表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お隣さんは魔王でした @Web  作者: 赤点太郎
一章 少年と魔法
26/58

構ってくれる父さんと刺さってる?



「んとね、まっすくじゃなくてね、よこからやるんだよ」


 父さんがいなくなると、僕は教わった内容を妹に得意気に教えていくが、それからというもの兄たちから教えて貰う事はなくなった。

 僕たちへの早すぎる父さんの指導に反発したらしいが、そんな事は幼い僕たちには分かる訳もない。

 寧ろ滅多に構ってくれない父さんが相手になってくれると喜んでさえいた。


「ん~?」


 しかし妹は僕の言う事がまだ難しいのか、首をコテンと傾げる。

 結局、妹は僕の真似をするばかりだ。

 ならば僕が確りと覚えて妹に見せれば良いと、父さんの言う事をよく聞くようになった。



 一方で、日中の誰も見ていない時は、僕も妹も庭の隅に行ってこっそりと魔法を試しながら泥んこ遊びをする。


「スーちゃん、そっちで見てて」


 妹を立ち止まらせて離れ、以前はあまり意識せずに発動させていた泥んこ魔法を慎重に掛ける。

 昨日は掌くらいの広さに掛けようとして小さな爆発が起こり、サーファがすっ飛んできた。

 だから今日は小さな泥団子くらいの広さのつもりでやってみる。

 ん~と右手を伸ばして泥んこを作ろうとしていると、いつの間にか妹が背中と右腕に手を添えていた。


「スーちゃんはあっち!」


 僕が離れるように言うけど、妹はイヤイヤと首を振って僕の右手の先を見た。

 すると、僕の右手の先の土が色を変えて湿り気を帯びてきた。


「あっ、できた! できたよ、スーちゃん!」


 すっかりと泥んこと化したそこは、目標とした小さな泥団子の大きさとはいかずに随分と広い範囲となってしまったが、暴走はせずに済んだ。

 僕は妹と泥んこ魔法がまた出来た事を喜んで、泥んこ遊びに更けるのだった。







「……おい、なんか俺の目がおかしくなったような……」

「いや……俺も変な物が見えるんだけど……」


 雨が強かった先程までは雨煙で第一防衛線辺りが殆ど見えなかったが、雨が弱まってくるとあちこちから戸惑いのどよめきが上がり始めた。

 それは中央付近に陣取っていた小隊長たち指揮官の耳にも入っており、確認の為に双眼鏡を覗き込んでいた。


「誰か偵察に行かすしかないか」

「ああ。しかし、ああもぬかるんでいては偵察に行かせる事も難しくないか?」

「そうだな。左右にも随分と拡がって、人の通り道すら残ってない」

「……また例の魔法士か」


 そこにいた者たちの視線が以前は野原だった目の前の平原に向く。

 そこは以前よりも広くなった|惨状(農地)が、雨で沼地のようにぬかるんでいた。

 この状態では確認をしに行こうとしても、足が取られて動けなくなる可能性が大きい。

 況してやそんな状態で転倒でもしようものなら、運が悪ければ泥に埋まって溺れ死んでしまうかも知れない。


「双眼鏡の大きい物か、望遠鏡を基地から持って来させよう。兎に角、あの(・・)おかしな現象を確認するのが先だ」



 小隊長たちが手を(こまね)いている間も、兵の中で目の良い者はそれ(・・)を視認するに至っていたが、しかしそれ(・・)がどうしてそうなっているのか理解に苦しんでいた。


「おい、もっと分かるように言ってくれ」

「いや、だからぁ。ブラックドッグたちが倒木を越えたところで刺さっている(・・・・・・)んだ。後ろ足を突き出して」


 その証言を聞いて更にこんがらがる隊員たち。

 刺さっているという単語が一人歩きを始めたものの、どういう事なのかその言葉の意味を汲み取れずにいたのだ。

 次第に、いつまで経っても会敵せずに雨の中を待ちぼうけとなっている事に苛立ちを覚え声を荒げる者まで出てきた頃、他の分隊から良い物が回ってきた。


「何だあれ。土にケツ出して突き刺さっているぞ」

「おい、俺にも見せろ!」

「いや、俺が先だ!」


 取り合いになっていたのは、他の魔法分隊の隊員が偶々持っていた小さな単眼鏡。

 隊員の中には個人的に冒険者登録をしている者もいて、二足のわらじを履いている。

 この単眼鏡は冒険者として活動する場合に、索敵するのに必要な物だろう。

 遠くから持ち主であろう隊員が絶対壊すなよと叫んでいる。


 軍になると索敵も専門の役職があり、そこの持ち物である双眼鏡や望遠鏡は他の部隊に貸される事はない。

 そして、その報告は指示がなければ指揮官たちにしか知らされないのだ。


「……どう見ても一ヶ所に集中して進んで来ているな。突き刺さった他の固体たちを足場にして」

「ああ。弱そうな小さいワンコを足蹴に、大きい奴等が前に出て来ようとしているんだろう。このままだと後ろに控えているより大きな固体が前に出てくるな。作戦本部に報告だ」


 櫓の上で観測をしていた観測隊の隊員の一人が報告に降りていく。

 先程までは雨煙のせいで様子がハッキリとは分からなかったが、雨足が弱まった事で何が起こっているのかが確認出来るようになった。

 雨中でも観測する術はあるのだが、切羽詰まった状況でもないからとそこまでは指揮官たちからも要求されてはいなかったものの、それも時間の問題と思われていた矢先だった。


 不意に真下で小規模爆発が起きて観測漏れがあったかとヒヤリとした場面もあったが、土魔法士の魔力暴走が原因だと分かってホッとしたものだ。

 幸いにも堤は表面が黒く焦げただけで、爆発による堤の破損や怪我をした者は見受けられなかった。

 全くお騒がせな話だが、これで有用な報告が出来るとホッとしたものの、危険が去った訳ではないと気を引き締める観測隊員は、再び観測に戻るのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