花と妹の話
お待たせしました。
空き時間にコツコツ書き上げました。
「あら、ここにも綺麗なお花が。お母さん、こんなところに植えた覚えはないんだけど……もしかして二人が植えたの?」
「うんっ! んとね、オーちゃんとおはなうめたの!」
「えへへ。サーファからタネをもらってうめたんだ」
この頃の僕たちは埋めると植えるの違いなんて分かる筈もないし、種から芽が出て花が咲く事を一連の作業で初めて知ったくらいだった。
だからその呼び方の違いもよく分からないまま、サーファにやり方を教えて貰いながら種を蒔いて水を撒き、周りの雑草を抜いて歩いた。
最初の頃は花の芽か雑草か判別出来ずに折角出てきた芽を抜いてしまった事もあったけど、目印を付けたりした事で次第に区別が出来るようになって立派に花を育てる事が出来るようになった。
「ねぇねぇ、おはなきれい?」
「うふふ。とっても綺麗で素敵なお花ね」
「これねぇ、うんとね、おかあさんのためにオーちゃんとつくったんだよ」
「まあ、お母さんの為に?」
「えへへ。おかあさん、おはなすきだったのに、ずっとおはなさわれてなかったから、スゥちゃんといっしょにつくろうっていっていっしょにつくったんだよ」
「まあ! オーヴちゃんとスーちゃんがお母さんの為に? オーヴちゃんもスーちゃんも、ありがとう。本当にありがとうね」
膝に手を突き腰を折って花を覗き込んでいた母さんが、膝を突いてしゃがみ僕たちに目線を合わせたかと思ったら僕たちを抱き寄せて頬を擦り付ける。
それがとても優しく暖かくて、妹とは違う柔らかさで、ちょっと気恥ずかしさを覚えるのだった。
◆
「マジ美味いなこれ」
「ほんに、待った甲斐があったわい」
「そりゃあれだけの時間を掛けたんだからね。あんなカチカチの味気ない肉を食わされるよかうんとマシさね」
とっぷりと日が暮れた中で漸く夕食を頬張るZ隊の面々と私。
あんな焼いただけの肉や野菜を食べさせられるところだったけど、ミーシアさんが時間を掛けて焼いて固くなった肉をリメイクしてくれた。
ミーシアさん、マジで神!
私も少しだけ手伝ったのよね、勉強になったわ。
それに比べて……あのクソ迷惑な元クラスメイトは、待ち時間が出来たからって魔法士の癖して学生の時と同じように剣の素振りなんて始めてたし。
「ねぇ、ケイちゃん。さっき言っていたあの娘って誰の事ぉ?」
当初の焼いただけの肉からすっかり形を変えた煮込み料理を口にしていると、ロドクワさんが声を掛けてきた。
この人、悪い人じゃないんだけど、苦手なのよね。
どう見ても男なのに女装しているし、化粧してるっぽいし、何かにつけて無理やり女言葉使ってくるし。
もう普通にして欲しいんだけど、彼(彼女?)にとってはそれが普通らしいから私からはこれ以上何も言う事は出来ないんだよね。
って、何の話だっけ?
「やだ何言ってんのよぉ。新人ちゃんに、あのコが見たら泣くわよって言ってたじゃなぁい。忘れたのぉ?」
「ああ、その事ね」
そう言えばそんな事を口走っちゃったわね。
こういう何でもない事をこの人はつついてくるのよね、面倒くさい。
でも、学園の頃の鬱憤を晴らせそうだから、この際この面倒な人に乗ってあげようとしますか。
「あいつ、魔法学園にいた時は妹と名乗る女といつもいつも、いーっつも一緒だったの」
「あらま、兄妹愛が深いのねぇん。でも良いじゃな~い? 兄妹で喧嘩ばかりしてるよりもぉ」
「いえ、そんな生易しいものじゃなかったんだからっ。私たちが二年生になってから魔法学園に入ってきたんだけど、授業の時間以外はずっとベッタリとしっぱなし。それだけにとどまらず、土魔法科の学外授業で地方に遠征に出た時なんか、学園を言いくるめて随伴治癒士として付いて来ちゃってたんだからっ!」
「ほう、そりゃその娘っ子が一年の時からかの?」
私が思わず声を荒げてしまっていた事にも気付かずに息まで荒げていると、ドアードさんたちも興味深そうに寄ってきた。
私はここぞとばかりに調子に乗って鼻息まで荒げた。
「ええ、入学してそれ程経たない内から、私たち二年の遠征に付いてきたのよ! 私たちの担任の先生って一年の途中で定年で代わっちゃったんだけど、その代わった先生が放任主義で、碌に魔法を教えてくれずに実践あるのみなんて言ってそれまでの学年よりも頻繁に外に遠征するようになって……、ホントに苦労したんだからっ! で、あいつったら散々魔法を失敗しまくって私たちが尻拭いしていたのに、二年になってから急に優等生になっちゃってね。あまりに広範囲の魔法を成功させるものだから、私たち他の生徒がする事が無くなっちゃって……。何しに魔法学園に入ってまで意味のない遠征ばかりしてるのよってねっ! あ~もうっ! 思い出しただけでホントにムカつく! ねっ、生意気じゃない?」
途中からあいつへの愚痴ばかりになっちゃった感じで支離滅裂だったかもだけども、学園生活はホント良い思い出が無かったのよね。
だからこんなにも口が悪くなっちゃうんだけども、これくらいは良いよねっ!
