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ライトケーブ

 あなたみたいに「死にたい」というのが本当に病気か分からないんです。


 暗い夢の中が本当に恐ろしいのか分からないんです。


 この酷く暑い世界がなぜ嫌われるのか分からないんです。


 水墨画のように切り立った崖を登れるわけが分からないんです。


 いつのまにか世界は僕とあなただけで満たされて、


 良いことだねとあなたは言うでしょう。


 白い雪が周りを閉ざす時に、


 僕ら二人で向かい合う。


 凍りそうなほど冷たい水鏡の上で、


 先に倒れるのはきっと僕だ。


 何も許されないこの灰色の哀しみの中にあって、


 吹雪く結晶をあなたは手に取って、


 一つ一つつなげてカーテンにする。


 金魚鉢の中にひらめく鱗は虹鱒だ。


 そんな想像で満たされた青いトンネルを、


 くたびれた足で歩いていく。


 寂しがりなネオン街が


 ピンク色の灯をともして


 落下した可哀そうなカエルを照らしている。


 きっと何を言っているのか分からないでしょう。


 僕にしかわからない景色を、


 僕にしか分からないように、


 暗号みたいに表現しているだけです。


 43℃の壊れた温度計を慰めて、


 死んでしまうほど暑い道だった。


 実るほど頭が下がる稲穂かな。


 水も無いのに頑張って実っている稲穂を見て、


 空元気で歩いて行った。


 次の時代の朝を見ないで


 逝ってしまった水死体の彼を心から哀れに思う。


 来世こそは未来を見てほしいな


 平成で終わってしまうことがないように、


 僕も気を付けようと思いました。


 ライトケーブ。


 嘘みたいにきれいで冷たい場所だった。


 もう会えない小さな地球を手に取って、


 素敵なパラレルワールドを思い浮かべて、


 名も無き人々のシルエットが


 冷えた水鏡に映って、


 どうにもならないことがあってもいいんだなと思った。


 それは恐ろしいばかりじゃなくて、


 幸せでうつくしい事でもあるんだよ。


 人の手を加えてはいけないぐらいに、


 うつくしくて静かで完成された景色。


 すこし安っぽいけど、


 人の生きることはきっとこういう感じで、


 どうにもならないのはどうにもならない。


 それが死であっても、戦争であっても、


 その内に同じ小さな地球を見出すことができる。


 僕とあなたは地球の上に住んでいて、


 僕とあなたは地球を心の中に持っている。


 あなたが「死にたい」というのは病気ですが、


 永遠に治らない恐ろしい病気であるのですね。


 小さな地球ともう一度出会うために、


 空を飛ぶあなたの影が、


 今も網膜から離れない。


どうも。きらすけです。

旅行先で見た美しい景色について。

十日町市と大地の芸術祭に捧ぐ。

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