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お隣さんは魔王でした @Web  作者: 赤点太郎
一章 少年と魔法
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やり過ぎ父さんと魔法の誤用



「器用なものだな。しかし、まあ当ててるだけだな」


 父さんからもお褒めの言葉を貰った妹だったけど、それではいけないと父さんが妹を指導する。


「おい、オーヴ。ちょっとやって見せなさい」


 名指しされた僕はぶら下がる棒の前でマイ木剣を構える。

 カンッ、コンッ、カキッ、スカッ。

 僕の振るった剣先は先程妹が当てて揺れ続けていた棒に見事当たったのだけど、それも長くは続かず四度目には空を切った。


「ふむ、まあこの歳なら上出来か。見ていたな、自分と何が違っていたか解るか?」


 妹は何度も吊るされた棒に当てていたのに、外した僕の方も褒めて妹にその違いを問うた。

 しかし、そんな父さんの難しい言葉に幼い僕たちが理解出来る訳もなく……。


「あらあら、旦那さま。そんな漠然とした問い掛けでは二人とも答えられませんよ。二人ともまだ未就学なんですから」


 父さんの言っている事、言いたい事が分からずにコテンと首を傾げる僕たちに助け船を出してくれたのは、いつの間にか近くで見ていた母さんだ。


「む、そうか。うっかり兵の新人教育のつもりで見ていたのかもな。では、私が手本を見せてやろう。先程のスフィアちゃんはこう当てていただけ、オーヴのは一応こう打撃になっていた。この違いは分かるか?」


 鞘が付いたままの剣で吊るされた棒をちょんちょんと突いた後、軽く叩くように剣を振る父さん。

 先程はよく分からなかったけど、続けて見ればその違いは明らかだ。


「今ので分かったか? スフィアちゃんのでは虫も殺せん。まあ、オーヴのも虫を殺すのがやっとだろうがな。少し離れていろ、本当の手本を見せてやる」


 そう言って僕たちを下がらせ、剣を持って集中する父さん。


「ふんっ! ふんっ、ふんっ!」


 軽く揺れていた棒が後ろへ吹き飛ぶと、ピンと張っていた紐が波うちながら棒を引き戻す。

 棒はその紐に翻弄されながら不規則な動きとなって戻ってくるが、父さんは難なく返す刀でそれを打ち上げる。

 更に宙に舞う棒を振り下ろした剣でパッカーンと打ち落とした(・・・・・・)

 地面に叩き付けられて木端微塵に吹き飛んでいく棒の破片と括り付けていた紐と折れた枝。

 

「む、やりすぎたか」


 その結果を見て構えを解く父さんに、母さんは苦笑を漏らすのだが……。


「すっごーーーーい!」


 僕は興奮して目を輝かせる。


「ふわあああぁぁぁ!」


 そして妹は目を見開いて声にならない声を上げるのだった。







 くっ、浅いか!?

 手応えはあったが、先程の大型ブラックドッグの時よりは抵抗感が緩かった。

 無理をして体を捻り、自分たちを飛び越えていったブラックドッグを視線で追うと、先程倒した大型のブラックドッグを足場に、堤の端にある岩場に飛び移ろうとしていた。

 更によく見れば、その特大のブラックドッグには、後ろ足の太股に斬り傷と、胸辺りに槍が刺さっているのが見えた。

 一応二人とも一撃は入れる事が出来たのだが、そのブラックドッグにとってはどちらも致命傷には程遠かったようだ。


「あいつ、あの岩場から堤の上に上るつもりだ!」


 あれだけの身躯である、堤の上に上るのは造作もないだろう。

 しかし、そこを通してしまえばそれは町への特大の魔物の浸入を許してしまう事になる。

 それに、町へ向かわずともその岩場の向こうにはマさんの勤めるシーラー社があって、多くの従業員が今も働いているのだ。

 僕は咄嗟に右手を前に突き出した。


「豊穣の舞っ!」


 苦し紛れに放った魔法は、今朝もマさんと練習していたお馴染みの農耕魔法、豊穣の舞だ。

 それも、魔力を一切絞る事も(・・・・・・)忘れて(・・・)


 ドッゴオオオオオオォォォォォン!


 当然のように暴走する魔力は、これまでに無かった威力を伴う爆発をもたらす。

 今まさに岩場を足場にしようとしていた特大のブラックドッグに、爆ぜた岩の破片がもろにぶち当たり、そして突き刺さった。

 先程、堤の上で掛けた土木魔法の堅地整成がそこにまで及んでいたらしく、法面と同じように黒く染まり酷く尖った破片が僕たちの所までパラパラと降ってきた。

 足を付こうとしていた岩場が突然爆発し、その影響をモロに受けたブラックドッグは、その岩場を蹴る事も叶わず、その岩場を転げ落ちてくる。


「……あ。ぜ、前衛部隊、掛かれ!」

「はっ! い、いくぞ!」

「お、うおおおぉぉぉ!」


 法面を滑り落ちて(・・・・・)態勢を崩していた兵たちに追い打ちを掛けるように起きた爆発に、一瞬遅れた分隊長の号令で我に返った前衛部隊の兵たちが、血を流しながらフラフラと立ち上がろうとするブラックドッグに襲い掛かる。

 いくら特大とは言え、そのブラックドッグが瀕死なら難なく仕留められるだろう。

 指揮を執る分隊長はホッと息を吐く。

 もうブラックドッグの後続がない事は確認済みだ。

 先程の爆発の破片で擦り傷を負った者は多少いるかも知れないが、大怪我をした者は出ていなさそうな事に胸を撫で下ろしていた。

 しかし、その時の僕はそれどころじゃなかった。


「……何してんだ? お前」


 ジタバタと泥水を叩く僕は、降雨のせいで泥沼化した農地におかしな捻り方をしたまま倒れ込んでしまい、泥に埋もれてしまったのだった。

 ごぼぼ。



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