「……アレが優等生? 何かの間違いじゃないのかい?」
「だよね。今でも時々基地での訓練で魔力を暴走させているのに。話によると、毎日のように堤の隣で魔法の練習をしていて、意図せず例の沼地にしてしまったって聞いたんだけど」
「……でありますな。他の隊から仕事がつまらなくなったとぼやかれます」
おおっと、ミーシアさんやハングマンさんだけでなく、普段から口数の少なかったワスタークさんまで話に参戦してきたよ。
ちょっとびっくりしちゃったじゃない。
てか、私たちの苦労があまり伝わっていないような?
「いやいや、その放任主義な先生にとっては優等生ってだけで、私たちにとっては練習の場を奪われた挙げ句に余計な仕事を押し付けられた厄介者って評価なんですけどっ!」
「「「「あ~、成る程ね(ぇ )」」」」
や、やっと分かって貰えた!?
てか、前のスライムの時やブラックドッグの時に似た様な事が起きてたものね。
どういう経緯なのか、アイツが隣にあるシーラー社の実験場で魔法の練習をしていたのが原因で、魔法部隊の仕事が殆んど無くなっちゃったのよね。
全く、迷惑極まりない話よね
「おいおい、それで? その妹を名乗る女の話は何処に行ったんだ?」
「わっ! ぶ、分隊長、いたんですか?」
「いたんですかって、同じ隊なんだからいるに決まっているだろ。お前それ失礼にも程があるぞ。まさか向こうでもそんな感じじゃあるまいな」
「えっ、い、いやあ、そんなワケないじゃないですかぁ。嫌だなぁ、あはは……」
「……ないのか、そうか。って事はこの隊には気を使う必要もないと」
「えっ? いや、その……アハハハ」
しまったー!
言葉の綾とはいえ、墓穴を掘ってしまったー!
まあ実際のところ、その通りなんだけどね。
場末の隊と言われるZ隊に入れられた時は凄く落ち込んだのだけども、僅か半年でそこを脱却してY隊に転属になった時は、それはもう飛んで喜んだわ。
当選、再びZ隊に戻るような事が無いように、Y隊の中では大人しくしてボロを出さないように気を付けているわ。
「ちょっとアーガリスゥ、話の腰を折らないでぇ。オーヴちゃんの優等生の話も気になるけど、その妹ちゃんの話も聞かせてよぉん」
「確かに、気になるのぉ。入りたての一年生の頃から遠征に付いて行けるよう学園を説得したと言う事じゃろう? 普通であれば授業優先して却下されるじゃろうに」
「ああ、そうだよね。アイツが優等生なのかどうかは実際に働きを見れば分かるとして、聞いていた妹がそんなにもベッタリしてたなんて聞いてないねえ。そのへん、本当なのかい?」
「おいらはそんなに気にはならないんだけど……その、ケイちゃんがその妹さんの事を妹じゃないような言い回ししてたのが気になったかな」
「……ん、それ自分も気になったでありますな」
おお、モジモジするハングマンさんはちょっと気持ち悪いけど、それよりも今日は滅多に話さないワスタークさんの絡みが多い気がっ!
これは貴重な体験ですねぇ。
てか、あの女の事をアイツが言い触らしてるのかと思えば、食堂で他の隊の同期の連中が話してるのを聞いたって話だった。
っと、何から話そうかな?
「妹を名乗る女、でしたっけ? まあ、ちょっと兄妹にしてはベタベタイチャイチャし過ぎなんですよね、異常なまでに。普通兄妹って、年頃になるとそれなりの距離が出来るじゃないですか。
いくら仲良し兄妹だからと言って、あれはマジで異常なんですよ。それと……」
「ん? 何じゃ、何ぞ他に言いにくい事てもあるんかいの?」
「……まあ他人の家の、それも人の容姿についての事だから、あんまり口にするのは……」
実際それを誰かに言った事は無いし本人に問い質した事もないんだけど、何か私の直感がそう思わせるのよね。
でも……ここで言っちゃっても良いのかしらと思い止まって口を塞ぎアイツの方を見ると、一人で鍋の前に立ち難しい顔をして首を傾げていた。
たぶんどうしたらあのクソ不味い焼いただけの硬い肉がこんなにも柔らかくて美味しい煮込み料理に変貌したのだろうとクエスチョンマークがたくさん浮かんでいるのだろうけど、その過程を見ずにあっちで剣を振っていただけで分かる筈がないよね。
「ちょっとぉ、そこまで言ってだんまりぃ? 言いかけたんだからぁ、ちゃんと責任持って最後まで言いなさいよねぇ」
まだまだ暫くの間は十分な時間が取れない状態ですので、次回は何時になるか分かりませんが頑張って書いていきます。
一人での片付け、ちょっとナメてたかも。
一月で終わりそうもないんですが……。




