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第三十九話 珈琲ですわっ!


「これ、これ……ほ、ほ、ほ、ほんとにコーヒーの匂いした?!」


 手にはニーハイ、壁ドン。せいぜい半畳の狭過ぎる脱衣所。


 ドンッ。追撃と言わんばかりに放たれたのは〝股ドン〟


 ──逃げ場はなし。



 真剣な眼差しのヒメナちゃん。


 コーヒー街道を突き進むしかないっ‼︎



「とっても香ばしくて……わたしはいい匂いだと思ったけど? そ、それがどうかしたの?」


 クッ。少し噛んだっ。


 


「嘘ッ。絶対嘘。慰めてるつもり? そういうの一番傷付くんだよ? 許さない。馬鹿にして」


 そんな泣きそうな顔して……。

 お姫様だもんな。機会が無かったのだろう。


 ブーツを履いてれば誰にだって起こりうる事。何もヒメナちゃんが特別って訳じゃない。


 ──この気持ち、届けッ‼︎



 俺は取り上げた。ヒメナちゃんからニーハイを。


 そして……自分の顔に……

 ぐしゃ!! ぐしゃぐしゃ!! 押し付けた‼︎



 ──ゼロ距離‼︎ バースト‼︎




 うおぉぉぉぉ!!! クンカクンカ!!!



 すぅぅぅぅ。意識が……遠のく……。

 目の前には下着姿のヒメナちゃん。



 力を貸してわんわん。


 〝はぁぁっ!!〟



〝わんわんモード発動‼︎〟



 ──さぁ、わんわんの時間だ。



 ワオォォォーーーーン‼︎

 



 クンクンクンクンクンクンクンクンクンクン。


 壁ドン股ドンされる中、目の前で俺は……〝それ〟をクンクンして見せた。そして、満面の笑み。



「あ、アヤノちゃん。本当なの? 信じていいの?」


 笑顔で大きく10回頷いた。


 わんわんくんくんくんわんわん‼︎


「あ、アヤノちゃんっ。アヤノちゃん‼︎ 疑ってごめん。許して……っ」


 目を閉じるのと同時にニーハイを鼻から離す。


 わんわんモードOFF。


「ううん。しょうがないよ。これはわかる人にしかわからないから。わたしは単に違いがわかるだけ。この香ばしさは、()きたて、焙煎(ばいせん)だよ。癖になるやつ‼︎」


「嬉しいっ。あ、あ、あたしも‼︎」


 ちょっ?! ヒメナちゃんは勢いよく、ぐしゃ!! っとニーハイを鼻に付けた。



「あたしも……違いがわかる女になる‼︎ うっ」


 泣いてるのか? 


「ぐすっ。うぅ。ごめん。ごめんねアヤノちゃん」



 待ってくれよ。こんな結末は望んでいない。

 これじゃあ、まるで……。



 ダメだっ。コーヒー街道を突き進むんだ‼︎



「なぁんだ。ヒメナちゃんにはまだわからないんだね! いつか……違いがわかるようになれればいいねっ!! クンクン」


 再度、嗅いでみせる。そして、本気の目で、笑顔で見つめる‼︎



「違うの。あたし嘘ついてたの……。許してほしいの。ごめん。ごめんねアヤノちゃん」



 なんだ? どういう事だ? 謝られる言われは無いぞ? むしろ今まで、違う世界だけど助けられてばっかりだった。


「ヒメナちゃんが良い子だって事は知ってるよ。お礼をしてもしきれないくらい。ありがとうだよ」

 


「違うの。あたし……アヤノちゃんの事を殺そうとしてたの……。もう嘘はつけないよ。あたしが守るから。絶対に守るからっ」



 ──タタタタタタタッ。ガチャンッ。



「おい、ヒメナ。今のはなに? アヤノちゃんを殺す?」


 エリリン?! それはもう狂気的な表情で〝ドアドン〟をしてのご登場だった。



 1kのお部屋。そりゃそうだ。聞こえるよね。



「ぐすっ。違うのっ。ぐす」

「全部丸聞こえなんだよ。言えよ?! 信用してたのに……騙してたのかよ?!」


「ぐすっ」



「泣いてれば済むと思ってんの? まさか……魔力切れの今の状態もわざと?!」


 そうだ。勝ち目はない。口では強がっているけど、今ガチでぶつかり合えばエリリンに勝ち目はない。


 ──今のエリリンはチワワなんだ。



「ごめん。エリリンと殺し合いはしたくなかったから。でも、自分の目で見極めたかった。エリリンが守るに値する子なのか否か」


「値って。物じゃねーんだよ?!」


「それが、あたしたちの仕事でしょっ」


「…………」




 エリリンは黙ってしまった。

 そうだ、他の世界なら誰よりも任務に忠実だったのだから。当然の反応だ。



 ◇◆◇


 この話の流れ、まるで……わざと脚をバタバタさせてたみたいじゃないか。エリリンの魔力切れを狙っただと?


 策士。……いや、主演女優賞もんだ。


 薄々勘付いてはいたけど、この子は馬鹿じゃない。


 しかし、コーヒーの下りが全てを否定する。


 ──馬鹿なの? 計算なの? ねぇ、どっち?!


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