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お隣さんは魔王でした @Web  作者: 赤点太郎
二章 少年と兄弟
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白いお客さんとあのお兄さん

あけましておめでとうございます。

のんびり進行&遅筆で話がなかなか進みませんが、本年もよろしくお願い申し上げます。



「オゥちゃん、お母さんにお客さんだよ。この人をお母さんのところに連れてってあげて」


 あれから、午前中はサリー姉さんがうちで僕たちに稽古をつけてくれ、疲れたら休憩がてら冒険話を聞かせてくれるのが日課になっていた。

 そんな日常のある日、サリー姉さんの家のおばちゃんが買い物袋を手に、人を連れてきて僕に案内するように声を掛けてきた。

ここ最近、お腹を抱える母さんは少し庭先を散歩する以外はあまり動かなくなっていた。

そしてお手伝いのサーファも似た体型になってきた事で、やはり動き難そうに見える事から、僕たちはあまり頼らずに出来るだけ手伝いをしようと躍起になっていた。


「うん! わかった~!」


 何度か父さんが客を入れるのに門の操作をしているのを見ていた僕は、いつの間にか門の操作が出来るようになっていた。


「ありがとうね、ええっと、オーヴ君だったわよね。それから、後ろの子はスフィアちゃん。前に会ってから二年しか経ってないのに、二人とも随分と大きくなったわね」


 そう門をくぐって敷地内に入ってきたのは、白いマントを羽織った綺麗なお姉さん。

しかし、僕は全く覚えてなく首を傾げると、僕の後ろに隠れてしまっていた妹も同じように首を傾げた。

妹も全く知らないみたいだ。


「まあ、あの時は二人とも大変だったし、大人もたくさんいたから、覚えていなくて当然ね。オーヴ君が魔力暴走させた時に二人を診たのよ?」


 あの時は完全に治せなくて申し訳なかったと綺麗な顔を歪ませるお姉さんだったけど、あの時の事はうっすらとしか覚えていない。

再び首を傾げると、妹もやっぱり首を傾げた。

三歳だった僕が殆んど覚えていないのだから、二歳だった妹は全くと言って良い程覚えていないだろう。


「ほらほら、二人ともお母さんのところに早く連れてってやってあげなさいな。もうそろそろだけど、あんた暫くはここにいてくれるのかい?」

「ええ。取り敢えず一週間は有給休暇を取ったので、その間は」

「おや、そうなのかい? じゃあ、くれぐれもよろしく頼むよ」

「……お義母さん、もしかしてトワさん、もうじき産まれるんですか?」

「ええ、そうよ。予定日が四日後なの。そうそう、サリーちゃんも時間を取って貰って診て貰いなさいな。それと子供の相手だとはいえ、激しい運動は控えなさいって言ってるでしょ。何かあったらどうするの」

「え、ま、まあそんなにも激しくはないつもりなんですけど……」

「……それ本気で言ってるの? さっきもチラッと見たけど、随分と動き回ってたじゃないの。もしかしたらもしかしてなのだから。診て貰ってもしそうなら、あんな激しい運動は禁止だからね。分かってるの?」

「うっ。す、スミマセン……」


 何かよく分からない会話が続いたけど、サリー姉さんがおばちゃんに叱られた事は何となく分かった。

サリー姉さんとの剣の稽古は楽しいけど、たぶんそれが原因なんだろうとうっすらと気付いた僕たちはしょんぼりしながら白いマントのお姉さんを部屋にいる母さんのところへと案内するのだった。


「ああ、あんなにも気を落として……。明日もあたいがいつも通り相手してあげるから~」

「コラッ! サリーちゃん! 分かってないじゃない!」

「うぐっ! ご、ごめんなさい……」







「え? みんなそんなにも酷かったん?」


 軍の人に畑の方で問題が起こったからちょっと確認して貰いたいと病気になってない村人を集められて、畑の方へと移動する際に区長さんに村の現状を聞いて驚いた。


「うむ。村の半分以上の者が病に伏せとる。儂がお館様のところから帰ってきた時には既に半分程が伏せておったからの。とは言え、村に医者や治療魔法士を呼ぶ程の蓄えはないから、人手のない家を看て回るくらいしか出来なんだ」


 悔しそうな顔で地面に目を落として歩く区長さん。

何人かが調子が悪くて畑に出てきてない事は知っていたけど、いつも早朝に畑の作業をした後はそのまま学校に行っていたから全然気付かなかった。

取り敢えず今は病に伏してる村の人たちは軍の人たちが看てくれるらしいから、心配ながらも畑も気になるから見に行くのだけども……。


 それにしても、畑で問題があったって……あのお兄さんが魔法で畑を直してくれる?って言ってたけど、問題ってどういう事?

