペースは当然のこと採寸する場所や休憩場まである。
私とリリアーネの後にもカイディンとアレクが店内に入る。
加えて今日ここに来る貴族たちの使用人が一人ずついるのでなかなかの人数だけど広いから人口密度はそう濃くない。
北澤さんは遅れてくるそうだ。
そしてリリアーネは煌びやかなドレスに興奮状態のようで顔を真っ赤にしている。
「わぁ、こんな豪華なところ初めて来たわ」
「リリアーネ嬢は俺と髪色が似ているからな。すぐに決まりそうだ」
「……本当にパートナーが私でよろしかったんですか?カイディン様と私では家柄もつりあいませんし」
「あー、俺にはまだ婚約者はいないし、リリアーネ嬢ならまだ話しやすい」
「なるほど、分かりました」
リリアーネはカイディンと話している最中にもドレスから目が離れない。
そんなリリアーネの様子を見かねてカイディンはすぐにリリアーネを連れて奥へと行きドレス選びをすることにしたようだ。
さて、私もアレクと一緒に選びに行かなきゃ。
アレクはいつも城に商人が来てくれるのでリリアーネとは別の意味でお店の中が珍しいようでさっきから歩き回っている。
仕方がないのでアレクを回収しに行こうとしたらドアが開いて人が入ってきた。
「申し訳ございません。遅れてしまって」
来たのは北澤さんだった。
あ!北澤さんの後ろにいるのはヒナじゃない!?
懐かしい。相変わらず小さいしとてもお兄様よりも年上だとは思えないぐらい童顔だ。
ん?ヒナにも私は北澤さんと一緒で初対面の体じゃないと駄目なのかな?
駆け寄りたいのを我慢して考えているとヒナが驚いたように呟いた。
「え……。お母さん」
「ヒナ……?」
え?ああ!
そうだった。ヒナは何年も前に家を出ていったのだ。
そしてアイラはヒナの母親である。
まさかのこんなところでの親子の再会ということになる。
アイラとヒナが呆然とお互いを眺めあっている様子に私は一人アワアワしていた。
ここから隣国の歓迎会パートに入ります。
一応メインはお兄様です。
昨日書き留めした話は激甘になった、ということだけここにご報告します。(変更あるかもです)




