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第四十話 ぷはぁですわっ


「レオも酷いよねぇ。あたしさ、断ったんだよ? それなのに留守番役にされちゃって。万が一戻って来た際は……って。殺し合いなんてしたくないのに」



 なんだこの空気。悲しい声色で話すヒメナちゃん。下着姿がより一層のリアリティを漂わす。


「この状況じゃ殺し合いとか無理でしょ。一方的にわたしがやられて終わり。信じてたのに」



「そんな事しないよ。したくないからこそ選んだんだよ。どうしてわかってくれないの?」

「あっそ。それで、見極められたの?」


 冷たく切り捨て、本題を突き付けた。

 今までその風魔法で道を切り開いて来た。それが今はチワワ。きっと、余裕なんて無いんだ。


 少し冷たくも見えるが、当然なんだ。

 まんまと魔力切れに追いやられたのは事実。もう、エリリンに選択権はない。どうする事も出来ない。無力なチワワ。


 俺もチワワだから気持ちは痛いほどわかる。

 当事者にして傍観者。戦闘が始まれば何も出来ないのだから。


 ◇


 ヒメナちゃんは静かに頷き俺を抱きしめた。

 湿った肌には温もりと安心がブレンドされていた。あぁ、いい匂だぁ。



「うん。守るよ。全力で‼︎ この子は良い子‼︎」


「……気付くのが遅いんだよっ‼︎ バカヒメナ」



 安心したのか息を深くついた。エリリンの強張った顔つきも柔らかくなり、不満など一切なく晴れやかな笑顔へと変わる。

 

 そしてギュッと抱きついてきた。


 仲良く三人で抱きしめ合う。結束の儀。


 むぎゅむぎゅ。むぎゅぅーー。ぐはっ!!



 ヒメナちゃんはこういう子だ。カシスちゃんの死の宣告を打ち消した事から始まり、どの世界でも唯一ブレなかった。

 


 ──今回のループは本当に生き残れるかもしれない。



 ◇


 ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷワンワンわん‼︎

 ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷワンワンわん‼︎



 ──生き残ったとして、このフルスロットルの鼓動に耐えられるだけの心臓に鍛えなければ……死ぬ‼︎

 

 ◇◆◇◆



 そして人生二度目のぱじゃまぱーてぃー!!


 これからきっと、毎日ぱじゃまぱーてぃー!!


 やはり保身気味なTシャツハーパンのエリリン。

 短パンブラトップのヒメナちゃん‼︎

 大きめなTシャツの……俺‼︎


 着替えを持って来てなかったのでエリリンのTシャツ!! ぷはぁ!!


 ◇


 1k六畳一間ロフト付きに美女が三人!


 エリリンのお部屋は派手さなどなく、落ち着いたシックでモダンな雰囲気だ。隅には勉強机、分厚い辞書のような古書がたくさん。魔法書かな?


 机の上にはメガネが置いてある。


 アンティークな木のテーブルにタンスと棚。

 ロフトを寝室代わりにしているのだろうか。ベッドはない。その為、六畳の割には少し広く感じる。



 ギャルっぽさがまるでない。文学少女のお部屋。



 ──何故、見せパンなのか。少しわかった気がした。


 ◆◇◆



「えっ、なにこれ? す、スゥゥーっと染み込む‼︎ あ、アヤノちゃん?!」


 チロルちゃん直伝シリーズ。

 お風呂上がりのスキンケア!


 中学三年生がお小遣いの範囲内で出来る簡単な事。だからこそ覚えられた!



 化粧水とトリートメント!!


 なのに、エリリンのこの驚き方……まじ?


「あああああ……これは革命だよ。まじヤバすぎッ‼︎」


「そ、そうかなぁ。ここに置いとくから自由に使ってね!」

「だ、ダメ‼︎ こんな貴重品使えないッ‼︎」



 近所のドラッグストアに売ってるメジャー品。それも月間セール中の特売品なんだけどな……。



「エリリンとお揃いが良い。一緒に使いたいの」

「あ、アヤノちゃん……。気持ちだけで十分!」


 いや、使えよまじで!! 特売品なんだよ!! 



「ぐすっ。エリリンとお揃いが良かったのに……。うぅ」

「ちょっ、泣かないで! いいの? 本当にいいの?!」


 ──チャンスッ!!


 ニッコリ笑顔で「うんっ」と頷き、エリリンのお山にダイブッ!! 


「あ、アヤノちゃんッ。もーう!! ──ありがとうね!」


 はぁ。なんて幸せな時間だ。違和感なく自然にお山を我が手中に。最高‼︎




「なになにぃ? そんなにすごいのぉ? じゃあ、あたしもぉ!」


 勉強机に勉強する訳でも無く座って居たヒメナちゃんが、興味を示した!


 ぽんぽんぽんぽんぽんぽん!


「す、吸い込む……か、革命‼︎」


 おまえもかっ!! お姫様が普段使っているような物よりも優れているだと……ジャパニーズドラッグストア恐るべし。



 「「「あはははっ」」」



 楽しくて優しい時間が流れる。違和感のないボディタッチ「えいっえいっえいっ」じゅるり!


 七回目にして幸せいっぱい夢いっぱいの異世界ライフをようやく掴んだんだ。


 ◇


 ──しかし、無情にもドアをノックする音が聞こえる。



 トントン。トントントン。トントントントン。──誰?



 一瞬でマジ顔になるヒメナちゃんとエリリン。




 ──神様、頼むよ。お願いだよ。もう、やめてくれよ……。


 チワワの俺は願う事しかできない。

 幸せが、手のひらから溢れ落ちる最後の瞬間まで。


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