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お隣さんは魔王でした @Web  作者: 赤点太郎
一章 少年と魔法
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再会と出張?



 泣きべそをかきながら周囲の視線を避けるようにその道を戻っていくと、不意に見覚えのある店が目に入った。


「……ぁ。卵のお店だ」


 やっぱりこの道で合ってたんだと思いつつ、一緒に来ていた二人がいない事で素直に喜べない僕。

でも、もしかしたら店の中にいるのかもと淡い期待を持って店の中に入ってみるものの、中には数人の大人の客と店員の姿だけが。


「ん? ボク、一人で来たの? お母さんと一緒じゃないの?」


 声を掛けてきたのは客のおばちゃんと話をしていた店員の女の人。

僕は少し後退りしつつも、その問い掛けに頭を横に振った。


「じゃあ、一人でお使いかな?」


 その問い掛けに、僕は固まってしまった。

一辺に聞かれてどう答えれば良いのか分からなくなってしまったからだ。


「あら、お使いでもないの? 迷子かしら」


 客のおばちゃんと店員が腰を下ろして目線を合わせてくれた事で、僕は漸く口を開く。


「んと、ぼく、たまごかいにきたの。でも、スゥちゃんとケンちゃんいなくなっちゃったの」

「あら、三人で来たのに一人になっちゃったの? どうしましょ、一緒に来た子が二人、迷子みたい」


 客のおばちゃんが声を上げると、他の客も心配そうに集まってきた。


「どこの子なの?」

「迷子になったのは女の子と男の子?」

「どこから来たの?」

「いなくなったのはどんな子?」


 矢継ぎ早に質問をされてどう答えれば良いのか分からなくなり、押し黙ってしまう僕。

視線は自然に下を向き、目からは涙が滴り落ちる。


「あっ、三人で思い出したわ! お屋敷の子よ、この子。前に手伝いに行ってるサーファさんと一緒に来た事があったわ」

「まあ、お屋敷の?」

「そう言えば良さそうな服を着てるわね」 

「じゃあ、お屋敷に連絡して探して貰った方が良いんじゃないかしら。万一の事があるし」


 大人たちの矢継ぎ早の会話に尻込みをしていたけど、最後のその言葉に僕は咄嗟に首を横に振った。


「ぼく、スゥちゃんとケンちゃんをさがす! だからっ」


 知らせないでと訴え掛ける僕。

一度やると言ったお使いなんだから、最後までちゃんとやりたい。


「あら、どうしたの?」

「ここにお使いに来たお屋敷の子が、一緒に来た他の子とはぐれちゃったみたいなの」


 更に買い物に来た客が店の中の様子に目を白黒させるけど、その理由を聞いて納得の顔をする。


「はぐれたのはどんな子?」

「男の子と女の子だって事は分かったんだけど……」

「確か、似たような歳か、ひとつ小さかったような……」

「まあ、お屋敷の子だから、ちょっと良いお洋服を着てるんじゃないかしら」


 居合わせた客たちと店員が手掛かりを話し合っているけど、僕はそれどころではなくソワソワする。


「そう言えば……さっきこっちの小路で見掛けない子を近所の子たちが囲んでいたわね。寄って集ってって感じじゃなかったから素通りしたんだけど……あっ」


 その言葉を聞いて、僕はそのおばちゃんが入ってきた別の出入口から外へと駆け出した。

ちょうど通り掛かった大人がのわっと転びそうになりながら僕を避けつつ文句を言ってきたけど、僕の耳にはその言葉は入ってこなかった。


「あっ! スゥちゃん!」

「に、にぃにっ! にぃに、にぃに~!」


 二人で抱き合ってひとしきり泣いた覚えはあるけど、その後ケントとどう合流したのか、どう帰ったのか、卵はどうしたのかは今になっても思い出せない。

覚えているのは、家で母さんに二人とも抱き寄せられた事と父さんに頭をグシャグシャされるように撫でられた事、ケントがサーファにゲンコツをされていた事くらいだ。







「え? 出張?」


 ヒノマさんの考察披露の後、昨日活躍出来なかった他の魔法小隊の隊員たちが残りの魔石の回収に集まって来たのだけど、伝達係からの連絡で僕にすぐ基地に戻るよう言われて慌てて基地に帰ってきたところ、突然うちのアーガリス分隊長から言い渡された。

因みに、基地に戻る直前に流れ込んでくる潮水の事を思い出してY隊に堤防の補修をお願いし、逃げるようにしてその場を後にしてきたけど、問題ないよね。

ヒノマさんにも碌に挨拶が出来なかったけど、また明日にでも会えるだろうから会ったら謝っておこうと思っていた矢先のこの宣告うげぇ。

あの人、僕の魔力暴走について何か手掛かりを知ってそうだったのに聞けなかったよ!


