01.女子校生活はじめます!1日目(木曜日21:00~)
短編の文字数制限を越えたので連載で投稿します。
なお続きません(重要)。
私は病気で学校に通ったことがありませんでした。
だからこのゲームの広告を見たときに、「これだ!」と思わず声が出たわけで。
医学の急速な進歩により病気を克服した私はすっかり一人前の社会人として働いていたわけですが、学校に通ってみたかったという夢を叶えてくれるVRMMOに出会えたことを幸運だと思ったのはその時だけでした。
詳細な情報を調べたときは「なんじゃこりゃ!?」と思わず声が出たものです。
あ、お初にお目にかかります。
ゲーム実況なんてしたことないので、拙いところは多いかと思いますが、なにとぞ温かい目で見守ってくださるとありがたいです。
さてみなさん、動画のタイトルとサムネイルで何のゲームに挑戦しているかは、一発で把握できているかと思いますが。
改めて何のゲームに私が挑戦するのか、話しておく必要がありますよね。
紹介も兼ねて。
私が初めて実況するゲームは、『マグダレーナ女子魔法学園』、です!
プレイヤーはファンタジー世界の女子校で魔法を学び、訓練用ダンジョンに潜るという生活を送ることができるのがウリのVRMMOです。
そう、スレでは『マグ学』とか略されてるので私も『マグ学』と呼ばせてもらいますが、……このゲーム、女装ゲーなんですよねえ。
だって対象プレイヤー層は男!
女装ってんだから女がプレイヤーであることを想定していないのではないかという心配もありましたが、別にそんなこともなく、ちゃんと注釈がありましたから安心です。
曰く「女性プレイヤーでも美少女になってプレイできます」……って女性プレイヤーがまるで美少女じゃないみたいな言い方、ちょっとキレそうになりましたよ。
あ、いや。
私も冒頭で言った通りに社会人ですので、少女じゃないから美少女ではありえないんですけども。
けども!
この会社、女に喧嘩売ってません?
……そんなことない?
でもでも、「みんな美少女なファンタジック・スクールライフを送ろう!」とかいうキャッチコピー、最高に頭わるいですよね!?
ゲーム内の美観を保つためにアバターは弊社開発の美少女生成エンジンでランダムに美少女になれます、っていちいちウリ文句がHENTAIすぎでしょう。
……まあそんなわけで、私はこのゲームに挑戦するわけですが。
文句ばっか言ってたけど、実のところ期待しているんですよ?
憧れのスクールライフってヤツを。
……さあ、早速ログインしますかねえ。
キャラについては下調べした範囲でいくつか決めてありますが、こればかりは実際に見てみないと分からないことも多そうです。
スキルの種類とかね。
さあいざキャラメイクに!
◆
無事にログインしましたよ。
時計は夜の9時を指しています。
寝るには少し早いですが、ノンレム睡眠する気がないので、長めに時間を取ってみました。
ずっとゲームする気まんまんですね!
神ゲーム機であるレムドライブについて説明はいらないかと思いますけど、これほんとありがたいですよね。
いままで社会人はVRMMOの長時間プレイは休日くらいしかできなかったのに、レムドライブなら強制レム睡眠状態にした挙げ句に眠りながらにしてゲームできるっていうんですから。
睡眠時間を趣味の時間に変えられる、ほんといい時代に生まれましたね、私。
あ、画面がずっとタイトルなのが気になりますかね?
じゃあ早速、キャラメイクしにスタートしましょう。
えい!
ポコン、とかいったね、いま。
この効果音の軽さよ。
おおお、いきなり校長室!?
このおばあちゃんが校長先生ですかね!?
あ、学園だから学園長室で学園長か。
「ようこそ、マグダレーナ女子魔法学園へ」
うお、喋った!?
「……喋りますよ、そりゃ」
あ、なんかすみません。
そりゃそうですよね、喋りますよね。
VRMMOなんて久々なんで、ちょっとびっくりしましたよ。
「……。この学園は、世のために役立つ魔法使いを育成する――」
うわあ、説明全開なセリフが流れ出しましたよ。
ちょっと、そんなの事前に調べてるんだから早くキャラメイク、キャラメイクさせろよぉ!
「――あなたのお名前から聞かせてもらいましょうか」
おっと、始まりましたキャラメイク。
目の前に出てきたこのウィンドウに従ってやればいいんですよね?
……じゃあなんで出てきたの、このおばあちゃん。
…………うわ、笑顔が怖い。
そんなニコニコしたままこっちジッと見ないで欲しい。
えーと。
じゃあ名前からですね。
これはもう、始める前から決めてました。
メ、リ、ザ、ン、ド、……と。
はい。
私の名前はメリザンドです。
元ネタは言わないでも分かるかもしれませんね。
アニメ化までした某少女漫画の主人公、をイジメる悪い子ですね。
でもメリザンド、実は過去に悲しい出来事が――ってそんな話よりキャラメイク。
キャラメイクしていきますよ。
このゲームは8種類の種族から選ぶことができます。
ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ウェアウルフ、ウェアキャット、ハーフリング、ドラゴニュート、フェイ。
いち、にい、さん、しい、ごお、ろく、しち、はち。
うん、8種類ですね。
はい、この通りファンタジーにお馴染みの種族ですが、私が選ぶのは?
