表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/62

第五十八話 ふむふむ探偵!ですわっ


「はぁーいっ、エーリリン」


 肩をトントンっと叩き当たり前のようにキャミソールを手渡すヒメナちゃん。


「えっ?」


 エリリンは何故それをわたしに? と、驚きの表情をみせ、Tシャツを引っ張る手が緩まる。驚いているのはエリリンだけじゃない。ジャスミンお姉さんもだ。そして俺も。



 〝あれ? さっきロフト行ったよね?″



 まさに摩訶不思議。

 なにしてるんだよヒメナちゃん……。


 ◇


 Tシャツの状態は言わずもがな最悪の一歩手前。ギリギリ衣類としての役割を果たしている。

 伸びてしまった襟ぐりからはジャスミンお姉さんのブラが見え隠れしている。いや、完全にみえているっ。


 もはや…………布!!!!


 ゴクリ。

 悔しいが、目は釘付けだ。不謹慎極まりない。ごめん……お姉さん……。──その格好は、そそり過ぎている。


 ドクンッ。


 ジャスミンお姉さんと目があってしまった。見てはいけない……俺は何も見ていない! 秒速で目を逸らそうとした時、首を二回横に振り一回頷いた。その目はとても優しくて、


 「大丈夫、心配いらないわ」そう言ってるようだった。


 エリリンにイラついてるはずなのに、やり返さない。

 ヒメナちゃんに気を取られている今なら振り払う事もできるはずなのに、それをしない。


 必死に抑えているような……そんな雰囲気。

 

 ジャスミンお姉さんの優しい目を見ればわかる。俺のことを気遣っているんだ……。


 一歩間違えれば魔法バトル、一瞬でこの部屋は戦場になる。でも、なってない。


 〝脱がしたい女〟VS〝脱がされたくない女〟


 茶番劇で止まってるのはお姉さんのおかげ……。


 なんだか無理をさせてしまっているようで胸が痛い。けど、嬉しい。



 お姉さんとアイコンタクト的な何かを取っていると、ヒメナちゃんが攻めだした。


「え? じゃなくて、アヤノちゃん下着姿のままだよー、いいのぉ?」

「…………よくない。けどそれはヒメナが──」

「わたしがなに? エリリンが脱がせたんでしょぉ?」

「そうだけど……ヒメナが……」


 あのエリリンが押されている。言いたい事はわかる。ヒメナちゃんがキャミソールを持ってロフトに行ったからだよね。おかしいよね。


 てっきりキャミソールを渡しそびれたことを誤魔化そうとしているのかと思ったけど、これは……。


 ヒメナちゃんの底がみえない。なんだろうか。もっともらしい事を言っているような気がする。



「脱がせるだけ脱がせてそのままってさ、やってること最低だよ? 別にアヤノちゃんは脱ぎたかったわけじゃないみたいだし。わかってるの?」

「わかってるけど……」


 ひ、ヒメナちゃん……まさかそれを確かめるためにロフトへ? 自分で脱いだのか脱がされたのか、脱ぎたかったのか脱ぎたくなかったのかを?


 いや、まだわからない。着替えを渡しそびれて苦し紛れに……。……ううん。違う。彼女は散々ふむふむしていた。ふむふむしまくっていた!


 ふむふむが答えだ!! この子は策士だ! 探偵さんだ!


 伊達にふむふむしていなかったんだ! いったいいつからこの未来を計算していたっていうんだ!!




 「アヤノちゃんが待ってるから行ってあげなよ」と、肩に手を乗せ諭し始めた。


 すごい……。俺はエリリンを待ってるなんて一言も喋っていない。どこからそんなでまかせを。


 ……そう言えば四回目のループの時も、ヒメナちゃんに助けてもらったんだ。あの時は権力を振りかざしてた。


 やれば出来る子なのか? そもそもお馬鹿なのか。わからない。わからないよ。


 ヒメナちゃんの底が……みえない。計り知れない!




 ──結局、エリリンは最後までロフトに行ったの(・・・・・・・・)なら渡せば良かっ(・・・・・・・・)たじゃん(・・・・)。とは言わなかった。


 エリリンから着替えのキャミソールを手渡される時「喧嘩は嫌なんだよね……ごめんね」と言われ、胸が締め付けられるのを感じた。


 喧嘩を止めることが良いことなのか悪いことなのか、エリリンの切なそうな顔を見て、わからなくなってしまったんだ。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 何はともあれ、策士なヒメナちゃんのおかげで一件落着。


 お泊まりの日数はみんなの家に二日づつ泊まり、住み心地なども考慮してから再度決めることになった。


 本音を言うとみんなで一つ屋根の下で暮らしたい。


 でもきっとそれは叶わない。


 それに、ジャスミンお姉さんだけちょっと浮いてしまってるんだ。


 10分ループで長い時間を過ごしたから忘れていた。


 事は思っているより深刻なのかもしれない。ロフトに入る前と後では俺とジャスミンお姉さんの関係には天と地ほどの差がある。


 いつの間に仲良くなったんだ? と、不信感を抱かれてるかもしれない。



 頭の中を色々な事が巡っていくけど、考えなければいけないのは〝いま〟この瞬間!! この状況!!



 だ、だ、だ、だって!!

 ロフトに二人きり。下にはもう誰も居ない。みんな帰った。この部屋には俺と美少女だけ……!


 そう、さっそく始まったのです。二日間のお泊まりが!!


 トップバッターは……ロフトの守護者エリリンっ!!


 ドクンドクンドクンッ。ドクンドクンドクンッ。



「アヤノちゃん、すごい脈打ってる。昨日とは比べものにならない。どしたの? どこか苦しいの?」


 胸が、胸が苦しいよ!! 


 男と女が一つ屋根の下で夜を明かす!! しかも二人きり!!!!



「ワオーーーーン!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンクはここ→◆◆◆◆◆◆ ツンデレ聖女の幼馴染は『ラッキースケべ』が大嫌い☆ ◆◆◆◆◆◆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