07
【薬草発見】が活躍します。
「あら。メリザンド、そこにもヒール草があるわ」
お、マジですか。
ほんとに便利ですね、そのスキル。
普通に歩いていたら雑草と見分けがつきませんよ。
エルダートレントとの相性が特別良かったのか、それとも【薬草発見】のスキルがただ凄いのか。
……まあどっちでもいいか。
検証やなんかはいずれ攻略サイトとか出来たら見ますけど、しばらくは手探り状態ですよね。
おっと、魔物です。
あれは……ウォーキングツリーですね。
マーガレットの下位互換というか、圧倒的に弱くしたものというか。
3体で出現したのは褒めてあげたいですね。
なにせ獲物取り合いでウチの子たちが喧嘩しないで済むので。
「ひとり1体ですからね?」
念を押すセアカスパイダーのシャルロット、粘糸でいきなり自分の獲物を確保。
そして糸で囚われた歩く木にかぶりつきます。
マーガレットは悠々と鋭い枝で格下をロングレンジから串刺しです。
意外と射程が長いんですよね、あの枝。
ヒルデガルドは牙爪爪尻尾の怒涛の連続攻撃です。
大人げないというか、まあこの辺りの魔物が弱いのはもう仕方ないのかな。
早めに経験値を稼いで薬草を集めたら、次のダンジョンに行くのも悪くないかもしれませんね。
彼女たちには歯ごたえがなさすぎて退屈そうに見えてしまいます。
《「デイリークエスト:魔物を30体倒そう!」をクリアしました!》
《報酬として500Gを手に入れました!》
ああ、遂に30体を倒しましたか。
このままだと私がトドメを刺すのは難しそうなので、シャルロットにお願いして粘糸で動きを止めた魔物に魔法を撃ち込むことにしましょう。
無事に「プレイヤーが魔物にトドメを刺そう!」をクリアし、マナ晶石を50個入手しました。
手持ちのマナ晶石はこれで400個です。
ダンジョンを出たらまとめて引いておきましょう。
でも素材やら何やら、幻獣が出るわけでもないガチャなので燃えませんねえ。
「メリザンド。どうやら休憩できそうな場所に出ましたが」
「あらほんと。ここでなら安全にログアウトできそうよ?」
「えー。まだ遊ぼうよ、メリザンド」
シャルロットが見つけたのは、野営の跡地でした。
あからさまですが休憩ポイントですね。
とはいえ、みんな元気が有り余っている様子。
ここで休憩する必要は感じられません。
じゃあ先に進みましょうか。
「やった。メリザンド大好き」
はいはい、私も好きですよヒルデガルド。
進むこと30分ほど。
幾多の戦闘と薬草採取を終え、変化が現れました。
森が濃くなり始めたのです。
相変わらず広い獣道に沿って歩けますが、木々の密度が増し、地面の草も心なしか元気になっているような……。
「メリザンド、毒消し草よ」
おお、ということは中層に入ったというわけですね。
確か薬草学の先生が、毒消し草があるのは中層以降だと言っていました。
しかしここまでポーションはわずか2本しか消費してません。
毒消し草が出てきたということは、この先には毒をもった魔物が出てくるということでもあり、難易度は上がるのでしょう。
苦いからとかでなく、単純に【調合】を試したいから解毒ポーションにしたいですね。
これも葉っぱを採取します。
《「トロフィー:毒消し草の葉を入手しよう!」をクリアしました!》
《報酬として『解毒ポーションのレシピ』を手に入れました!》
おっと、これも入手と同時に手に入るものでしたか。
よしよし、じゃあ出来るだけこの辺りから毒消し草を集めるようにして、毒を使う魔物が現れた辺りで一度、ダンジョンから出ましょうかね。
◆
なんということでしょう。
森はどんどん深くなり、しかし未だに毒をもつ敵が現れません
初心者ダンジョンに毒を持った魔物がいないのでしょうか。
帰り時が分からなくてちょっと困りますね。
相変わらずウチの子たちはこの辺りじゃ無双状態で、出てくる魔物が哀れになるくらい楽勝です。
私、【MP増加】なんて取ったのに、未だにトドメを刺すクエスト以外で魔法を撃つ機会がありません。
しかし所持品欄が凄いことになってきましたね。
薬草はかなり貯まってきましたし、魔物のドロップアイテムも結構な量です。
早く街に戻って整理したいですね……。
「誰か、助けて!」
おっと、唐突な助けを求める声。
これはイベントの予感がしますよ!
