第二十三話 でぇーすぅーわぁ?!
前話に続きチロル視点です。
毎週月曜日の深夜0時にバタフライエフェクトの扉は開かれる。扉とは言うけど、全てわたしの中で完結するから姿形はないの。
リアルタイムで〝それ〟を見ているわけではない。
たった一時間のアカシックレコードって言えばわかりやすいかも!
向こうの一時間がこちら側での一週間ってわけでもないの。けれど、事象だけで語るならそうなっちゃうの……かな。一ヶ月弱経ってるから。
そんなだから現実味を帯びないし、わたし視点での結果は部屋から物が無くなる!! それだけなの。
最初は少し奮発しちゃったけど、文句ばっかり。
二回目は意向に沿うような物を渡したけど、やっぱり文句。
三回目は適当に渡してやった。そしたらクンクンしまくっててドン引き!!
もう何もあげたくない。けど、バタフライエフェクトは何か渡せと示してくる。
もうないの。お金もないし。
中学生のお小遣い事情を理解してっ。
……人生のハズレクジを引かされた気分だよぉ。
◇◆◇◆
『そうか。つまり、チロルちゃんが欲しいのは〝お金〟って事だね?』
『うぅ……ぐすっ。そうだよ。どうしてわたしばっかり……』
この人なんなの……次は七回目だって言うのに……これがバタフライエフェクトが選んだ人って事?
『俺はね、六回目を終えて確信したよ。拗らせた彼女たちを導いてあげなければいけないってね。だからさ、BOXティッシュを魔道具として渡されても困っちゃうんだよ〜』
ヤバッ。意識高い!! そして何も言い返せない……。
『いいかい。お金ってのはね、突然舞い込んで来たりはしないんだよ。わかるね?』
ダメ。頑張れチロル! 雰囲気に流されちゃダメ。
年齢を知るや否やコロっと態度を変えちゃって。負けないんだから! あー、もうムカつく!!
『わかりますけど、なにか?』
『俺の全てをあげよう。あいにく現金は殆ど無いけど、パソコン、カメラ、レンズ、フィギュア、ゲーム機にソフト、カードゲームの類を売れば100万円以上にはなる』
ひゃ、ひゃ、ひゃくまんえん?!
でも、それって……。
『それは出来ません。泥棒ではありませんか?』
『チロルちゃん。やるんだよ。やらなきゃお金は入らないよ? 切った髪も戻らない。俺はさ、ウィッグが欲しいんだよ。このままじゃ先に進める気がしない』
ほんと意識高いなぁ、この人。
『この一時間ループを終わらせて、〝勇者を追放〟する。あんな男と居たら誰も幸せになれない。美女の持ち腐れだ!! 全員を幸せに……いや、全員と幸せになりたいんだ。この世界で俺は! ハーレム的な!!』
あー、なんか色々やばいかもぉ。
六回目のアカシックレコードは見たけど、あんな悲惨な終わり方をしてこんな目標に辿り着くんだ……。
ーー変態ってすごい。
ドドドッ
あれっ、時間切れかな?
バタフライエフェクトが反応してる? もうわかんないよぉ。勘弁してー!!
とりあえず次って事だよね!!
『縦巻ロールをやめるのです。勇者レオの好みの女性に。清楚系で尚且つ色気を放つのです』
『またそうやって一方的に切る! チロルちゃんの悪い癖だよ? ねぇ聞いてる?! ウィッグが欲しいんだよ!! 買って来てよーー! お願いだよぉ。ウィッグウィッグ! ウィッグちょうだいよーー!!』
ウィッグを懇願するおじさんってどうなの……。
やだやだ。わたしの都合で巻き込んじゃってるんだけど、ちょっときもいよぉ……。
〝バタンッ〟
うん。大丈夫。扉は閉められた。
また来週!! さすがに六回目ともなるとねぇー。
はぁー、憂鬱な月曜日も終わりなのです!
◇
……………………。
……あれ? この違和感はなに?
テーブルの上に超高級アイスのハリケーンゲッツ?
誕生日プレゼントにお姉ちゃんが30個くれた。
毎日一個。もう全部食べちゃったはず。
…………。
タタタタタタッ。リビングへダッシュ。
冷蔵庫! 冷凍庫! バンッ!!
きゃぁぁぁ!! ハリケーンゲッツがたくさんあるよ!! やったぁぁぁぁ!!
神様、ありがとぉぉ!!
ーーどうやら時間が戻っちゃったみたいです。




