見付からない店と二つの魔法
いつもより少し短めです
「あれ? おみせがない?」
ケントが座り込んでいた場所からすぐの曲がり角を曲がった先にある筈のお店が見当たらない。
もう見えても良さそうなのに、どれだけ進んでも目的の店が見付からない。
「おみせ、なくなっちゃった?」
既にぎっしりと並んでいた目的以外の店の姿すらなくなり、ぽつぽつと一般家庭の民家が離れて建っているだけとなっていた。
思えば、角を曲がってからそんなに歩かないところに店があった筈で、こんなにも奥まで歩かなくても良かった筈……。
そう思って振り返ると……。
「え、あれ? スゥちゃん? ケンちゃん?」
気が付けば二人の姿も無かった。
◆
「うわっ何だこれはっ! 目が、目がぁ!」
D分隊から説明を求められて豊穣の舞(魔力暴走付)を掛ける事になった。
しかし、いざ豊穣の舞を掛けてみれば、暴走する事もなく堅地整成で硬くなっていた岩場の端の方が柔らかい土に変わった。
そして、僕の後ろで見ていたD分隊の人たちが目を手で覆ってもがいていた。
あ、光虫が光ったのか……。
「ふむ、また魔力暴走しないな。昨日は魔力暴走したんだよな?」
片手をかざして目を保護していたヒノマさんが、何でも無かったように豊穣の舞を掛けた場所を見て僕に聞いてくる。
当然僕はそれを肯定したのだが……。
今まで環境が変わると約一年間は魔力暴走していたのに、今回は一ヶ月少々でそれが治まった?
それとも魔力暴走が起きない体質にやっとなったのか?
それともそれとも……。
「それにしても、こいつは何かと邪魔だな」
そう言って僕の背中の首下あたりに貼り付いていた光虫をペリッと剥がした。
って、ええっ!?
僕が剥がそうとしても剥がれなかったのに、ちょっとの抵抗感があったにせよヒノマさんは簡単に剥がしてしまったぞ!?
「いたいた。やはりいたな、ゼッタイの。ちょっと検証したいんだ、こいつを借りるぞ」
そこに現れたのはY隊の分隊長。
いきなり来てD隊に断りを入れ、ちょっと来いといきなり拉致られた。
え、ちょっ。
D隊の分隊長から良いという返事も貰わないまま引っ張ってこられたのは岩場とは反対側の堤の前。
それもY分隊が集まっているところへだ。
「この辺りに昨日と同じ堅地整成をやってみてくれ」
いきなり連れて来られて言われたのは、僕の堅地整成が届かなかった奥の方の堤に堅地整成を掛けろと言うもの。
それもY隊の隊員が集まっている目の前で、だ。
「昨日と同じ……。確か昨日は無詠唱で……」
そう、昨日の堅地整成は他の隊の隊員たちの前でこっ恥ずかしい詠唱を嫌って無詠唱に切り替えたんだ。
基地では、詠唱をして魔力暴走しないように練習を重ね、更にマさんに見て貰いながら隣にある会社の実験場を借りて無詠唱の練習をさせてもらっていた。
……そうか!
その日々の練習の成果が漸く実って魔力暴走しなくなったんだ!
そう断定した僕はとても嬉しくなり、Y隊の隊員たちの前で胸を張った。
これで恥ずかしい詠唱を口で唱えなくても良くなるんだ。
そう思った僕は、Y隊の希望に沿って早速無詠唱で堅地整成を頭の中で唱える。
土ニ宿リシ秘メタル力ヨ……
「……堅地整成っ!」
僕が堅地整成を発動させると、僅かにゴゴっと音を立てて目の前の堤の表面の色が変わっていく……のだが。
「……おいおい、何だこの魔法の拡がり方はっ」
「いや、昨日も何度かに分けたのじゃなく一回で堤の半分を覆い尽くしたって聞いてるだろ。それならこの拡がり方も納得……」
「いや、だけどこの拡がり方は尋常じゃ……」
「それに、俺らが掛ける術とは色が違わないか?」
「ああ、色もそうだが、表面の細かい凹凸も均されてるように見えるぞ?」
「雨の中、足を滑らせて堤の下に落ちた馬鹿がいたって話だけど、表面が均されて滑りやすくなって雨で滑らしたんじゃないのか?」
「って事は、その件はこいつの魔法のせいって事じゃ……」
僕の魔法が堤の表面を均して硬くしていく様を見たY隊の隊員たちが口々に僕の魔法を分析しているけど……。
岩場のある方面へは既に僕が掛けて硬くなった範囲まで達していて、反対側は間もなく端にまで魔法が及ぼうとしていた。
そう言えば昨日、ハングマンさんの魔法と干渉して暴走爆発した場所は他の隊員が補修修復してくれたらしく、抉れていた筈の場所は綺麗になっていた。
と、ホッとしたのも束の間。
「うっわ!」
そちらに気を取られていた矢先に、目の前でドッゴーンと爆発が起きた。
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