第七話 ですわんッ!
このままじゃ絶対にやばい。生存ルートの確保‼︎
お姉さんにお願いするんだ。助けてもらうんだ!
このままでは、確実に……死ぬ‼︎
甘々ペット生活を勝ち取るんだ‼︎
「わんわん! わん‼︎」
「もーぅ! 可愛すぎーーッ‼︎」
「くぅん。わん‼︎ わんわん‼︎」
あれ。なにこれ。言葉が喋れない……。
なんでどうして……。本当に犬になっちゃったの?
「わんわん‼︎ わぁーーん‼︎」
「はいはいよしよし。いいこでちゅよぉぉ!」
幸せだわん!! 最高に幸せだわん! わんわん!
細かい事は気にしなく良いじゃないか。今は真っ直ぐにお姉さんに可愛がってもらおう。わんわん!!
…………あ、多分これ〝わんわんモード〟だ。
ーーおわた。
◆◇
「では、呪文行使の準備に入ります」
「すまない……カシス……」
手をクロスしスッと出されたのはナイフとフォーク。
右手にフォーク、左手にナイフ。持ち方は可愛らしくもグーの手だ。
徐々に左眼だけブルーに変わる。オッドアイ。
いつだって全力。言い換えれば容赦無い。確かそんな子だった。
左眼の色によって行使する魔法の度合いが変わる。ブルーは最大級。ーーよ、容赦ねぇな。わん!
左眼が完全にブルーになると、カシスちゃんは息をすぅーーっと飲み込んだ。
「あなたの魂、いっただきまぁーーす!」
ジャンプしたかと思えば着地と同時に、グーの手で持つナイフとフォークの端を地面にドンッ!
まるでお子様ランチを待つ幼女がお行儀悪くテーブルにドンドンするあれだ。
あぁ、死んだ。《死の宣告》が発動する。
ふかふかベッドの前に橙色の大きな時計が現れる。
カチッカチッと時を刻む。対象は間違いなく俺だろう。
お山に顔を埋め、よしよしされる中、横目に眺めていた。お姉さんは俺に夢中で時計に気付く気配はない。
それ程までにぎゅっきゅされているのだ。
ーー幸せな人生だった。生まれて初めて味わうお山は楽園で、魂はカシスちゃんに食べられる。
ご褒美と言わずなんと言う!!
ペット生活など、過ぎた野望だったのだ。
我が人生に悔いなし‼︎
ありがとう。異世界。さよなら、俺。
《リザリザァァ・テーション》
バチバチッバチンッ‼︎ シュゥゥゥ。パンッ‼︎
え、時計が……消えた?! えっ?!
「やったぁ!! やった! やったぁぁ! カシスの最大魔法消せちゃった‼︎」
すらっと伸びた綺麗な銀髪をなびかせながら、飛び跳ね喜ぶ美少女。ーーまさか天使様? 助けてくれたのか?
「むぅ。ヒーメーナ! あなたって人は……」
「姫、勘弁して下さい……。これはお遊びでは無いのですよ」
「レオぉ? 敬語禁止! 姫呼び禁止! 何百回言わせるのぉ?」
「何千回でも言わせます」
「じゃ、何千回でも言ってねッ」
こいつはアレだ。ヒメナちゃんだ。
第三王女にしてウィッチになった王家の異端だったかな? 光を主る魔法使い。
ジャスミン姉さんのおかげで生存が長引いたせいか。
次から次に良い女が登場しやがる。
いや、元から居たんだよ。レオ様きゅんきゅんモードの時は気にもならなかったが……。こいつら、まじで可愛過ぎ!!
もう1人はどこだろ……?
「余所見しちゃだーめ。むぎゅぅー」
「わん! わんわん‼︎」
はい。僕の心はジャスミン姉さん。あなただけのものです。
ペット生存ルートなのか否か、死ぬまでわからないぞ!! わんわんおー!!