第十九話 くんくんですわっ!
クンクンクンクン。すぅぅぅぅぅぅーーーー。
無臭じゃない……けど、良い匂い!! うん。これ癖になるやつ。クンクン。
ねぇ、待って! そうじゃないのっ!!
この意味深な自称魔道具は何?!
しょ、消臭スプレー?! ドクンドクン。
ど、どこ? どこが臭いって言うのっ?!
えっ、ここ? クンクン。
ねぇ、ここ? クンクン。
じゃあ、ここ? クンクン。
それとも、ここ? クンクン。
待って待って、アヤノ臭くないよ?!
良い匂いだよ?! ど、どゆこと?!
も、もしかしてこのふかふかベッド?!
寝ている間におよそ200mlの水分が失われるとも言われる……。アヤノちゃんの水分が……。
クンクンクンクンクンクン。すぅーー。合格!
〝バサッッ〟 シーツかな?
クンクン。すぅーー。合格!
まっ、まさか……あの女神的な奴……。適当に意味も無く〝マドーグ〟って言って渡したの?!
しかも、なに! この花がらのヘアゴムは!
ど中古じゃない! 誰の? ねぇ誰の?!
クンクン。すぅーー。あっ、女子高生の匂いだ。
んな訳あるか! 馬鹿かっ!! でも、あながち……。
ほんと、あの女声……誰だよ!! 口調も定まってないし、何処と無く感じ取れる無理してる感。
あれは女神じゃない。神とか天使とかそういう類のそれじゃない。まるで人間的な……。
自分の部屋にある物を、それとなく二つ三つ選んでる? 残量1割。もう捨ててもいいかな? みたいな物を選んでる?
けど、消臭スプレーのボトルは返してね。的な?
あー、なんか、そんな感じがしてきた。しっくりくるよ。
一回目と二回目は怪しさ満点。でも実用性はあった。
けど、今回は怪しさ満点、実用性はなし。
……………………。だから何っていう。知った所で、どうする事も出来ない。
でも、次死んだら必ず問い詰めてやる‼︎
トントンッ。
あっ、セバスアラーム。嘘でしょ? クンクンしてただけだよ? それでもう、その時を迎えてしまうの?
「アヤノ様、至急お伝えしたい事が」
嘘よ……クンクンしてただけでそんな……。
「お、お入りなさい」
ガチャンッ。
「勇者が乗り込んで来ました。御覚悟を」
おわた……。
意味もなく、意味深に、こんな物を。消臭スプレーなんか渡すからこんな結果を招くんだ。
あ、あの野郎……。
◇◆
前回と同じルートを辿る為、とりあえずセバスを逃す。
さぁ、ループを始めようか!!
◇
〝バタンッ〟
「ゴクアーク! 追い詰めたぞ!」
この瞬間だけはレオ様に殺されても良いかなぁって思っちゃう。
〝ドアドン〟的なやつ? 胸がときめいちゃう。けど、だめ。
目的は決まってる。この世界でやりたい事が出来たんだ!
よしっ。なぞる! 刺される直前までをなぞる。簡単な事‼︎
ーーと、本気で思っていた。
◇◆◇◆
「ど、ど、ど、どーしたんやアヤノちゃん?! なんか気に触る事でも言ってもーたか? すまん。この通りやで?!」
ーーキツイ。ツライ。心を計算に入れてなかったんだ。




