入学式
いよいよ貴族院に入学です。
ここで章を分けようと思います。
春を迎え、ついに貴族院への入学式が行われた。
貴族院、それはジェラルド王国の12歳から15歳までの貴族が教養を身につけるための学び舎である。
学習内容は多岐にわたるが、歴史や地理に基礎的な数学や文学などの前世と同じようなものも存在する。
しかしここは貴族制度と魔術が存在する世界だ。
魔術について学び、訓練する授業は必須科目である。
一方で選択制となる教科も存在する。
政治・経済に騎士教育、それから令嬢教育、文官教育、魔術研究、他に芸術なんかもあった。
こちらは自分に必要なものをそれぞれ選択するらしい。
私は政治・経済と令嬢教育をとった。
両親と相談した結果だ。
さて、様々なカリキュラムを用意している貴族院は王都の一角を確保し、巨大な敷地内には魔術の訓練場や実験室、騎士教育を選択した学生が使うグラウンドなど様々な施設がある。
また王都に家をもたない貴族もいるため寮も隣接している。
リリアーネとフレディ君はそちらに入居する。
聞いてみたらソフィアと北澤さんも寮生活だと言うことだ。
前世と比べれて特殊の点も数多くあるが入学式での偉い人の話が長いのは変わらない。
演奏会でも開けそうなホールでフカフカの椅子に座りながら欠伸を嚙み締める。
貴族院の学院長がこの国の伝統を長々と話している。
王族に対する賛美が多いのは今年は王族であるアレクが入学するからかもしれない。
やっと学院長の話が終わったと思ったら今度は教師たちの紹介に移った。
ズラッと並んだ先生たちにウンザリしてこそっとため息をつく。
「キャー、ジオルド様!」
「噂は本当だったのね」
うおお。何事!?
ウトウトしかけていたところに突然悲鳴が聞こえた。
慌ててステージを見ると新任の先生の紹介に移ったらしくてお兄様が出てきてた。
……ええ、お兄様ってそんな人気なの?
リリアーネが初めてお兄様と会った時の反応にも驚いたけどさ、あれが普通の反応だったとは。
びっくりだ。
もうお兄様の顔は見慣れているから普段はそんなに気にしないけど、確かにお兄様は柔らかそうな亜麻色の髪に美しい紫水晶の色の瞳に加えて、うっとりするような甘いマスクを持っている美形だ。
流石は乙女ゲームの攻略対象。
でも気をつけたほうがいい。
女の子たちは容易に近づくとペロリと食べられるぞ。
心配の意をこめて近くに座っている女の子たちを見回すと私の周辺だけ静かになった。
え、待って。
まさかこれが悪役令嬢補正だったする?
お兄様に近づくな、的な視線だと思われてたらどうしよう。
違うよー、と伝えてくて今度は友好的な笑みを隣に座っていた子に向ける。
顔を真っ赤にして俯いてしまった。
どうやらこれも怖がらせてしまうらしい。
大人しく前を向いておこう、うん。
可哀想なことに令嬢たちの早くジオルド様の挨拶を聞かせろ、という無言の圧力によって新任の先生たちは自分の名前と教科だけしか言えなかった。
よろしく、の一言すら許されない雰囲気のなか私はひたすらうちの兄がすみません、となんとなく心の中で謝っておく。
そんなに死んだ目をしないで、私はしっかり覚えたからね!
エールも念じておいた。
まぁ、この優秀な頭は一度聞けば名前なんて誰でも覚えられるんだけどさ。
そしてついにお兄様の番になった。
「初めまして。今年度から貴族院の教師となりました、グレッシェル・ジオルドです。同じ名前のものがここにいるので下の名前でお呼びください」
そこで何故か私にウインクしてきた。
私は無である。無表情である。
心では、真面目にやれ!っと怒鳴っているが。
お兄様はその後はわりと普通の内容を言ったのに拍手喝采だった。
次は新入生代表の挨拶でアレクが出てきた。
内容はともに勉学に励もう的な感じだ。
アレクも女の子たちからキャーキャー言われた。
そういえばアレクも見た目だけなら輝かしい金髪に澄んだ蒼い瞳という少女漫画に出てくるような王子様みたいなんだった。
いや、実際王子なんだけど。
中身は無茶なことを要求している俺様だったりする。
アレクの次に登場した新入生代表は北澤さんだった。
キャー!!