だららららららららららららららら、ら、ら。
はい、じゃじゃん!
私の種族はウェアキャットです!
猫って可愛いですよね。
私は断然、猫派です。
さて名前と種族を決めて、……うわ、もう所属する課の選択ですか?
パーソナルデータの入力項目、少ないなあ。
ほんとにランダムでアバター生成するんですね。
せめて茶トラにできるとか、なかったのかなあ。
まあいいか、ええと課です。
このゲームでは、というかこの学園には6つの課がありまして。
普通科は残念ながらないんですが、ホムンクルス研究課、ゴーレム製造課、エレメンタル交流課、ファンタズム召喚課、デーモン隷約課、アンデッド降霊課というものから選べるんですね。
名前からして出来ることが分かるかと思うんですが、この『マグ学』ではパートナーを造るなり召喚するなりして前衛に立たせて、プレイヤーは後ろから魔法を撃つというプレイになります。
だから前衛に立たせるパートナー選びなんですが、これもちゃんと事前に決めてきました。
だらら、ら、ら、ら。
ちょっと舌が疲れますね、ドラムロール……。
そんなことは気にせず、じゃじゃん!
私はファンタズム召喚課を選ぶぜ!
ファンタズム召喚課はいわゆる幻獣を召喚するという、つまりモフモフ狙いならこれ一択なので、視聴者の方は種族選びの段階で予想できた方も多かったんじゃないでしょうか。
まあでも、何が召喚されるかはランダムらしいので、蛇とか出てきてもめげませんよ、私。
さて、スキルの決定画面に進みましたね。
ファンタズム召喚課を選択した時点で、【召喚術】がついてきます。
これは戦闘中にユニットを追加できるスキルですね。
戦いは数だよ、的な?
まあともかくスキル、スキル、と。
ええと初期に選択できるスキルは、課に入ったときについてくるものを除いて5つ選択できます。
多いか少ないかで言えば、割と多いです。
なんと言ってもプレイヤーは後衛確定なので、武器系スキルがないんですよ。
杖とか弓とかはあるんですけどね。
剣とか槍とか斧とかはないみたいです。
……やっぱりないですね。
ええと生産スキルは最低ひとつあった方がいい、とディレクターさんがウェブの記事で言ってたので、ひとつ取ろうかと思います。
【鍛冶】【服飾】【整髪】【皮革】【宝飾】【調合】【料理】【醸造】【木工】【石工】【ガラス工】【陶芸】【建築】【農耕】【牧畜】、と。
……多いですね。
ていうか【木工】とか何に使うんだろ。
あ、杖とか?
じゃあ【石工】は……灯籠?
いや灯籠とかないか。
できればゲームの攻略に役立つものがいいですよね。
武器を作れそうな【鍛冶】【木工】か、防具を作れそうな【服飾】【皮革】か、ポーションを作れそうな【調合】か、探索中に回復できそうな【料理】か。
うん、この辺りから選びましょう。
えーと、私って料理はできないんで、【料理】はパスかな。
猫は暑いの苦手そうなので、【鍛冶】はイメージ違うよね。
ファッションとかよく分からないから、【服飾】も止めておいた方がいいよね。
あんまりこういうこと言いたくないけど、伊達に入院生活長くないよ?
ずっと病院着とかジャージだったからなあ。
今も服屋の店員さんに話しかけられるとテンパるし。
【皮革】はイメージができないからなしで。
あれ、もう【木工】と【調合】しか残ってない?
学校に行ってなかったから理科の実験とかしたことないし、【調合】にしておこうかな。
学校生活を満喫するためにこのゲームを選んだんだからね。
よしひとつ目のスキルは【調合】で。
あとはどんな魔法を使うか、ですね。
これは回復魔法は必須……あ、調合があるからいらないのかな。
じゃあ攻撃魔法の強そうな【炎魔術】と、火事になっても安心の【水魔術】をセットで。
魔法を強化するスキルもたくさんありますけど、どれが強いのかな?
うーん。
あ、杖は持っておきたい。
【杖】スキルは取ろう。
あと1枠!
あと1枠は何がいいんだ!?
……あ、【MP増加】にしよう。
たくさん魔法撃ちたいし。
よし、これで決定!
……え?
これでいいですか、って。
キャラメイク、これだけ?
これだけでキャラできちゃうの?
うわあ、なんだか不安だあ。
どんなアバターになるのかなあ。
美少女は決定なんだよね?
ハズレとかないよね?
……じゃあ、押しますか。
はい、イエスをポチり――