第六話 ですわ♡
「ゴクアーク! 追い詰めたぞ!」
…………来た‼︎ あはっ‼︎
ふかふかベッドの上でうつ伏せになり枕に顔を埋め、ニヤニヤのデレデレ! 今のオーレッ!
こんなお粗末な髪型でも、入れたの!
〝きゅんきゅんモード〟
あはっ♪ 枕さんありがとぉ!
顔隠しちゃえば関係ないもんね!
……相変わらずのきもさだが、今はいい。
こうじゃないと、困る‼︎ 痛いの反対!
◇◆
「アヤノ様、それでは。お先に。また上で会いましょう」
爺さん。格好良いけど、その言葉のチョイスはどうなの?! きゅんきゅんモードに水を差すのはやめようよ?! 死ぬのは痛いんだよ?
はぁ。枕に顔を埋めながらのため息。うん。息は臭くない!
「セバス。ご苦労様。逃がしてあげられなくてごめんなさいね。来世でまた」
枕に埋めながらモゴモゴしながらも返答した。
「はい。また上で会いましょう」
いや、だからおまえ、来世でって言ったよね⁈
頑なだなぁ。上で会う事にこだわりでもあるのかなぁ。
シュッ。
逝ったかセバス。次があったら、しっかり逃してやろう。
「なぁーにこの子? 枕に顔を埋めちゃって! これが極悪非道の限りを尽くしたゴクアークなのっ? うそでしょぉー?」
え、誰かが近づいて来る。レオ様じゃないの? やだ。やだやだ。
「おい、ジャスミン! 勝手な真似はよせ!」
あっ、レオ様の声だぁ。やったぁ!
「ほら、顔をあげなさいよ!」
えっ、あれ……。痛い、痛いよ……髪引っ張らないで……。
レオ様助けて、、早く殺して……。
「うぅ……痛いよぉ」
「…………うっそ? 何この子?!」
なにこの女。レオ様じゃない!!
「ジャスミン! いい加減にしないと怒るぞ‼︎」
勇者の声は届かない。ーーうぅ、レオ様はやくぅはやく殺してぇ……。
「か、かわいぃぃぃ!! なにこの髪型? ちょおださぁーーい!! あーん。なになにこの子ぉぉぉ!」
確かにさっきまで髪の毛を威勢良く引っ張られてたはずなのだが、気付いたらおっきなお山が二つ! こんにちはジャンボお山に顔を埋めちゃってました。
ぎゅーーって抱きしめられて、かわいいかわいいと顔で頭をスリスリ。
あの、これ現実ですか? ジャスミン? あぁ、思い出した。同人誌で幾夜もお世話になりました。その節はどうも。
勇者直下4人のウィッチが1人、水を主る魔法使い。お色気むんむーんのジャスミン姉さんだ。
さっきから、髪の毛が鼻にあたる。これは……ゆるカールってやつかな。目の前お山どーんでよく見えない。
けど、俺こと金太郎と違って洒落てるのはわかる。
あぁ、いい匂い。トリートメントなんだろ? 俺? 一体型のECOなやつ。
なんだろこれ。今なら……俺のまま幸せに死ねる気がする。
あっ、レオ様きゅんきゅんモードが解けてるのか。
でも、今なら、今なら……‼︎
……死にたい!! この幸せの絶頂の中!!
はやくっ! はやく殺して!! 今なら、今なら俺のままで!! 男として死ねる!!
それでもうおしまいっ! 完結!!
「はぁはぁ。殺して下さい。お願いします……は、はやく……」
精一杯お願いした。
「だーめ! アヤノちゃんわぁ、これからお姉さんのお家で暮らすの! 一緒に温かい食事してぇ、温かいお風呂にも入って、ふかふかベッドで一緒に眠るの! わかったぁ?」
俺は全力で首を縦に振った。うんうんうんと三回!
「いいこ。髪の毛重たいから可愛く梳いてあげましょうねぇ!」
俺は全力で首を縦に振った。うんうんうんと三回!
生存ルート、キタコレ!
しかも幸せ1000%のハッピーエンド‼︎
「ワンちゃんみたぁぁい! かわぃぃぃい!!」
ジャスミン姉さん! もっと撫でて!! わんわん!!
俺はペットになろうと思う。セカンドライフはゆるカールお姉さんの家でペット生活。わんわん!
うん。良い最終回だ。ありがとう異世界。
ーーーー
「カシス。いつも悪いな。こんな役回りばかり……」
「いいえ。レオの為でしたら、わたしは構いません。力になれて嬉しいです」
カシスってあのカシスちゃんか?
黒髪ショートカットに似つかわしくないオレンジの瞳。年端もいかない少女。おっきなお友達から絶大な支持を集めたあのちびっこ黒魔道士カシスちゃんか?!
た、確か……得意魔法は《死の宣告》
まさかな。まさかね? チワワ的なハッピーエンドでしょ?! わんわん?!