第二十二話 ですわですれーわ!
二章は視点が動きます。28話からは暫く動きません。女神視点で魔道具の真実が露わになります。
パカッッ。カプッ。
「あー、ずるーーい! お姉ちゃんだけずるいよぉ!!」
「お姉ちゃんはバイトしてるから買えるのー! でも、特別だぞ〜? ほれーッ!」
リビングのソファーに座り脚を組むお姉ちゃん。
わたしは床に正座をして両手を差し出す。
「ーーっ」
当たり前のように、当然のようにアイスの蓋をくれるの。
「えへへ〜。やったね! ありがと‼︎」
「はいはい。負け負け〜チロルの甘えたにはお姉ちゃんも完敗だよー」
ペロペロとアイスの蓋を舐める。
「ん〜! おぃちぃ!!」
タダ。無料で食べられてこのクオリティ。さいっこう!! やっぱり夏はアイスの蓋ッ!!
いつも通り、リビングでの日常。
ありふれた光景。どこの家庭にも転がっている当たり前のそれ。
でも、わたし、ちひろ、ううん。ちひロール。
うん、チロルには誰にも言えない秘密があったりしちゃうのです。
そう。なのです!! なのですよ?
ーーだから、毎週月曜日はちょっと憂鬱。
◇
正直、ほとんどの事は思い出せていない。
五回目で自分の名前がわからなくなり、七回目で完全に自我を失った。
残ったのは〝想い〟だけ。
漠然とした〝想い〟だけなの。
その想いを15歳の誕生日に思い出した。
発動し続ける禁忌の魔法 《バタフライエフェクト》についても。
だからこそ、あっちの世界の事はどーでもいい‼︎
転生と言うのか前世と言うのか……。何も知らない状態で産まれて15歳になったから、なんの思い入れもないの。
だってここは日本だし、令和だしっ!!
それでも〝想い〟はすごくて……。スルーは出来ないの。ほんっと最悪。ーーなのです。
◇◆◇◆
そして、子供部屋おじさんの家に行く事になる。全てはバタフライエフェクトが示す通りに……。
あっちの世界のゲームまで作っちゃうんだから、その凄さは察してください。
◇
深夜0時。
うんうん。寝てる寝てる。さぁ、言質を取るの!!
「ねぇねぇ、おじちゃん。起きて? 起きて起きて〜」
跨ってゆっさゆっさしてみる。大丈夫、バタフライエフェクトは安全だと示してる。ゆっさゆっさ。
ゴシゴシ。
「ん〜? えっ?! あぁおやすみ」
「ねぇねぇおじちゃん、もしもぉ、おっぱいボイーンの16歳くらいの女の子に生まれ変われるとしたらどうするぅ?」
ゴシゴシ。
「ん〜、ごちそうだなぁ」
「そこは異世界で、一時間しか生きられないとしても?」
ゴシゴシ。
「んー、ご褒美だなぁ。我々の業界では……」
「言質取りました。あなたの願い聞き届けます」
ちょっと、ばっちぃけど人差し指をおじさんの唇に……。
「おやすみぃ……」スヤスヤァ。
あっ、ムカつく! 決めポーズしたのに!!
◇◆◇◆
『て、おい! てめー!! 詐欺じゃねぇか?!』
『縦巻ロールをやめるのです。勇者レオの好みの女性に。清楚系で尚且つ色気を放つのです』
『き、聞いてる?! 一方的に語っていきなり六回目はキツイよ? ねぇ、チロルちゃん? ねぇチロルちゃんって呼んでもいいの?! ラストJCってガチ?! それで君はボイーンなの?!』
すごい。もう六回目だと言うのに何の変化もない……。隙あらばわたしとも仲良くなっちゃおうとするその姿勢、変態って凄まじいッ!
あっ、今回は魔道具どうしよう。
はぁ。どーしよっかなぁ。
うー、勿体無いもったいない! あげたくないよぉ。
学生はお金がないのぉぉぉ!!
アイスの蓋がご馳走のチロルを虐めないでッ!!




