鍛錬 4
初めての出会いから10年後の話の続き。
今回もまた短めです。
「悪い。からかい過ぎたか…」
ローズも少し反省の色を見せながらアリクウェードの顔を覗き込む。
真っ直ぐに瞳を見つめ続ける。
顔を、瞳を覗き込まれたアリクウェードは途端に頬を紅潮させ怒り出した。
「そうやってすぐに覗き込むの止めて下さいって言いましたよね!!」
あぁ、そうだった―――と、これに関しては悪びれる様子も無く返答する。
ローズが人の顔を覗き込むのは一種の癖みたいなもの。顔を覗き込むというよりは瞳を覗き込む。そうすると相手の感情が分かるのである。魔法使いのもつ『真実を見抜く瞳』だ。
今までローズはこの『真実を見抜く瞳』で多くのことを乗り切ってきた。それこそ、アリクウェードが想像もできないほどの数多くを…
「これは癖だからなぁ。直らん」
言い切りローズは肩をすくめてみせる。
それにしてもと思う。
「ローズはどうして、そんなに強いのですか?この国で最強だと言われている騎士団よりずっと強い。騎士団が足元にも及ばない」
アリクウェードの疑問も尤もだ。
ローズの見かけは17~18歳くらいに見える。
そして、鍛えられた体つきでもない。どこにでもいるような『少女』といった感じだ。
普通と違うのは長いシルバーブロンドとオッドアイ。それさえなければ探し出すのも難しい…と言うこともないのだが…
十人中十人が振り返る美人とまではいかないまでも、『可愛い』顔立ちをしている。こんな『可愛らしいお嬢さん』が魔法も剣術も最強と言われるなんて――実際に最強なのですが…――思ってもみないだろう。
アリクウェードも実際に狙われたり、手合わせをしていなければ信じられなかっただろう。
「まぁ、暫くは戦がないからなぁ。あの頃は騎士団も強かったのではないか?まぁ、平和で良いことじゃないか」
勝たなければならない戦が無い為に弱くなっているのだろうといことだった。
ローズは『暫く』と言ったが最後に大きな戦があったのは今から100年程まえのことだ。一見するとローティーンにしか見えないのに大戦を知っているような口ぶりで話すローズに、また違和感を覚える。
確かに、6歳の時と外見がそんなに変わらないように思うが…1度会っただけ。しかも、短時間であり、子供だっったアリクウェードの記憶だ。正確性に欠けることは理解している。いくら、あの時に憧れを抱いたとしても、記憶の中では強く美しく…と変換されるであろうことも理解している。
そう思い悩んでいると『あること』を思い出す。
「そう言えば、建国頃より言い伝えられている伝説には必ずと言って良いほど『銀の魔法使い』が出てくるなぁ…」
そう言うと、アリクウェードはチラリとローズの様子ををチラリと窺う。
ローズは両手を広げて肩を竦め、小さく溜め息をついた。
(あの話に出てくる『銀の魔法使い』はローズのことなのだろうか?)
アリクウェードはそんなことを考えていた。
「余計なことに気を取られているなよ。間に合うように仕上げないとならんのだからな」
立ち上がり、左右に体を伸ばすローズにつられて立ち上がる。
話を断ち切られた感がするものの、ローズが話したくないと思うなら、アリクウェードはそれ以上聞くまいと思う。
小休止は『終わり』とばかりに、ニヤリと笑い剣先を向けられ、アリクウェードも慌てて剣を構える。
その後、アリクウェードの体力の続く限り剣を交えた。
やはり、今日も今日とて、ローズには一太刀も浴びせることはできなかったのだが…
今回はちょっぴり恋愛っぽくなってる…かな…
(↑いやいや。まだまだです!)
ちょっとでもドキドキしてもらえたら嬉しいです。
アリクウェードがもっと大人になったらもう少しドキドキ要素を・・・
まだ成人前なのでこの程度で・・・
読んでいただいて、ありがとうございます。