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第十七話 ですわ。…………。


 チーーーーン。


 この言葉に尽きる。暫し沈黙した後、何事もなかったかのように、時は動きだした。


 三人は一触即発。


 

 当然、レオ様は焦る。勇気を振り絞って覚悟を決めたのだろう。

 そして次の手段に乗り出した。

 行動出来る男、この場を納めようとするその姿勢。いい男だ。遅過ぎるけど。


 あっ、剣を抜いてこっちに向かってくる。


 なるほど、俺を殺して場を収めるのか……。

 初回、二回目のループは苦痛なき死を与えてくれた。安心して死ねる。いいよレオ様。はやく来て。



「姫。失礼します」


「えっだめっ!! この子にはもう……殆ど時間がないから」


「この場を静める手段が他に思い浮かびません。申し訳ございまーー」

「ミルフィーユ王国、第三王女のわたくしが命じます。そこに、膝まずきなさい。レオ」



 えっ、なになに?!



「クッ……。ハッ」


 レオ様跪いちゃったよ?!



「ごめんねアヤノちゃん。最後くらい、静かに逝きたいよね」


 この馬鹿……頭を撫でる手が震えてるじゃないか……。


 ヒメナちゃんは目を瞑って大きく息を吸い込んだ。そして目をゆっくりと開く。


「みんなよろしくて? この子にはもう時間が残されておりません。よって、勅命(ちょくめい)は遂行したとみなします。これ以上、無駄な争いを続ける事は許しません」



 ーー跪くレオ様を見れば、状況は誰にでも理解出来るだろう。


「ちょっとちょっとぉヒメナ〜! それはズルくなぁーい?」

「黙れよエリリン」

「あっ、またタメ口。絶対殺すクソカシス!!」


「二人ともお黙りなさい!」


「はーーい」

「はい」


 返事こそしたがエリリンは納得いかない様子だ。


「職権乱用はんたーーい」


 ギロッとエリリンを睨みつけるヒメナちゃん……。マジ顔だ。


「うそでーす……。ちぇー」


 箒で飛ぶのを辞め、ゆっくりと床に降りてくる。


 ◇◆


 ヒメナちゃんの手は震えっぱなしだった。顔を見ればわかる。恐怖などで震えている訳ではない。


 俺は震える手をギュッと握った。ーー大丈夫、大丈夫だよ。

 きっとこれには意味がない。今、ヒメナちゃんに何かを与える事は出来るかもしれない。けど、次には何も繋がらない。むしろマイナス。


 いっそ、エリリンとカシスちゃんが争って色々な会話を聞いたほうが次には繋がる。でも、割り切れないよ。そんな簡単な事じゃないんだ。



「レオとエリリンは隅に下がりなさい。カシス、ジャスミンはベッドへ」



 なんだよこれ。どうしたって言うんだよ。


 そうか。今回は3人のウィッチに見送ってもらえるルートだったのか。死にたくなくなっちゃうじゃないか。罰ゲームかよ……。



「ほら、カシス。クマゴロウ直しておいたよ!」

「ありがとう。ぐすっ」



「ヒメナ。無理してるでしょ? 王族である事を最も嫌ってるあなたが……」

「いいのジャスミン。今はいいの」

「馬鹿ね。でも、ありがとう」


 ◇


「なんやなんやアヤノちゃん!! 隣町に美味しいパンケーキ屋さんもあるんやで? まだ逝くにはちーーとばかし早いんちゃうか?!」


 クマゴロウ……カシスちゃん……。


「うん。食べたかったな」


 あれ、喋れる。どうして? わんわんモードは?


「じゃあ食べよう!! しょーがないから奢ったる!! なんなら食べ放題やで」


「ぐすっぐす……ひっく……」


 カシスちゃん。この距離で泣いちゃダメだよ……クマゴロウは元気にしてるよ……。




 あーあ。死にたくないなぁ。死にたくないよ……。



「まだ……死にたくないよ……」




 ヒメナちゃんに膝枕をされ、右手はジャスミン姉さんのお山とお山の間に、左手はカシスちゃんのほっぺたを。クマゴロウは何故か谷間に挟まっていた。



 〝わたし〟は死んだ。静かに眠るように。痛みなく。

 きっと、幸せに死んだ。





 

 ーーかくして、四回目のループは終わった。


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