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第一話 ですわっ!


「う……そ?」


 鏡に写る姿に唖然。にわかに信じ難い。


 目が覚めると〝女〟になっていた。



 ウザいくらいの縦巻きロール、金髪、ケバい化粧。

 ド派手な真っ赤なドレス。


 そしてこの乳。けしからん!!



 ま……しゅ……ま……ろ……。

 む……に……むに……。



 ──けしからん。



 ◆


 ふむ。どうやら俺は〝アヤノ・ゴクアーク〟になってしまったようだ。


 理解するのに1時間近く掛かった。

 要するにここはゲームの中。しかも流行りの悪役令嬢ってやつだ。

 

 事もあろうかTS転生。──まじか……。


 ◆◇



 100畳はありそうなこの部屋。

 真っ白なタイルが床一面に広がっている。幻想的な空間。

 


 俺は今、隅に置かれるふかふかベッドの上だ。


 そのベッドを挟むように扉が二つ。通路に繋がる出入り口とトイレ。


 大きな鏡、棚が三つ。


 こんなにも広い部屋なのにコレしかない。

 6畳あれば事足りる。不思議な部屋。




 〝トントン〟



 ん? 誰か来たのか?



 〝トントン〟



 おいおい、誰だよ……。



「アヤノ様、至急お伝えしたい事が」


 じじいの声だな。執事ってやつか。


「ふむ。どうした」

「勇者が乗り込んで来ました。御覚悟を」


 は? はぁー? 待って。理解出来ない。え? 待って? 御覚悟? 死ぬの? もう死ぬの?!



「爺や! 入れ! その話、もっと詳しく」


 …………。


 …………。



 反応が無いな? 何故?



「アヤノ様、言葉遣いが、、その」


 下品だって言うんかよ? 糞爺がァッ!!


「ですわ!」

「はっ、失礼いたします」


 〝ガチャン〟


 とりあえず〝ですわ〟と言っておけば上品っぽい説、この世界でも有効か。ホッと一安心。



 こいつ、知ってるぞ。白髪にキリッとした目付き、ガタイの良い爺さんにして、服装はミニスカメイド服。セバスだ!!


 可哀想に。アヤノにメイド服を着るように指示されているんだよな確か。


「おいセバス。タキシードに着替えてくる事を許可しよう」


 …………。



「あー、もう! ですわ!!」

「よろしいのですか?」

「いいわよ。このアヤノが許すわ!」

「ありがたき……。最後をタキシード姿で迎えられる事、うぅ……感謝の極み」

 ミニスカメイド服姿が嫌だったのか、セバスは泣き崩れてしまった。じじいの嬉し泣きってのは心に来るものがあるな。──俺、いい事、しちゃったな。


 しかし、……最後だと? アヤノが勇者に殺されるのは物語の終盤だったはず。もう、終盤なの? さっきの御覚悟って、やっぱり『死』の覚悟って事か?



 ──フッ、笑わせる。


 こんなアホみたい理不尽、ある訳ないだろ!!



 ◇◆◇◆◇◆


 ──はい。ありました。


 もうね、あっという間だったよ。


 ドーン! バコーン! ズドドーン!

 五分も経たずに屋敷は壊滅。

 



「ゴクアーク! 追い詰めたぞ!」

「楽勝ね! レオ早くやっちゃってぇ!」

 勇者レオに4人のウィッチ。ハーレムを気取るアホみたいな勇者に追い詰められてしまった。



 セバスは瞬コロだった。はっきり言って次元が違う。戦うだけ無駄。


 死んだらどうなるんだろ? あーあ。もう終わりかぁ。


「お嬢さん。悪く思わないでくれよ」

 勇者レオの耳打ち。耳がゾクッとする。こいつはイケボだぁ。あぁ、なんて言うか悪くないな。耳が幸せ。


 耳打ちに浸って居た刹那の時間。

 スパァーーーーン。一閃。目にも見えない速度で俺は切られてしまった。


 まんざらでも無い最後だった。悪くは……無かった。


 けどさぁ……。



 死に行く中、心の中で叫んだ。

 こんな理不尽ありかよ。神様、居るなら返事してくれよ。この世界に来て1時間しか経ってないぞ、もう終わりかよ?!




 『……はぁ。次は上手くやりなさいよ?』



 誰かの声が聞こえる。えっ? 誰……?



 『縦巻ロールをやめるのです。勇者レオの好みの女性に。清楚系で尚且つ色気を放つのです。そうすればきっと殺されないわ』


 何言ってんだこいつ!!



 ◆◇◆◇◆◇


 ハッ!!!! 生きてる。生きてるぞ!!!!




 ──ここから始まるのは命乞い。勇者レオ好みの女になる以外、助かる道はないようだ。


 なってやるぞ! 清楚系お色気美女に!! 待ってろレオ!!

第一話をお読みいただきありがとうございました。


新作の投稿もしておりますので、機会があればお読みいただけたらと思います。


タイトル:ツンデレ聖女の幼馴染は『ラッキースケべ』が大嫌い☆


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