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お隣さんは魔王でした @Web  作者: 赤点太郎
二章 少年と兄弟
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おねえさんとぬかるんだ畑

お待たせしました。

少し書き急いだ感がありますが、ご容赦ください。




「あ~驚いた。お前らの親父さんってマジで強いのな」


 僕たちに軽く稽古をつけた後、仕事へと出ていった父さんを一緒に見送るサリー姉さんがボソリと呟くのが聞こえた。


「そうなの?」

「ああ、強いよお前らの親父さんは。今まで出会った野盗どもどころか、そこいらの魔物、下手したらギルド(マスター)よりも上かも知れないな」

「……やろーぉ?」「ぎうどちょーぉ?」

「あ~、野盗とギルド長な。てか、そこからかぁ。えっとな?」


 首を傾げる僕たちに苦笑を見せたサリー姉さんに色々と教えて貰った。

昔よりはかなり数は減ったけど、地方への道中で人を襲う悪い人が出るそうだ。

また、サリー姉さんのが登録している冒険者ギルドのギルド長は元凄腕の冒険者で、今でも現役冒険者に引けをとらない腕を保っているらしい。

へぇ~と相槌を打つ僕たちだけど、イマイチピンと来ないのは冒険者がまだどんなものなのかよく分からないからだ。


「ねぇ、ぼーけんしゃってぐんとなにがちがうの?」

「あ~、そこからかぁ。えっとな?」


 額に手を当て天を仰いだサリー姉さんに色々と教えて貰った。

どちらも魔物や害獣を討伐したり野盗等の盗賊(ならず者)を捕縛したりするのだけども、その違いが何やら難しくて僕たちにはよく分からなかった。


「まあ何だ。冒険者は何をするにも自分たちで決めて自由に行動するのに対して、軍は数に物を言わしてより強い相手をも蹂躙する……やっつけるんだ。まあ冒険者の中にはそんな軍よりも強い魔物をぶっ倒してしまうバケモノのような奴らもいるんだけどね」

「えー! すっごーい!」「すっごぉーい!」

「じゃあさ、じゃあさ。ぐんよりもぼーけんしゃのほうがつおいの?」

「う~ん、みんながみんな強い訳じゃないよ。本当に強い奴が中にはいるってだけさ。お前らの親父さんだって、もしかしたら冒険者になってたら有名になってたかもね」

「えー! そうなの!?」「おとーさん、すっごーい!」

「いや、もしかしたらの話で、本当にそうなのかどうかは分からないからね?」

「じゃあさ、じゃあさ。おばちゃ……おねえさんはどんなまものをやっつけたの?」

「ききたい、ききたーい!」

「え、いや、えっとな? うわ、どうしよう……」


 口元をヒクつかせたサリー姉さんが披露してくれた話は、僕たちの目を輝かせるのには十分で、思わず稽古を忘れてその冒険譚に食い入ったのだった。







「お~い、オーヴ! 黙って何処に行くんだー!」


 暗闇の中、先導する子に付いて道を進んでいると、後ろから声を掛けられた。

あ、リオンが剣を取りに行ってたのをすっかり忘れてた。


「ごめん、ごめん。ちょっとばかりこの子の畑の手伝いをしに、ね」

「はぁ? 畑を? 畑って、何でまた……」

「何でって、この子まだ学校に通う歳なのに、こんな時間から一人で畑をしなくちゃならないらしいんだ。ちょっと不憫に思って、ね」

「ね、じゃねぇよっ! 移動中ったって任務中なんだ、バレたらまた何を言われるか……」

「でも、まだ夜明けまでには時間があるだろ? ちょいちょいっとやって起床時間までに戻れば何も言われないさ」

「……はぁ。仕方ない、おれも一緒に行くわ。おれが見張ってないとオーヴは何を仕出かすか分かったもんじゃないからな」


 何か駄目な子扱いされたような気がしたけど、まあ付いて来るなら付いて来れば良いさ。

やる事は変わらないんだし。

虫の音を聞きながら歩いていると、無言な事に耐えられなかったのかリオンが声を掛けてきた。


「なあ、前から聞きたかったんだが、オーヴって本職は魔法師なのに剣も結構な腕前っぽいのはどういう事なんだ? 軍の養成所で三年間みっちりと訓練してきたおれたちどころか、軍に入ってそれなりに腕を慣らしてきた三年上の先輩にだって負けず劣らずの腕前に見えたぞ?」

