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第二話 で、で、ですわっ!!


 スリスリ。むにむに。む……に……むにむに‼︎


 切られた箇所が元に戻ってる。血に染まったはずのシーツも真っ白だ。


 二回目って事でいいのか……。

 ははっ。まるでゲームだな。セーブポイントからのReスタートか。一時間ループとでも言っておくか。はははっ。


 って、此処ゲームの中じゃん!


 よしっ。


「カスタムコマンド・オープン‼︎」


 …………。あれ?


「ステータス表示‼︎」


 …………。んん?


「スキル発動‼︎」


 …………。んあ?


「俺のターン。ドロー‼︎」


 …………。でしょうね。



 何も表示されない。何も出てこない。

 ゲームの中っぽいがゲームではない。


 地に足つくこの感覚。まぎれもなくリアルだ。

 ふかふかベッドの心地良さ。完璧にリアルだ。


 そして多分、無能力。

 か弱い普通の女の子。


 む……に……むにむに……。

 むにむにむにむに……むに。


 ──けしからん。



 こりゃ、命乞いするしかないよ。はははっ。


 あはははは。


 ◇


 たったの一時間しかない。


 化粧と髪型で人は変わるとTVで見た事がある。

 幸いにもデブではない。痩せる必要は無いんだ!

 

 たった一時間と思ったが、イメチェンするには十分な時間ではないか。


 悪役と言えど辺境伯の令嬢様だ。この屋敷にはメイクアップアーティスト的な、なんかそう言った感じの人材、逸材が揃ってるだろ!

 なんちゃらコーディネーターとかなんかそう言った感じの……アレだ。うんアレ。



 俺はふかふかベッドに座ってるだけで良い。メイドやら執事に可愛くしてもらう。


 うん簡単! いける気がしてきた!!



 清楚系美女上等!!

 死亡フラグ回避。破滅エンドすらも回避してやる!



 ◆◇


 パンッパンッ。


「セバス〜セバスは居るかしらぁ〜?」


 お上品に手を叩き、お上品にセバスを呼んでみた。


 

 〝スッ〟


「お呼びでしょうか、アヤノ様」


 何処からともなく現れ、ふかふかベッドの前に跪く。

 

 そうか。ミニスカメイド服のままか。

 本当に二回目なんだな。セバスの情けない服装が全てを物語る。なんともまぁ……。


 ……。すまん時間が無いんだ。今回は着替えさせてあげられない。許せ。



「あらあら、お早い登場だこと。さすがはセバスね!」

「勿体なきお言葉」


「髪のセットやお化粧をしたいの。さっそくで悪いけど専任の従者を呼んで来なさい」


「…………? いつもご自身でやられてるではありませんか」


 ふーん。まじか。そうきたか。それなら、



「わたくし、清楚系美女になりたいの。詳しい者を連れて来なさい」


 ……………………。


「ですわ!!」

「あの、アヤノ様。せいそけいびじょとは?」


 このジジイ、正気か? いや……まだだ!



「セバス、この屋敷の中で女子力が高そうな子を数人連れて来なさい」


 ……………………。


「ですわ!!」

「あの、アヤノ様。じょしりょくとは?」


 く・そ・じ・じ・い…………。


 落ち着け。……万能な執事だとしても爺さんだ。そして異世界。言葉を選ばなかった俺に落ち度がある。




 ──アヤノ・ゴクアークになったせいか、不思議な感情が流れ込んでくる。本来の俺は御老人を糞爺などとは思わない。


 先ほどレオに耳打ちされた時、まんざらでもない気分になったのは恐らくコレと同じ原理だ。


 男の俺が、野郎に耳打ちされて喜ぶなんてありえない。


 はずなのに、思い出すと胸が……鼓動が……止まらない……きゅんっとなる。


 きゅんきゅんっと!! レオ様きゅんっ♡


 

 や、やめろーー!! 出てくるなーー!!

 まさかこれは……〝もう一人の俺〟って奴か? おいおい嘘だろ。


 もう一人の俺ってのは強くって格好良い闇の力的な何かが一般的だ。


 ボーイズラブなんて絶対にダメだ。認めない。認めないぞ!!


 ──きゅんっ。きゅん♡ レオさーまきゅん♡


 ……………………。うげぇ。



 しかし、今の俺は女。つまりは男にきゅんきゅんするのが道理。

 …………正当化しようとするな!

 勘弁してくれよ、まじで。



 きゅん。うげぇ。きゅん。うげぇ。きゅんきゅん。うげうげぇ……。



 ──ハッ、悩んでる時間はない!



「セバス! おしとやかで美しいメイドを連れて来るのよ!」

「ハッ、かしこまりました」



 〝スッ〟


 セバスはくるりと回って一瞬で目の前から居なくなった。華麗にひらりと舞うミニスカの内側は見えそうで見えなかった。

 ミニスカの着こなし方を熟知している。

 どれだけの時をその姿で過ごしたのだろうか。考えると涙が出てきそうだ。


 


「はぁーーーーっ」


 ふかふかのベッドの上で大の字になって上を見上げた。


 一時間でイメチェンかぁ。


 専任のコーディネーターもメイクアップアーティストも居ない。キツイなぁ。


 この世界のメイクってどうなってるんだ?

 この縦巻ロールはどういう仕組み?

 コテは無いだろうし。と、なると……。


 どうやって真っ直ぐにするの?


 考えれば考えるほど不安になる。


 今はただ、セバスを待つ事しかできない。




 ◇◆


 どれくらい時間が経ったのだろうか。


 ただでさえ時間が無いと言うのに、セバスはまだ戻って来ない。




 トントンッ!


 やっと来た!! セバスだな!!


「アヤノ様、至急お伝えしたい事が」

「セバスね。お入りなさい!」


 ガチャンッ。


 あれ? セバスだけ?

 おしとやかな美しいメイドは? 連れて来なかったの?


 なにしに戻って来たんだよ! 

 おいいーーセーバースぅぅ!!



「勇者が乗り込んで来ました。御覚悟を」




 …………………?


 おまえ今まで何してたの?



 待てよ。待て待て。もう終わり?


 嘘だろうが!!!! 




 ──どうやら、また……死んでしまうみたいです。

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