みんな、助けに行くよ!
「分かったわメリザンド」
「あちらから声がしましたね」
「魔物かな?」
ヒルデガルドが戦闘大好き脳筋娘に育ってますけど、大丈夫でしょうか。
高度な知性、なんですけどね。
おっと、戦士風の女性と生徒が大きな蜂と戦っています。
あれ、戦士風の女性とな?
……ああ、あれはホムンクルスか。
なるほど彼女はホムンクルス研究課の生徒なのでしょう。
おっと、助けを求めていたのでしたね。
3人とも、あの蜂をやっつけて!
「速いもの勝ちだから!」
「あらヒルデガルド。いきなり飛び出すなんて、品がないわ」
「どうせなら私の【粘糸】を待って欲しいのですけど」
ガリガリ、バリ。
ヒルデガルドが引っ掻いて噛み付いて、蜂の魔物キラービーは倒れました。
あの、大丈夫ですか?
「あ、ああ。はい。助けてくれてありがとう。私はホムンクルス研究課のカロル。凄いのね、あなたの幻獣。キラービーがあっという間に倒されちゃった」
いえいえそれほどでも。
「それで、頼みがあるんだけど、いいかな?」
なんでしょう?
「実はこの先にキラービーが巣を作っているのを見てしまったんだ。初心者ダンジョンにキラービーは確かに生息しているけど、巣ができたら沢山のキラービーに悩まされることになっちゃう」
ほうほう。
「だから、私と一緒にキラービーの巣を破壊するのを手伝って」
え、それは私たちでやるんですか?
「そうよ。巣が完成したら厄介なことになっちゃう。今ならまだ巣は未完成だから、ふたりでならなんとか壊せると思うの」
えー。
さっきキラービー1体に苦戦していたのに?
「そんなこと言わないで……お願い」
《「ミッション:キラービーの巣を破壊して」が発生しました!》
ミッション?
クエストとは違うんでしょうか。
ヘルプで調べてみましょう。
……ふむ、ふむ。
あんまり違いはなさそうですね。
依頼人がゲームシステムか、NPCかの違いくらいのようです。
とにかくイベントなら受けるしか無いでしょう。
分かりました、一緒にキラービーの巣を破壊しましょう。
《「ミッション:キラービーの巣を破壊して」を受領しました!》
「良かった。じゃあ一緒にパーティを組もう」
……え?
それってもしかして、ソロじゃなくなるから、出せるパートナーが1体になるのでは?
「うん、そうだけど?」
何を平然と……それは弱体化したも同然じゃないですか!
ああいや、課金しないプレイヤーからすれば単純に戦力アップなのか。
うう、こんなことならひとりで巣を破壊しに行くべきでしたかねえ。
イベントだからそんなことが出来るか分かりませんが。
ねえカロル、この話、なかったことにはできない?
巣なら私がひとりで破壊しに行くから。
「そんな無責任なことはできないよ!」
いや、そういう問題じゃ……ああもういいですよ分かりましたよ。
じゃあヒルデガルドを残してマーガレットとシャルロットを送還しましょう。
【再生】のあるヒルデガルドが単独なら一番、安定した強さを持っていますからね。
《カロルからパーティ申請がありました》
はい、受けますよ。
《カロルとパーティを組みました》
「リーダーは君に任せるよ。ええと君はメリザンドっていうのか。よろしくね」
パーティウィンドウが表示されます。
名前も表示されるので、自己紹介いらずですね。
ああそうか、これパーティを組むというチュートリアルなのか……。
まあそういうことなら乗るしかないですね。
じゃあサクっとキラービーの巣を破壊してきましょう!