「う~ん、そんな言う程の腕前じゃないと思うんだけど……でもまあ、妹と一緒に父さんや元冒険者から剣を習ってたからね」

「親父さんや元冒険者から? もしかしてオーヴの家って道場か何かか?」

「いやいや、違うよ。朝早くに仕事前の父さんが見てくれて、その後に近所の元冒険者の人と一緒に稽古をしていたんだ」

「へぇ。じゃあその親父さんと元冒険者って有名人だったりするんか?」

「さあ……。別に有名じゃないと思うけど。父さんの稽古は厳しかったけど、サリー姉さんは楽しかったなぁ」

「……なあ、サリー姉さんってオーヴの姉貴か?」

「いや、だから近所の人だってば。結婚して近所の家に来た人で、お姉さん呼ばわりしないと機嫌が悪くなったんだよ。その流れで今でもお姉さん呼ばわりしてるんだ」

「あ~、成る程なぁ。おれの伯母もそうだわ。おれが生まれた時にはもう成人していた筈なのに、おれにお姉さんって呼ばせるんだよな~。おっ、着いたんじゃないのか?」


 暗闇に目が慣れてきた頃に、前を歩いていた子が道の脇に降りていく。

話しながら来たからか随分と近く感じたけど、僕たちが天幕を張っていたところの焚き火の光が見えないくらい遠くまで離れていたようだ。


「それにしても……」

「なんだか足下がぐちゃぐちゃだな」

「……この前降った雨で山から水が出て、この辺りの畑がみんな流されちゃったんだよ。あっちの川も溢れたみたいで、あちこちの畑が水に浸かったみたい」


 道の反対側にある斜面や道の先を指差して教えてくれたけど……それ、結構大事では!?


「今の時期って秋の収穫期じゃなかったっけ? 大丈夫なんか?」

「……大丈夫じゃない。うちは雨が降る前に半分くらいは収穫してたからちょっとの間は良いけど、隣の畑は収穫し始めたばかりだったから、たぶん直ぐに生活出来なくなると思う」

「えっ! それマジでヤバい奴じゃん!」

「うん。ここは何年か毎に水に浸かるから毎回何人かがこの地から出ていくんだ。たぶん隣の畑の人も出ていくかも。うちのおっとうは何とかしようと無理して身体を壊して……。おっかあも、やっと元に戻った畑がまた水に浸かったからショックで寝込んじゃった。だからおらが畑を元に戻して直ぐに冬野菜を育てるんだ」


 そう言いながら鍬を振り上げて流れ込んできた砂や砂利の混じった土を掘り起こしていくけど、たぶんそれは掘り起こすんじゃなくて取り除かなくてはいけないと思う。

それに、その非力な腕じゃ冬野菜を植える事が出来るようになるまで随分と時間が掛かるに違いない。

それにしても、あまり喋らない子だと思ったけど、意外と喋るんだな。

人見知りなのかな?


「……なあ、何度も水が浸くってのは領主は知ってるんか? 普通ならそういったのは領主が何とかするもんだろ。税収にも係わってくるだろうし」

「区長や町長が何度も言ってるって。でも、ずっと前に一度治してるからもう良いだろうって言われて追い返されるんだって」


 あ~、これはあれだな。

前にお金を掛けてある程度はやったけど、それが十分じゃなかったパターンだな。

これ以上はお金を掛けるだけの効果が見込めないからって見放されてるパターンだ。

魔法学園のお爺ちゃん先生が座学でぼやいてた奴だ。

確か対処法は……。


「水が流れてきた場所って分かる?」

「……いつも溢れる場所は一緒だから分かるけど……」

「よし、畑を再生して、溢れる場所もついでに治しちゃおう!」

「はあ? ついでに治しちゃおうって……それマジで言ってるんか? どうやるか知らないけど、何人魔法師を集めにゃいけないと思ってるんだ?」

「対処法は授業で習ったし、そこまで広範囲じゃないんだろ? たぶん僕一人で出来るよ。早速畑からやっちゃおう」

「……あの。なんかおかしな話になっちゃってるけど、うちにそんなお金はないよ」

「ん? 大丈夫、大丈夫。お金なんて取らないよ」

「おいおいオーヴ、お前どこまで手を付けるつもりか知らないけど、タダでだなんてお人好しも程々にしとけよ?」

「いや、魔法学園でだって実地研修でお金を貰った事なんてないし」

「……なあ、その話ってマジだったんか? 土魔法科の実地研修って、失敗しなければ少ないながらも報酬が貰えるって話を耳にしたんだけど」

「いや、全く貰えなかったけど。何でも魔法が不十分だからだって……」

「マジか。それ、騙されているんじゃないか? 聞いた話だと、実地研修は国や領か依頼を承けて行くからある程度の報酬が支払われるって聞いたぞ? それで、どれだけやればどれだけの報酬が受けられるのかを覚えるものだって」

「え゛? いや、成功していればいくら貰える仕事だったかってのは毎回聞いてはいたけど……」


 そりゃ横領されてんだろと言うリオンだが、今更な話だ。

僕は気を取り直して目の前の畑に目を向ける。

夜明けにはまだ早いようで、目が慣れたとは言え薄っすらと間仕切りらしき盛り上がりが見える。

この子の言う通りなら、この辺りの畑はみんな水に浸かって駄目な状態になっているんだろうと推測出来る。

なら、この子の畑のみに限らず魔力を絞りきる必用もないな。


 先ずはここ最近やり慣れてきた豊穣の舞を掛けるんだけど、砂や砂利が混じってるからちょっとアレンジして……次は水の溢れる場所を聞き出して……そうだ、僕が魔法を掛けている間にこの子のお母さんに治療魔法を掛けて貰うようリオンにメアを呼びに行って貰おう。

ちょっとやる気が出てきた!

と思ったら、仄かに光っていた背中の光虫が煌々と輝きだした。



もうしばらくは時間が取れない状況なので、気長にお待ち願います。

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よろしくお願いします。

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