声に出すのはなんとか押しとどまったけれど心の中ではさっきの令嬢たちに負けないぐらい大暴れ中だ。
ごめん、貴方たちのこと冷めた目で見て。
確かに好きな人が出ればそうなるよね。
北澤さんの演説は素晴らしかった。
多分毎年恒例の文なんだろうけど北澤さんが読めば全て格調高いものに変わる。
「どうして。本当なら私のはずなのに」
後ろからそんな声が聞こえた。
は?北澤さん以外あり得るはずがないじゃない。
というか成績いい方なのかもしれないけど三位以内には入っていないくせにその自信などこからくるんだ?
あ、しまった。
北澤さんの演説おわちゃった……。
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始業式が終わりクラス分けを張り出されているところまで移動するように言われる。
途中でリリアーネとフレディ君を見つけて合流する。
2人組の女の子たちに誘われて困っているカイディンを回収したら何故かアレクまでついてきた。
「ねえ、これ私もいていいの?」
普段は身分差とか気にしないタイプのリリアーネが不安げに私の後ろに隠れている。
私も隠れてたい。
王子であるアレクが近くにいるせいで全員私達一行に道をあけていくのだ。
「もちろん。そういえばフレディ君は人の目、平気なの?」
「リリアーネがしょっちゅう問題おこすので慣れました」
「……初めましてだよな?俺はサンダーズ・カイディンだ。お前とは仲良くなれそうな気がする」
私に振りまわされているカイディンがフレディ君に仲間意識を抱いていた。
そしていつもなら言い返すはずのリリアーネが今日は何も言わない。
相当緊張しているようだ。
私の友達の不安を取り除くべく、私は行動する。
「アレク、先に行っててくれないかしら?」
原因であるアレクを追い出すことにした。
「嫌だ。俺が一人になるじゃないか。そっちがどこかに行けばいいだろう。くだらんことで俺を追い出そうとするな」
「私だけ離れても注目は減らないじゃない」
この俺様王子め。
「レジーナ、私それは違うと思う」
「え?」
真顔でリリアーネに否定された。
なにがだ。
結局そのまま移動し、クラス分けを見に行った。
皆どいてくれるので非常に見やすい。
三クラスあるのだがここにいるメンバーは結構バラバラになっていた。
「あ、レジーナと離れちゃったわね。一緒なのはフレディか」
「学校でも面倒みなきゃなのか」
リリアーネとフレディ君の二人は一組だった。
「アレクは二組か」
「ああ。カイディンは三組、レジーナと一緒だな」
貴族院では身分による差をつけない、といっている。
王子と仲の良いカイディンを一緒のクラスにしなかったのはその現れかもしれない。
顔には出してないけどアレクとカイディンがしゅんと悲しんでいる空気が伝わった。
だけど問題はそこじゃない。
「二組には噂の平民の魔力持ちがいるな」
「ええ。平民が貴族院に入学するのは私の父以来とのことです」
ヒロインのクラスも重要だけどそれは元々北澤さんに聞いている。
貴族院は三年あるから学年ごとに攻略できる対象があるとのことだ。
一年はアレク。
二年はカイディン。
三年はまだ私が出会っていない攻略対象。
お兄様は三年間かけて攻略するキャラらしい。
問題は北澤さんが二組、私は三組、一緒のクラスではないということだ。
のおおおおお!
ここでクラス分けをまとめますね。
一組 リリアーネ
フレディ
二組 アレク
北澤さん(エミ)
ソフィア
三組 レジーナ
カイディン
ちょろっと出しましたが一年ではアレクがメインとなる予定です!
ジオルドはちょこちょこ出てきます(予定)。




