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第四十一話 むぅ。ですわ


「アヤノちゃんはロフトへ。ヒメナ? いい?」

「わかってる。任せて」


 えっ。えっ?! 


 ◇


 ──ロフトIN。


 やっぱりここが寝室の役割を担ってたのかぁ。ギャルの匂い。乙女の寝室(ロフト)。ふぁぁぁぁ。


 って、今はそれどころじゃない!!


 うーー、でも!!

 バタバタバタバタ。興奮が興奮がぁ‼︎ ぷはぁ!!



「しーっ。これあげるから静かにしててね」


 まるで子供をあやすかのように。そう、飴玉でも渡すかのように、ヒメナちゃんがひょっこり顔を出し〝ニーハイ〟を手渡してきた。それも片方だけ。──ギャルの寝室に暗雲が立ち込める。



「あ、ありがとう。静かにするね……」


「良い子。無事に事が済んだら……もう片方もあげるからね」



 ──どうしてこうなった? 頭を優しく撫でられながらも素直に喜べない自分が居た。


 なびく美しい銀髪。見事なくびれに大きな胸。輝く綺麗な脚、そして太もも。お姫様にして美少女。



 ……その正体は、やはり馬鹿なのだろうか。




 ◇



 カチャカチャ。カチャカチャカチャカチャ。


「あ、開けて!!」


 女の声? 誰だっけ、この声……。


 ロフトで息を潜めながら聞き耳を立てる。


 ──安定の傍観者。無力。



「なんだー、カシスじゃん。何?」

「何? じゃないですっ!! ヒメナは? ヒメナ見なかったですか?!」


 カシスちゃんか! あぁ懐かしいなぁ。クマゴロウ。



「やっほー!」

「えーーっ?! なんでそこにヒメナが居るんですか?」


 シュタッ。ドンッ。



 何処に居たの? 天井っぽい。



「いや、追ってだったら刈り取ろうかなーーって。で、何しに来たの? 子供は帰る時間だよっ!!」


「めちゃくちゃ怖いんですけど。ていうか、ヒメナの癖に生意気な……探していたのですよ……どこにも居ないから。てっきりエリリンに(ほふ)られてしまったのかと。鎧だけが不自然にベッドにあったので……」



 とんでもない会話だな……。あの鎧。確かに誤解するな。



「おいクソチビ。屠る? ずいぶんな言いようだな?」

「あの、エリリン。今はその乗りキツイです。ごめんなさい」


 やっぱりこの二人は仲が悪い。あの最悪な状況を見て来た身としては、この程度の会話ならホッコリしてしまうけど。

 


「ははーん。詠唱完了した状態で玄関をノックしてたなぁ? とりあえずその魔法消すところからだね!」

「はい。ヒメナにはわかっちゃいますよね。エリリン相手にはこれしか無いですから。非礼を詫びます。ごめんなさい。すぐに消します」


 しゅぅぅぅ。ぽんっ。


 ガチで殺しに来てたのかよ……。カシスちゃん侮れない。




「で、敵意は無いの?」


 マジ声のエリリン。


「ありましたけど、ヒメナが屠られたと思ってたので、無事を確認出来た今、どうでもよくなってしまいました」



 何事にも真っ直ぐ全力。うんうん。



「生きてるから!! ここにいるから!!」


「そうなんです。居るんですよね。とりあえず、灯は消した方が良いですよ。たまたま前を通ったら電気が付いていたので立ち寄りました」



 「「あーっ!」」



 ◇◆◇


「あの、なんでこの子が普通にエリリンの服を着てくつろいでるんですか?」

 


 テーブルを囲い、カーテン越しの僅か過ぎる月明かりで語る女子四人。


 青春かなっ? チームエリリンにカシスちゃんも加わり生存ルートは濃厚確実!



「ダメなの? 口答えするならやっちゃってもいいんだけど?」


 エリリンは絶賛チワワ中のはずだ。しかし、悟られない為なのか、戦いのエキスパートにしてエリートのテンプレのように振舞っている。


 戦えない。今のエリリンは戦えない!! はいここ重要!!



「いや、別にそんなつもりでは……ごめんなさい」


 ちょっぴりビビってる模様。今のカシスちゃんなら赤子を捻るかの如く屠れるだろう。けど、それを悟らせないエリリン。まじパない!!




「それでー、レオとジャスミンは?」


 本題と言わんばかりに続けるエリリンっ!


「ジャスミンはわかりません。別行動で森を探してましたので。レオは酒場に居ましたね。店主曰く、夕方には既に居たとか」


「ははっ。わたしが任務放棄して邪魔立てまでしたってのに、そんな早くから。あははっ」

「エリリン。気を確かに。元からそういう男です。だからこそ、明日にはケロッとしてますよ。今日さえ越えれば何事も無かったかのように明日を迎えられます」


「あんたに慰められるとか、余計に悲しくなるわ」



 やっぱり仲はよろしくない。けど、上下関係的なそれは出来上がってるように見えた。そんな中、俺を助ける為にあの世界では戦ってくれたのか……。


 繰り返した世界の記憶が糧になる。信用出来るかどうか、すぐにわかる。



 ただ単に破滅エンドを回避するだけじゃダメだ。

 チロルちゃんとも約束したんだ。


 〝勇者追放〟


 チャラ男の呪縛からみんなを解き放ち、救いたい。そして……じゅるり。




 ──残すピースはあと一つ。ジャスミン姉さん。

 

 無力なチワワはお祈りをする。今はただ、祈る事しかできない。



 ◇◆



 トントン。肩を叩かれた。誰?

 ヒメナちゃんでした。


「良い子に待てて偉かったね!」


 あ、やばい。これはやばいパターンだ。

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