ジョシューのお願い
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王宮へ持ち込みたいと思っていた薬草はオリビアに相談すると、直ぐに王宮への持ち込みが許可された。
どうやら、オリビアは『薔薇の魔法使い』秘伝の薬草だと説明したらしい。
間違いではないのだが・・・・・
「取り敢えず、薬を作りますか〜」
薬棚から集めた薬を、調剤の為作業台(ローズが勝手にそう呼んでいる大きめのテーブル)に並べ始めた時だった。
ローズの部屋のドアをノックする者がいた。
知り合いも殆どいない王宮でローズの部屋を訪ねる者・・・・・
ロウは少し緊張した表情を見せるが、ローズはチラリとテーブルに並べられた薬草を確認すると、「はーい。どうぞお入りください」と軽く返事をした。
ローズの様子にロウは軽く舌打ちするが、ローズは気にした様子もない。
「大丈夫よ。こんな昼間から薬師を襲撃する人なんんていないわ。それに・・・・・」
ドア越しに感じる気配には覚えがあったのだ。
訪問者はドアをゆっくり開き、ローズに深々と頭を下げる。
「ローズ様。ジョシュー様がお話があるとのことです。ジョシュー様のお部屋まで起こしいただけますでしょうか」
顔を上げることなく、丁寧に言葉を発した。
「・・・・・承知した。相変わらず其方は聡いようだな、アゼリアード」
魔法使いの時の言葉づかいで話す。
ローズの言葉にアゼリアードは笑顔で顔を上げた。
「何のことでございましょうか?」
「・・・・・とぼけ方まで変わらんか・・・・・」
1つ溜息を吐くと、ローズは出したばかりの薬草を片付ける。
「時間が許せば前国王の診察をしたいと申し出ていたとでも言っておいてくれ」
突然、前国王の自室に押しかけては王宮の者達に不審がられる。
陛下からの依頼ではあるが、王宮内で勝手な振る舞いをしているという噂がたつと色々と面倒が起きそうなので、適当な言い訳を考え、口裏を合わせておくことにする。
「・・・・・仰せのままに・・・・・」
ローズに深々と頭を垂れる。
「皆の前で仰々しいのは止めてくれ。私は少女にしか見えんからな。面倒が起こる」
アゼリアードに顔を上げるように伝え、ジョシューの部屋まで案内を頼む。
アゼリアードは頷き、ローズを誘うようにジョシューの部屋まで案内をした。
「・・・・・ローズ・・・・・久しいの・・・・・」
ジョシューの自室の扉を潜り、ジョシューの横たわるベッドの傍に立つと弱々しくそう呟いた。
「相変わらずの様子・・・・・。息災で何よりじゃ」
「ジョシューは・・・・・辛そうだな。何時からだ?」
ローズはジョシューの顔を見遣り、痩せ細ったその手を軽く握る。
「少し・・・・魔力を流すぞ」
握った手に意識を集め、魔力を意識する。
体調の芳しくないジョシューに多量の魔力は毒になる。その為、魔力を抑制した姿のままで、僅かな魔力をジョシューの身体に流し問題を探す。
身体で問題のある部位では魔力がスムーズに流れることなく滞る。そうすると、その部位が身体の外側からでも魔力量が僅かに増える為分かるのだ。
(やはり・・・・・そうか・・・・・)
ローズが流した僅かな魔力は何処も滞ることなく流れている。ジョシューの身体は何処も悪い所がないのだ。
ローズは薄々そうではないかと考えていた。
アリクウェードが即位した時、倒れたジョシューを助けに王宮を訪れていた。
あの時も、これといって悪い所がなかったのだ。『天寿』なのであろう。
それを、本人の希望もあり、延命したのだ。
(これ以上は・・・・難しいな・・・・・)
ローズの表情が僅かに厳しいものになる。
一瞬ではあったが、その変化をジョシューは見逃さなかった。
「もう、よい」
力なく呟くジョシューをローズは淋しそうに見つめる。ジョシューの意味することが分かるからだ。
無言の時間が過ぎる。
大きく一息ついた後、ジョシューは弱々しい声音で話し始めた。
「・・・・ローズよ。私は長く生きた・・・・と思う。ローズ程ではないがな。
マリーももうこの世にはおらん。ここで生き長らえたとしても、そう長くは持たんのだろう?
マリーには何時も沢山心配をさせてしまった。今もここに居るのだろう?」
ジョシューの言葉にローズは小さく頷く。
「やはりな・・・・・。
ローズ・・・・。私はな、ローズに抱いた愛情と、マリーに抱いた愛情は別物だと・・・・・
今ならはっきり分かる。
ローズへの愛情は家族を思うものと同じ・・・・・
あの時はローズへの思い以外に何を愛だと語るのか・・・・と思ったが・・・・・
マリーと出会って、マリーのことを知り、本当の愛というものを知った。
今でも、・・・・目には見えぬが、マリーの姿を思い描くことができる。
会いたいと強く思うよ。
だから・・・・・な・・・・・
もう、よいのだ・・・・・・・・・・」
ベッドに横たわり、天蓋を眺めていたが瞳を閉じ、物思いに耽る。
彼女の姿でも思い描いているのだろうか?
その表情は穏やかで、とても優しいものだ。
ベッドの横で見えぬ姿でありながら、ずっと心配そうにジョシューを覗き込んでいたマリーも、穏やかなジョシューの表情に微笑みを見せている。
思い合う2人。
今は姿を見、触れ合うこともできないが、それでも心の中にはお互いの姿が焼き付いているのだろう。
とても幸せなことだと、ローズは泣きそうな表情で微笑んでいた。
「・・・・・お主の気持ちは分かった。
しかし、私は『国王』を助ける約束を交わしいている。
今回はアリクウェードの依頼だ。彼奴が納得できる落とし所が必要になる。
何とか説得はしてみるが・・・・・それまでは時々こうして魔力を流すこととしよう。
少しは延命できるであろう?」
魔力を流すことで、身体の中の僅かな僅かな滞りを、病気とは言えない程のものでも流れをよくし、体調を整える。
そうすることで、少しではあるが延命に繋がるのだ。
「ローズ・・・・私は少し休むとする・・・・・」
一息つくとジョシューはローズに視線を向け、僅かに微笑んだ。
「ああ。次に来る時は少し体力を持たせる薬を用意しておこう」
ローズはベッドサイドに佇むマリーに視線を向けると僅かに頷き、ジョシューのベッドから離れた。
瞳を閉じたジョシューが消え入りそうな小さな声で囁いた。
「ロザリアナ・・・・・息子のこと、頼む」
ジョシューに背を向け、扉に向かって歩き出していたが、その歩みを止める。
振り返ることはないが、頷きジョシューの思いに応える。
ローズへの最後願いになるだろう、ジョシューの願いを、ローズは心に刻み込んだ。
お読みいただきありがとうございます。
それぞれの秘めたる思いが少しずつ明かされていく・・・・そんな風に感じてもらえればと思います。
(まだまだ至りませんが・・・・・)
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ケータイから更新しておりますので、週一の更新間に合わない可能性がございます。
頑張って更新致しますので宜しく御願い致します。




