第八話 ですわ?!!!
はい死にました。それはもうあっさり。
わんわん言う事しか出来ない他力本願。それで助かろうだなんておこがましいにも程がある。
って、あれ? なんで俺はまだ意識があるんだ?!
ひょっとしてまたアレか! アレなのか!
『かける言葉も思い浮かびません。変態過ぎて、最低過ぎて、クズ過ぎて。ため息をつくのも惜しいです。あなたの為に出すため息が勿体なくて仕方がありません』
やっぱり。またこいつか。天の声。女神的な何か。
それにしても言いたい放題だな。でも、今の俺には明確な目標がある。
〝温かい食事〟〝温かいお風呂〟〝温かいベッド〟
ペットとしてお姉さんと過ごす、ビューティフルデイズ‼︎
わんちゃん? ノンノン。夜は狼になっちゃうんだぞぉ!! ガォー!! ……わぉーんかな?
よしっ! まずこいつ。天の声だな。こいつにも手伝ってもらわないと。どう切り出すか。
『ゴミクズですね』
『はい?』
『ゴミクズと言ったのです。夜は狼になるのですか? あらまあ、素敵な野望だ事』
は、はぁー?! 声に出てたのか? う、嘘だろうが?!
『お馬鹿さんね。あなたそもそも声を発してる? まずはそこから考えるのです』
こ、心の声だったーー!!
『はい正解。多少は考える力があるのですね。安心しました』
こ、この野郎……。
『この野郎とは誰の事でしょうか?』
『ごめんなさい』
『目標を見失ってはいけません。清楚系美女になるのです。勇者レオ好みの女性になるのです』
『で、でも。どうやって? 縦巻ロールのクセが強いんです。クセが、クセが強いんです! それはもうクルックルのクルンクルンですよ?』
どう考えても一時間では無理だ。
そういえば髪が重いから梳くってジャスミン姉さんが言ってたな。
『今回は特別に魔道具をさらに3つ用意しましょう。縦巻ロールにさよならを告げるのです。清楚系美女に、尚且つ色気を放つのです』
また一方的なこの展開。
もう少しお喋りしたいのに。聞きたい事、たくさんあるのに。
特に中古品の自称魔道具についてな!!
◇◆
ハッ!! 四回目……か。
ふかふかベッドさんこんにちは! アヤノまた来ちゃった! あはッ‼︎
今回は可愛くなるんだもん!!
アヤノがんばる!!
……これはアレだ、アヤノちゃんモードって事にしとこ。
◇◆
棚に不自然に置かれる物。
はぁ、魔道具……これかよ。
手に取らなくてもわかる、やばい感じ。
百均にありそうな梳きバサミ。
読み散らかした後のあるくたびれた日本語表記のヘアカタログ。
残量一割ほどのヘアワックス。パッケージこそ英語だが、裏面はバッチリ日本語表記。薬局で買えるリーズナブルなやつ。
ねぇ、ほんと誰の?! これ誰の私物?!
魔道具?!!
まぁ、ありがたく貰うけどさ?
タダだし、断る理由はないよ?
気遣ってくれて嬉しいよ!
嬉しいけどさ、違うでしょう?
おい、聞いてんのかよ?! おーーーーい!
心の中で叫んでみたが、今回も天の声は届かず。
やっぱり死ななきゃダメらしい。
どうせならウィッグが欲しい。それで事足りるでしょ。次があったらお願いしてみよう。
とりあえず、ふかふかベッドから降り、鏡の前へ……。
って、金太郎じゃねぇか‼︎
切った髪リセットされてないし‼︎
化粧も落ちてるし‼︎
外見はそのまま……って事か?
なんなのこれ? ほんとこの異世界、どうなっちゃってるの?! おかしいだろうが‼︎




