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お隣さんは魔王でした @Web  作者: 赤点太郎
一章 少年と魔法
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幼馴染と使い込まれた剣



「まってー!」

「はやくはやくーぅ」

「きゃっきゃ」


 庭先で元気よく走り回る小さな三つの影。

 このところ、ケントがウチに来る頻度が上がってきた。

 以前は週に一度来るかどうかだったのが、この頃には週に三度前後来るようになっていた。


「あーっ! オーくん、そっちいったらダメなんだよー」

「え~? あっちにはさんさいがあるから、とってきたいんだけど」

「さんさいじゃないよ、ボクよんさいだよ。それにダメなのはダメなんだよー」


 そして、普段お目付け役だったサーファが僕たちに付いて歩く事が減っていた。

 それに、よく花壇の手入れに外に出てきていた母さんの姿も。


「じゃあ、あっちのかだんにいこう! あっちにはねー、おいしいイチゴができてるんだよー。スゥちゃんもいこー」

「イチゴイチゴ~」

「えー! こんどはあっちなの?」


 僕の手には籠にいっぱいの菜の花のつぼみ、妹の手には同じく開いてしまった菜の花、ケントの手には小松菜とネギが。

 母さんとサーファがあまり外に出てこなくなってから、花壇の手入れは僕たちの役目になっていた。

 門から玄関へと続く道の周辺だけは色鮮やかな花が植えられていたが、一歩奥に入れば花壇という名ばかりの畑かという状態であった。

 勿論、母さんの仕業である。

 お手伝いをしたお駄賃として、やはり花壇に生っていたイチゴを片手の指の数だけ採って食べる事を許されていた。


「オーくん、スーちゃん、まってよー! あっ!」


 ズササっと土埃が舞い、小松菜とネギが宙を舞う。

 先行する僕と妹が振り返ると、後ろから付いて来ていた筈のケントが転んで膝を擦り剥き、半べそで座り込んでいた。







「ふむ、そういうのも大事なのかも知れないが、それは理想論だな。臨機応変に対応出来る人材を育成するのも大事だぞ。仲間が目の前で殺されようとしているのに命令がないから見てるだけだなんて、愚の骨頂だろ?」


 うん、オジサンの意見は的を得ていると思う。

 それこそ分隊長たちに聞かせてやりたい。

 僕がウンウンと首を縦に振ると、リオンも同意らしく一緒に頷く。

 対してメアは気に入らなかったのか、口を尖らせていた。


「まあ、軍側の言い分も分かるがな。君はまだ配属されて間もないのだろう? 初っ端からそういうのを許すと、他への示しもだが何より君が今後同じような事を続ける事を危惧しているのだろう。嬢ちゃんがさっき言ったようにな」


 気を利かせたかの様なオジサンの言葉に、メアは機嫌を取り戻し……いや、かなり有頂天になって、無い胸を張る。


「ほらぁ、うちの言った通りじゃない。伊達に一年半も従軍していないわよ」

「へいへい。そりゃ凄かござんす。流石は先輩様で」

「何よ、その言い方はっ! 年上をもっと敬えっ!」


 ドゲシッと隣の席のリオンに肘鉄を入れるメア。

 6人掛けテーブルの向かいに座るオジサンには大ウケしていたが、端の僕にまで被害が及びそうだ。

 僕が間に座らなくて良かったよ、ホントに。


「仲が良いね」

「「どこが!」」


 そういうところがだと思うんだけど。


「で、君は魔法だけでなく剣もやるんだったな」

「うん、小さい頃から父さんに習ってたし。確か3歳の頃からだったかな?」

「おいおい、3歳の頃からって事はもう10年以上かよ。それはそれでスゲエな」

「でもそんなにも小さい頃だとただのお遊びなんでしょ?」

「そりゃそうだろうけど、でも小さい頃から素振りなんかしてればそれに必要な筋肉も付いていて、本格的にやる頃には随分と有利になると思うぞ?」


 成る程、そういう見方もされるんだ。

 でも、僕たちの場合は……


「確かに小さい頃は遊びの要素も濃かったけど、それでも本気で稽古はしていたんだぞ?」


 そう口を尖らせて言ってみたものの、横の二人からは揃って白い目で見られた。


「そんな事いってもよ、折角当てたのに剣では致命傷にまでは至ってなかったろ」

「うぐっ……ちゃんと当てはしたんだ。したんだけど、意外とそのブラックドッグが硬かったのか刃が入らなかったんだよ。でも刃先はちゃんと入ったんだから!」


 そう力説するも薮蛇で、どんどん二人の目は胡散臭い物を見る目に。


「当てたのに刃が入らなかった? ふむ。じゃあ、その剣を見せてくれないか?」


 向かいの席のオジサンの要望に応じて腰の剣を鞘ごと渡す僕。

 こんな食堂の中で剣を抜くのは本来であればマナー違反だからと、食堂の大将や周りの客たちに一言断りを入れてから鞘を抜くオジサン。

 抜いた状態で泥沼に倒れ込んだので、まだその泥が所々残っている。

 帰ったらトコトン掃除して手入れをしないと。


「……何だこりゃ。随分と使い込まれて……刃こぼれが酷い上に、それを誤魔化す為にかかなり痩せ細らせているんじゃないのか?」


 ズバリと当ててきたよ、このオジサン。


「この剣は、知っているだけでも爺さん、父さん、兄さんたち二人も使っているからね。みんな給料で自分の剣を買うまでは、それを使っていたそうだから……」

「へえ。じゃあ代々受け継いでいる入門用の剣ってところか、その剣は」

「あ~、初心者ばかり使っていたから、扱いが荒くてそんなにもボロボロなのね」


 僕の説明は、隣のリオンとその向こうのメアにすんなりと伝わった。

 そう、この刃こぼれ等は殆んどが僕の付けたものではない。

 既に誰が付けた傷なのか分からない状態だ。

 それを誤魔化す為に研ぎまくった結果、刀身が痩せ細ってしまっていたのだ。

 それでも刃こぼれは誤魔化しきれなくて所々に残ってしまっていた。


「おや、遅れて来てみれば、中々面白そうな事をしているね」



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