第二十一話 さよならですわ。
もう止まらない。血なまぐさい戦闘が始まってしまった。
こんなの見たくない。美女同士の殺し合いなんて見たくないよっ。誰か……誰か……止めてよ。
ここでようやくレオ様が動きだす。真っ直ぐふかふかベッドに向かって来る。
頼りない姿を知ってしまったけど、なんだろ……それでもやっぱりドキドキしちゃうっ。単純だな。
◇
「許して欲しい。命を取りに来た身として、いたずらに時間を掛けてしまった。内輪揉めまで」
あっという間に迷いなきを剣を突きつけられちゃった! あぁ、レオ様。きゅんきゅんが治らないっ。
涙を拭う手は確かにしっかりと強さを感じるもので、直前までサンドウィッチを呑気に食べていた男とは思えない程だった。
わたしは幸せに、レオ様に抱かれて……死ぬ。
「そんな嬉しそうな顔をしないでくれ……。俺はクズだ。こんな選択しかできない自分が情けない。うぅ」
あれ、弱音? きゅんきゅんモードが……。
「お願い。早く殺して。はやくっ!!」
「……いつからこんな事になってしまったんだろう」
ねぇ、ほんとにやめて? 過去を振り返らないで? とっとと殺せーー!!
「最初はジャスミンだった。美しくて、おっぱいも大きくて。一目惚れだった」
ガン萎えだよ。きゅんきゅんモードおわた。
「次はエリリンだった。とにかく元気で強引な子でな。一目惚れだった」
えっ?
「その次は姫。身分差って言うのかなぁ。一目惚れだったよ」
はい?
「最後はカシス。あの子は従順なんだ。でも、今思えば一目惚れだったんだろうなぁ」
おーーい!!
一目惚れし過ぎだろうが!!
「俺には誰か一人なんて選べないんだ。そんな俺を見かねてか、ここ暫くはいつ噴火してもおかしくない緊張状態が続いている」
なるほどね。それさ、今、噴火しちゃってるんじゃないの?
「君になにを言ってるんだろうな。俺はもう、限界なのかもしれない」
これは……。勇者としての顔ではなく、一人の迷える子羊。恋する男の顔だ。贅沢過ぎる悩みだろう。でも、恋の悩みに変わりはない。レオ様の顔が全てを物語る。
ガチで悩んでいる。下手したら闇落ちルートもありそうな、ガッチガチのガチのやつだ。
このパーティーはギリギリ首の皮一枚だったんだ。
掛ける言葉が思い浮かばない。
五回目の一時間ループ。六回目七回目と今後繰り返しても攻略しているビジョンが全く見えてこない。
むしろ、今、この瞬間、心の内を何故か明かしてくれた今こそが最大のチャンスなのか?
マスコット系幼JKでは無く、しっかりと清楚系美女になれていたら、破滅エンドを回避出来たのでは?
そんな事を考える間に、剣は胸に突き刺さった。
エリリンに背後から刺されたお粗末な一撃とは違う。
しっかりと、すぐに命を刈り取ってくれる優しい一刺し。
「すまない。ゴクアーク。どうか、来世では幸せに」
耳が幸せ。ボーナスステージだぁ。
ーーありがとう。
短いですがここまでを一章とします。
次話、二章は視点を変え天の声、女神的なあの子からのスタートです。
引き続きお付き合いいただければ幸いでございます。