背中がピカッと光って、丸で神様の遣いみたいに見えたんだけども……。


「それにしても、おぬしが軍の者たちを呼び止めてくれたのじゃな。お館様が当てにならぬ今、まさか軍に手を差し向けて貰えるとは思わなんだ。ようやってくれたの」

「いや、おらはなんもしとらん。いつものように学校の前に畑へ行こうしたら呼び止められただけで……」

「いやいや、おぬしが働き者じゃからじゃ。きっと神様が見ていてくれたのじゃ。胸を張って良いぞ。ん? 何じゃあれは。壁?」


 おらが区長さんの言葉に下げていた顔を上げると、区長さんは前を見上げて顔を顰めた。

釣られておらも畑のある先に目を向けると、景色が変わっていた。

区長さんが言うように壁のようなものがそそり立っているのが目に入った。


「あれは川のある辺り……まさか、堤防?」


 更に歩を進めると、それが直角に立つ壁ではなく斜面のある堤防の形をしている事に気付いた。

更に違和感を感じてふと視線を横に向けると、畑にあった筈の仕切りの為の(あぜ)が見当たらない。


「んお!? や、山の形が……」


 おらが畑の変わり様に、問題が起こったという言葉の意味を理解出来ずに狼狽えていたところ、今度は区長さんが声を上げた。

その声に導かれて畑とは反対側に視線を向けて目を剥いた。

見慣れた筈の、山の麓にある筈の水が流れる場所に畦が出来てて、その畦の山側に出来た大きな窪みに流れてきた水が水溜まりを作っていた。

よく見ればその上の方にも更に大きな畦のような物が出来上がっていて、その畦からは川の方へと道のような段差が。

ちょうど水の流れが折り曲がって横へと流れていく場所の下に、だ。

そこは大雨が降ると水が溢れる場所だった。

これ、もしかしてあのお兄さんが?


「何じゃこれは。昨日はこんなものは無かった筈じゃが……」

「ああ、それも含めて今、問い質しているところだ。で、だ。おそらく間仕切りがあったと思うんだが、どこからどこまでが自分の畑だったかを思い出して区切って欲しい」


 やってくれるか?と聞いてきた軍の人に、難を逃れ連れられてきた村人たちが顔を見合わせる。

そんな事を言われても、目印になる畦も無ければ山の形も変わってしまい、よくよく見れば道も堤防の高さに合わす為に徐々に道が登っていて、目安すらない。


「区切ってくれと言われても、これじゃあ元の区切りが何処だったのか分からんぞ」

「ああ、これじゃあさっぱりだ。どうすりゃええ?」

「村から出ていった者たちの棄てられた畑もごちゃ混ぜになっとるしの」

「水がついて台無しになった上に、これじゃあ泣きっ面に小便だぞ」

「やい、区長。どうするよ、これ」

「どうするも何も、こりゃ文字通り仕切り直しするしかなかろう。等分とはならんが、棄てられた畑もついでに分配しつつ区切るしかなかろう」

「ああ、言い忘れてたが、そこに水溜めを作ったからそこから畑に用水路を引くつもりだったそうだ」

「何! それは是非引いて欲しい! うちの畑は水場から遠くてかなわなんだんだ」

「それならうちもだ! 近くまで水を引いてくれると随分と楽になるからな!」


 よくよく話を聞くと、畑は見渡す限り魔法で畑に向いた土に改質されているらしい。

また、水溜めの窪みの上の畦のような物も水溜めになっていて、溢れた水が一旦そこに溜まり、繋がっている道のような段差が水路になっていて溢れた水を川に流し込む仕掛けになっているそうだ。

堤防も嵩上げした事で、まず水が溢れる事態にはならないだろうとの事。

そして……。


「は? これを一人で? いやいや、何の冗談だ?」

「いくら何でも、たった一日でそれはあり得ないだろう」

「ははは、軍の土魔法隊みんなでやってくれたんだろ?」

「あり難や、あり難や。これで水害の心配をせんで済む」

「畑もええ土になっただけでなく広さも拡がるんだろ? ほりゃ区割りの手間くらい何て事ないわ。軍隊様々や」

「……いや、それが本当なんだわ。ほれ、あそこで囲まれてるのがいるだろ。あいつがそうだ」


 そこにいたのは、ゴツいおじさんたちに囲まれて小さくなっているあのお兄さんだった。

一日どころか、おらが村に帰ってからまだ半日も経ってない。

村に帰る途中も何度か空がピカピカと光っていたから、あの短時間でこれをやったのだろうけど……。

何だか一気に事が進み過ぎて追い付けない。


「そうじゃ、事の発端はこやつのおかげじゃから、少し多めに分配してやりたいが……ええじゃろ?」

「ああ、そうだな」

「村の者たちの病も何とかなりそうだし」

「水のついた畑もようなったし」

「また水がつく恐れものうなりそうだし」

「道も良くなったし」

「水路も出来るし」

「おまけに畑も広くなるし」

「文句なんあらせんわな!」


 わ~、何もしてないのに村のみんなに感謝されてる?

どれもこれも、みーんなあのお兄さんのおかげなのに!

このまましゃあのお兄さんに申し訳がないから、ちゃんとみんなにはあのお兄さんを感謝するように言って聞かせなきゃ!と心に誓って、ふと思い出した。

あ、学校! 忘れてた!!



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