「出張じゃなくて、新人研修を兼ねた魔物討伐の応援だ。今期入隊の隊員はみんな対象だが……本当に聞いてなかったのか?」


 言い渡されたのは大陸の中央部サビアに隣接するイーストフォレスト基地への出張(応援)

云わば王国の最前線基地への出兵だ。


 他の新人隊員たちは随分前から聞いていたらしいんだけど、僕だけは半年程王都にいてここに転属されて来たので、すっかり忘れさられていたらしい。

そう言えば王都の基地でそんな話があったような気もするけど、何度も転属している内にすっかりと忘れてた。

あの話、ここに来ても有効だったんだ……。

てか、その日程が明日からって……急過ぎでしょっ!


「で、その出張はすぐに帰って来られるの?」


 僕は気になった事を聞いてみる。

けど、返ってきた答えは僕が真っ先に抱いた懸念が当たる結果となるものだった。


「魔物の発生状況次第だが……往復で一週間、あちらで早くて一週間の合計二週間、長引けば一ヶ月といったところか」

「ゲッ!」

「……何だ、ゲッて」

「あの。来週に3日程休みが欲しかったんだけど……」

「ああん? まだ入隊して半年余り、ここに来てからでも一月程度のぺーぺーが何を贅沢言ってやがる」


 そんなのは却下に決まっているとばかりに舌打ちされたけど、僕にだって都合があるんだ。


「そもそも、この時期は毎年サビアの魔物が大量に発生する。15年前の悲劇を繰り返さない為にも人手が必要だから派遣するんだ。加えてここウェストフォースでも魔物が出ない訳じゃない。要はこの時期は毎年人手が足りないんだよ。ただの新人に自分勝手な都合で休まれる訳にはいかないんだ。何があるか知らんが、余程の事でなければ諦めろ」

「ぐ、ぐぬぅ」


 戦力として行くのに新人研修を兼ねてるって、足を引っ張るとかないのかな。

あ、もうみんな現場で半年以上揉まれているからある程度は大丈夫なのか。


しかし、こちらの都合も聞かずに畳み掛けられてしまった。

こうも言われれば、諦めるしかない。

母さんに帰れない旨の手紙でも出しておかないと心配するだろうな。

いや、心配なのは母さんの方だ。

そんな事を思ってガックリと肩を落としていると、部屋のドアがガチャリと開いた。


「ああ、ここだったか~。探したぞ~、アーガリス」

「しょ、小隊長……何か」

「うん、今さっき急に決まったんだけどね、Z隊、明日から全員イーストフォレストに行ってくれる?」

「は? 全員、ですか? いや、ちょっと待ってください。こちらの防衛は? Y隊だけじゃ24時間回せないでしょ」

「ん~、そうでもなくなったみたいなんだよね~。どこぞの新人君が色々とやってくれちゃったのを王都からの調査チームが

王都に報告して向こうで決まったみたいで、他の隊も当初予定の80人の派遣じゃなくて倍以上の250人が行く事になったから~。んじゃ、隊員に伝達よろしく~。あ、俺も付いていくからね~」

「は? え? ちょっ、ちょっと! 小隊長! バークタス小隊長ぉ!」


 何だかよく分からない内に僕の希望は却下となり、更に最前線へ行く事が決まってしまった。



前回で10万文字を超えていたようですね。

幼少期と現在の話を同時進行は中々匙加減が難しい……。


と、ここで一章が終わり、二章に入ります。

幼少の方の話が進行をのんびりさせ過ぎて今回詰め込み気味になっちゃいましたが、この話は後々(ずっと先に)別の形で振り返ると思います。

てか、まだこれ前振りなんですよね、長いわ!

二章以降はもっとすっ飛ばして書いていかねば最期まで辿り着けそうもない……(反省)


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