第十三話 ですですくまさんですわ‼︎
ふかふかベッドに座る俺ことわたし、そうアヤノちゃん。
ベッドの下で身構えるカシスちゃんとヒメナちゃん。と、宙に浮かぶ片目眼帯の変な熊。
レオ様は2人を必死に宥めてる。けど、ダメみたい。
ーーあっ、来る。変な熊がこっちに来る?!
「君が渦中のアヤノちゃんかいな!」
えっ、何この熊。めっちゃ馴れ馴れしいんだけど……。
「まぁ、あれやな。あれ。あんさん死ぬで! 確実に」
それさっき、ヒメナちゃんにも言われました。
「うん。アヤノは死んでもいいの。だから争いを止めてよ熊さん」
「はぁ。ワイの事はクマゴロウって呼ぶんや!」
「く、クマゴロさん?」
「ノンノン。クマゴロウや!〝ウ〟‼︎ それからさん付けも禁止や!」
「あっ、はい。クマゴロウ。ごめんなさい」
「ええんやで。アヤノちゃん」
あっ、やばい。とってもめんどくさい。なんなんこの熊。
人差し指を上に突き出し「チッチッチ」って感じの喋り方。宙に浮いてるからウザさ二倍!
この熊、わたし好きになれない‼︎
「やっぱりアレやなぁ。悪のオーラが感じられないなぁ。カシスちゃんも気付いたんやろなぁ」
「悪のオーラ?」
「アヤノちゃん、この戦い止められるかもしれへん。ふかふかベッドの上で良い子に待っとるんや」
あっ、なんだろう。うざいけど良い熊だ。結構めんどくさいタイプ。うざいのに嫌いになれない。いっそ嫌いになれたらラクなのに! ってやつ。
◆◇
「レオはーん‼︎ タイムタイムー‼︎」
「……。わかったよクマゴロウ。まったく君ってやつは」
めっちゃ仲良さげ?! 一触即発のこの状況で「タイム」が有効なの? クマゴロウ、あんた何者?!
「んで、カシスちゃんの見解はどうなんや?」
「うん。可愛くなりたいって思ってる女の子に悪い子はいない。あの下手くそな等身大の三つ編みを見て全てわかった」
「さすがはワイの見込んだ女! カシスちゃんや! 目の付け所がシャープだねぇ‼︎」
「く、くすぐったいよぉ。クマゴロウやめて‼︎」
なんだろう。嬉しいような悲しいような……。しかも熊にだけはタメ口なんだ。仲よさそうだなぁ。
「ちゅーわけで! ジャスミン姉さんの出番や!」
この熊、よく動くなぁ。今度はジャスミン姉さんの所へ飛んで行ったよ。
「な、なによクマゴロウ……」
少し怯えてるのか? あのお姉さんが?
「なんや、またおっきくなったんちゃうかぁ? ツンツン。ツンツン」
「もうっ、やめなさい。怒るわよ……」
えっ、弱気?! 振り払わないのか?
「んで、頼み事があるんや。ええか? ツンツンツンツン」
「な、なによ……ツンツンしないでぇ……」
「そこに居るアヤノちゃんを神秘の泉でジャッジにかけてくれ」
「…………。ツ、ツンツンするの辞めてくれたら、い、いいわよ……」
「ほいなら、やーめた! ツンツンはやめやめ! ちゅーわけで、頼むで姉さん!」
「もうっ、しょうがないわね!」
な、なんという奇策な熊。ツンツンする事で交渉を優位に進めた! そして交渉材料に〝ツンツンを辞める事〟で、等価交換までをも演出した。
こ、この熊はやばい。交渉のプロだ‼︎
この熊なら……もしかしたら‼︎




