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「あのう、もしかしなくてもメリザンドさんですか」
はい、もしかしてサダユキさんですか?
「そうです。自分がサダユキです。いやあ小さいのですぐに分かりましたよ」
う、確かにウェアキャットでこの小ささは私くらいのものらしいですからね……。
「あ、すみません。アバターとはいえ身体的特徴を揶揄するのはマナー違反でしたね」
いえいえ、お気になさらずに。
珍しいアバターなのは確かですから。
それにしてもサダユキさんはドラゴニュートなんですね。
角と尻尾はともかく、翼はどうなっているのか聞いてもいいですか?
「もちろん。翼は直接身体から生えてないんです。少し背中から浮いたところから広がっているんですよ。多分、開発上の問題として服装との干渉を嫌ったんでしょうけど。尻尾は普通に尾てい骨の辺りからですが、これはウェアキャットも同じですよね?」
尻尾は同じですね。
翼は直接生えていないタイプでしたか、疑問が解けました。
「それは何よりです」
それで、こちらは【俊敏】のスキルカードで、そちらは【麻痺の爪】でのトレードで良かったですかね。
「はい。嬉しいなあ、鈍足なパッチワークゾンビが【俊敏】になったら世界が変わりますよ」
はあ。
アンデッド降霊課のことは分かりませんけど、【俊敏】になったらどんなパートナーもきっと強くなりますよね。
「ええそりゃそうですよ。でもメリザンドさんはなぜ【俊敏】を自分のパートナーに使わなかったんですか?」
ううん、そうですねえ。
候補のフロストワイバーンはパワフルで、爪牙尻尾と攻撃手段が多彩なんです。
俊敏さがなくても攻撃部位が多いせいか、連続攻撃している姿を見ることが多いんですよ。
「なるほど、それなら確かに敢えて【俊敏】にしなくても麻痺を追加した方が強いかも知れませんね。課が違うと色々と欲しいものが変わるのかあ。部長が言っていた通り、部活に入って、他の課と交流することが前提のゲームバランスなのかもしれませんね」
そうですね。
ミサキちゃんもVRMMOはやりこんでますから、その辺の目は確かだと思います。
「ですよね。自分も『ファントム・セイバー』というゲームでご一緒させてもらったんですが、その頃からミサキさんはセンスあるゲーマーでした」
私はミサキちゃんと一緒にVRMMOをやるのは初めてですけど、ゲーム制作者の思考を想像しながらプレイしている感じはありますよね。
「ですねえ。その先見性と人望が、『帰宅部』に精鋭を集めているわけですから。この部活、割とマジで覇権とれるんじゃないかな」
そうだといいですね。
強い部活にいればイベントでも心強いですし。
「ええ、イベント。楽しみですねえ。最初は何が来るのかな。……おっと、トレードをしましょうか。そろそろ夕食にログアウトしないと」
私もトレードしたら一旦、ログアウトするつもりでした。
「ですよね。それでまた夜にログイン……いやあレムドライブのおかげで一日中ゲームができる。いい時代に生まれたもんです」
まったくですね。
「それじゃこれ、『スキルカード:麻痺の爪』です、どうぞ」
はい。
ではこちらも『スキルカード:俊敏』です。
「確かに。ではまた部活で」
はい。
ありがとうございました。
……ふむ、暗い感じの美人でしたが、ネクロマンサーをやるうえでアバターリセマラしたんでしょうか。
正直、似合いすぎです。
しかしいい人そうでしたね。
ミサキちゃんの人を見る目は確かだったか。
さてさて、私は夕食で一旦、ログアウトします。
視聴者の皆様、ここまでお付き合いくださってありがとうございました。
それではまた夜に!




